祭りの後①
急に投稿日延期してすみませんでした。今後、怪我には気をつけます、、、。
翌朝、かずさはいつもより早く目を覚ました。空は白けているがまだ陽は登っていない。
隣のハンスの部屋ではまだ物音はしない。まだ起きていないのだろう。
かずさは普段着の藍色の着物と半股引き姿に着替え、昨夜のうちにまとめておいた荷物を担ぐ。そう、かずさは今日この街を発つ。
昨日で『ハンスに祭りを楽しんでもらい、妹の手紙を渡す』というかずさの目的は果たされた。
多少なりともハンスは妹への気持ちの整理が出来ただろう。
かずさがここでやりたい事もやるべき事も、もう無い。
これまでも村や街に立ち寄る際は大抵3,4日で離れていた。長居すると自分の能力を知られる可能性が高まるのと、交友を深める事で離れ難くなるのを塞ぐためである。
かずさは他人との交流が好きなのを自覚しており、だからこそ旅の中でこの基準を考えたのだ。
かずさからすると、既にこの街での滞在は長居しすぎた。
かずさは最後に机の上に置いてある、クマのぬいぐるみを優しくなでる。
そして足音を立てないよう静かに扉を開け、玄関のあるハンスの部屋へと出る。
部屋では予想通りベッドの上でハンスが静かに寝息を立てている。泣き腫らしたせいか瞼はまだ赤く腫れている。
かずさも昨夜泣いたが持ち前の回復力で泣いた後など跡形もない。
気持ちよさそうに寝ているハンスの顔がまだ小さな子供のようで自然と笑みが溢れる。かずさは心の中で感謝を述べ静かにベッドの横を通る。
ーーが、かずさの身体は急に制止させられた。
右腕が掴まれているのだ。
掴んでいるのは寝ているはずのハンスだった。
のそりと起き上がったハンスは寝起きの低い声で言う。
「どこ行くんだよ…」
反射でまずい、と思うかずさ。絶対にハンスに見つかりたくはなかった。
「昨日言ったよね。…この街を出るんだよ」
ハンスの掴む力が強まる。
「……ダメだ」
「え?」
「アンタは行っちゃだめだ…。それにまだ手紙が何処にあったか聞いてない…」
確かにかずさはまだ手紙も含め、妹の物をロビンが預かっている事を話していなかった。
それはそうだ、ハンスだって気になるに決まっている。
かずさはそれに答えようと口を開く。
「あ、手紙はローー」
突然ハンスは掴んだ腕を自らの方に引き、かずさを引き寄せると答えようとする口を逆の手で塞いだ。
「まにうるの」
塞がれながらかずさは抗議の目をハンスに送る。
「……答えなくていい…アンタがオレを連れてってくれ…」
目の周りを真っ赤に腫らしたハンスの上目遣いの懇願はかずさに断るという判断を許してくれない。
仮にも恩人のその言葉に、かずさは折れざるを得ない。
ーーまぁ、急ぎの旅ではないし1日くらい、いっか…。
ため息をつき、観念した様子のかずさを見て、ようやくハンスは口から手を離した。
尚もじっと見てくるハンスの視線にかずさは仕方なく答える。
「わかったよ…一緒に連れて行くよ」
答えを聞いて頷いたハンスはそのまま再び布団の中に潜る。握っているかずさの腕を今度は手に持ち変えて、また眠りにつこうとする。
「ちょっと…?ハンス…ハンス君?」
寝ぼけているのか布団から顔だけ出して表情で、なんだと問うハンス。
「手、離してくれないかな」
聞いているんだかわからない様子で、しばらくぼーっとした顔でかずさを見つめると何もなかったようにまた横になり、そのままスゥーと寝息を立て始めた。
「うそでしょ?!」
かずさはしばらくハンスと手を繋いだままベッドの横に座らざるを得なくなってしまった。
気持ちよさそうに眠るハンスの寝顔が恨めしくて、一度だけデコピンをする。
何も気づかないハンスの無垢な寝顔をしばらく見つめていると自然と今は許してしまう。
今まで向き合えなかった妹の死と思い出に対峙した事は多少なりとも消耗があったのだろう。
今は一人になりたくない気持ちもわかる気がした。
朝陽が登り始め、窓から見える景色は先ほどよりも明るくなっていた。
また新しい一日が始まる。
下に何があるかわかりませんので足の裏には気をつけましょう。
と、次話か次次話で第1章完結になります。ここまでお付き合いくださり本当にありがとうございました!
次の話はまた間が少し空いて申し訳ないですが、土曜深夜0時(金曜→土曜)投稿予定です。




