↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/19

14 割れた泉

「誰・・・。」

 かすれ気味の、弱々しい声だった。嘘だろ・・・。

「冗談はやめろ!」

 怒鳴って、頬を張った。ローランド卿はよろめいた。だが、何も感じていない証拠に、切れた唇をぬぐおうともしない。不思議そうな目で、シアーズを見つめる。唇から、細い血の筋が流れた。

「何で殴る?何もしてないのに。」

 小さな声が響く。シアーズは、心臓を握られているかのような痛みを覚えた。

「いっそ・・・。」

 ローランド卿の従卒がふらふらと進み出た。

「いっそ、殺して差し上げて下さい・・・。」

 涙ながらに呟いた。シアーズは思わず怒鳴った。

「何を言ってる!」

「閣下は、お心のあられた時はいつも、悲しみの中におられた!どんな時もいつも傷つき、涙しか・・・!この上お心を失くされて、どうしろと仰るのです!いっそ、殺して差し上げて下さい!」

 シアーズは噛みつくように言った。

「馬鹿言え!死んじまったら元も子もねえんだぞ!」

「では貴方は、閣下が残りの一生を、物のように過ごせばよいと!そう仰るのですか!」

「そんなこと言ってねえだろ!もしかしたら―。」

 そう、もしかしたら。これだけ広い世界だ、一つくらい方法があるかもしれない。

「そんな奇跡みたいなこと、現実に起きるわけないでしょう・・・!」

 このネガティブ思考。ウィルの教育の賜物か?

「今までだって、奇跡は起きてきた!だから、『奇跡』っていう馬鹿みたいな言葉があるんだ!この世に奇跡が起きないのなら、最初っからそんな言葉はない!」

 従卒は黙った。だが、下を向いてしまった。ローランド卿はこのやり取りを、ただ、見つめていた。何の反応もしない。シアーズは涙が伝うのを感じた。

 奇跡は、起きるかもしれない。だが、何か行動しなければならない。でも一体どうしろと―。

 化け物がこちらを見ている。目はないが、見えるのだろうか?シアーズは光の泉に歩み寄った。そして、剣を大きく振りかざした。

「こんなもの―!」

 泉に突き立てた。水があるような感じはしなかった。だが、底にガツンと当たった。

「うぉわっ!」

 シアーズは吹っ飛んだ。一瞬、目も眩むような光が、泉から溢れた。全員、目をばちばちと、何度も瞬きをした。ローランド卿を除いて。

「何だ・・・?」

 光でよく見えないが、泉の表面が割れている。大きな亀裂が入り、そこから何か溢れてきた。あれは、水?

 ゴオッという音と共に、それは押し寄せてきた。渦を巻く銀色の水がシアーズ達を飛び越え、ローランド卿へ向かって行った。

「閣下!」

 胸に直撃した。だが、水は吸い込まれていく。どのくらいの量だろう。世界中の海の水を集めたより、多いのではないか。ローランド卿が薄目を開けた。

「ウィル!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。