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リュシアン再び②

土曜過ぎていしまった......ほんといつも申し訳ない。

 

「朝から描いてるんですか」

 ハンスの問いかけにリュシアンは頷く。

「まあね。ここ数年、いろんな展示会に出店してきた甲斐あってか、もう少しでパトロンがつきそうなんだ。練習のためにも毎日何か描いてるが、この時期のゾンダーベルクの朝の景色はいつもとまた違う姿だから、描くと客も喜ぶんだよな」

 そう言ったリュシアンはハンスの隣にいるかずさをちらりと見るとハンスに尋ねる。

「そういう君はこんな朝からデートか」

「ち、違います!この子は同じ職場の同僚で、今は出勤途中です!」

 何気ない質問に食い気味に答えるハンスを見て、へぇ、とニヤニヤといやらしい笑みを浮かべたリュシアン。

 これ以上何を言ってもおちょくられそうで、ハンスは別の話題を振る。

「今日もポーラさんの所に行くんですか」

「もちろん。行かない理由がどこにある。自分が世界で一番美しいと思う女性には毎日会いに行くだろう?」

 恥ずかしげもなくストレートな言葉を吐くリュシアンに、聞いているハンスの方が何故か恥ずかしさを覚える。

 しかし、素直に自分の気持ちを言葉に出す、という点は自分も見習うべきなのだろうか。

 なぜリュシアンはフラれても毎日ポーラにプロポーズしているという。

 その理由がハンスにはどうしても気になった。


 しかしそれはかずさが傍にいる今の状況で話すのは気が引ける。

 昼休みに少し話ができないだろうかとハンスはリュシアンに聞いてみることにした。

「あの、二時ごろってまだここで絵を描いてますか」

「二時か~今日はこの後広場の風景画も描く予定だから、そこで描いてるかもしれない」

「あの、じゃあその時間にもし会えたら少しお時間いただいていいですか」

「おう、構わないよ、ハンスちゃん」

 またニヤリと笑ったリュシアンはそういうと再びキャンバスに向かう。

「ハンスちゃんじゃ無いですって......急に話しかけてしまってすみません。また後で」

 そう言ったハンスに、リュシアンは城の方を見ながら筆を持った手を振って返す。


 二人の会話を静かに聞いていたかずさは、ハンスの隣を歩きながら尋ねる。

「ハンス、あの画家の人と知り合い?」

 かずさの問いに、ハンスは少し考えてから答える。

「知り合い、まあそうだな。正確にはポーラさんの知り合いなんだけど......」

「ポーラさんって前にも名前聞いた気がする、パン屋さんだっけ。いつか会ってみたいなぁ」

「今度一緒に行くか?家で食べるパン買いにいくついでに」

「うんっ」

 楽しそうに頷くかずさの顔を見て、ハンスも自然と表情が綻ぶ。最近はこうしてかずさと先の話をすると少しだけ心が落ち着くのを感じる。


 ハンス達は橋を渡り終えると店へと続くいつもの道を歩いていく。


次回は月曜の朝七時に投稿予定です。よろしくお願いします。

次話はもっと物語を進めていけるよう努めます!

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