コンテスト④
投稿毎回遅らせてすみません......。最新話、よろしくお願いします。
見学者達が立ち止まって見ているの書き物用の机だった。
全体を水色で塗られたその机の下には車輪がついた可動式の足元棚が1つある。それは椅子にもなるものらしく、見学者達が試しに座ったりして試している。
他の参加者たちの多くが木本来の良さが出る無垢材で勝負しているのにも関わらず、この空にも似た水色はかなり目を引いた。そして、一番注目されたのは唯一無垢材として使われた机の部分と脚の部分が一枚の板を大きく曲げて作られていたことだ。優美な曲線は見た者の目を奪う。
「これは......」
ハンス達も今まで見たことのない配色とデザインに釘付けになる。
シュライナ―は腕を汲んでじっとその作品を見ている。
サラはその隣で作品を見て息を飲む。
「これ......最近開発された曲木っていう技術よ......水蒸気で木をやわらかくして木材を曲げ、固定することで自由に木材の形を変えられるの......でも本当に新しい技術だから見たのはこの人でも初めて見たい.....テーブル部分と脚の部分の曲線が本当に美しいわ.......」
製作者の名前は”エントヴィッカー”と書いてあり、その下の作品説明の欄には色が塗られた木材は廃材を再利用したと書かれている。
1つの作品にいくつものアイデアが詰められたそれは他の見習い生の作品と比べても明らかに群を抜いていた。
デザインも目を引くが一つ一つの仕事が丁寧で美しく、製作者の技術の高さも感じさせる作品だ。
最新技術が使われている、との事だったが、おそらくそれだけの技術を備えた大都市の工房見習いなのだろう。
しかし、発想からデザインまでこうも他作品と変わってくるものなのだろうか。
先ほどロビンの作品を審査していた試験管が、ハンス達の前を通りその作品をじっくり見つめると、何も言わずさっと評価表に書いて去って行った。
試験管の反応からはこの作品の評価は伺えなかったが、ハンスは一位を目指しているロビンの事を思った。
「さ、もう少し見たら一度外に出てロビン達の実技の様子でも見ましょうかね~」
サラはそう言うとシュライナ―と一緒に次の作品を見て回る。
「サラさん、そういえばロビンは毎年このコンテストに参加してるんですか?」
かずさが素朴な疑問を投げかける。
「いいえ~これが初めてよ~それも私たちには内緒でよ~。何かコソコソしてると思ったら、エレナからコンテストに出るって聞いて。私たちびっくりしたわ~どうして何も言わずに参加することにしたのかしらね~」
「そうなんですね......不思議ですね」
かずさも小首を傾げる。
二人の話を聞いていたハンスは間違っても『一位を取ってかずさに告白するため』とは言えない。
教会の裏で宣戦布告された時のロビンの真剣な眼差しを思い出し、ハンスはふと疑問に思う。
そもそも告白のきっかけにこんな遠くまできて自分の実力を証明する必要ってあるのだろうか。あの幼馴染は勢いで物事を進める所もあるため、突拍子もない今回のような決断も十分あり得るのだが、しかし妙だ。わざわざシュライナ―に隠す必要も無いのではないのか。
それに、あの時、かずさへ告白する、というハンスへの宣言は自分を奮い立たせるための理由づくり、のようにも考えられるーー。
「ハンス、皆行っちゃうよ?」
目の前でかずさがハンスの顔をのぞき込む。
慌てて思考を現実に引き戻したハンスは突然出てきたかずさの顔に心音を早めながら返事をする。
「あ、ああ、今行く」
ハンスはこの違和感をとりあえず頭の隅に置くことにした。
同時刻、城の中庭。
ロビンは罫書きした木材に間違いがないかしっかり確認した後、早速のこぎりで切って行く。寸分の狂いも出してはいけない。
ギロチンにも似た形の長い刃が着いたのこぎりを調節し、作業台に木材を固定したロビンは大きく深呼吸した後に、木材に切り込みを入れていく。
ザッザッとのこぎりの歯が木材に沈み込んでいくのを見ながらロビンは作業に深く集中していく。
ーー絶対一位になるんや......!
ーー二か月前、ゾンダーベルク、シュライナ―の工房内。
ロビンは行き場のない怒りを持ってシュライナ―に問いただしていた。
「なんでですか?!シュライナ―さんっ」
「......それが客の要望だった。それだけだ」
感情を露わにするロビンに対してシュライナ―は工具の手入れをして静かに返事をする。
「要望って......あまりに理不尽やないですか!今までオレ達が手がけてきた仕事を急に別の工房に頼むやなんてっ」
ロビンは弟子入りして初めてシュライナ―に声を張り上げた。
次回は金曜投稿予定です。よろしくお願いします。




