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子龍よ、天を頂け  作者: ハイカラ
螺天の永遠墓標
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12話 龍剣アド

「ノルディックさんの印象?そうだな、最初のころは笑顔が張り付いた気色悪い人だと思っていたよ。」


 図書館に案内してもらい、アイリスさんにお茶に誘ってもらった。龍に関して調べる前にノルディックの人柄について三人に質問してみた。


「けど、付き合っていくと、どっちかっていうとうまく笑えないから、いつも笑顔を張り付けてんのかなって思ったり。いつもいつも他人に不快感を与えないようにして、逆に感じさせてしまう。そんな不器用な人かな。」


 以外にも好印象。


「私の評価はまあそうだな、アモウ殿が不信がるのも無理はないが、龍教会の司教という身でありながら我が国の相談役の地位にまでいるのも確かだ。陛下との付き合いも非常に長く信頼も厚い。陛下の信頼ある限り、私も彼のことを信頼している。


 ウェルトさんも変わらず。


「言葉足らずなところは多々去りますけど、基本的にその人のためを思った行動しかしませんよ。」


 アイリスさんも右に同じ。


 本当にこれと言った悪口すらない。確かに俺たちにも説明の時間を取ってはいたが、それでもやはり苦手意識がついてしまう。


「そういえば龍教会って何なんですか?あんまりこういった話を聞く機会がなくって。」


 結局この世界の常識をまだ一度も学ぶ機会がなかった。5日も滞在しているのに、王城からも出たことがない。戦闘能力しか鍛えていないのは流石に問題だろう。この世界のことを何も知らずに救うことなんてできるはずもない。


「龍教会とは龍を崇める人たちが大昔に作った宗教団体だ。なんでも龍とは完璧で崇高な生き物だと謡っていて龍との密接な関係を古くから築いてきた人々だ。理念や信仰は賞賛に値するが世が世なのでな。今では精霊教会のほうが勢いを増しているな。」


「精霊っていうのはね、この世界の概念が意思を持つ現象のことを言うの。まだ見たことないと思うけど、魔法使いが多い地域なら魔術士よりも多いこともあるみたいよ。」


 精霊、そんなものまでこの世界には存在するのか。龍なんてものが世界を形作っているのならもう何でもありなのだろう。魔法使いと魔術士と区別して呼んでいたけど、そもそも魔法と魔術に違いなんてあるのか、それについて質問してみると


「フェリス自分が使えないからって魔法のこと説明してないんだ。あの子の魔法嫌いも相当ね。えっと魔術が人と龍との契約なら魔法は人と精霊との契約なの。」


 人と精霊、子龍と違って後継を作っているわけじゃないんだろうけれど、今でも脈々と受けつがれてきているのか。


「太古の昔人が子龍となったときに生まれた魔術と違って、精霊は個人が精霊と契約する必要があるんだけど、それがなるべく人として純粋、龍の血がなるべく混じってない方がよくて、私たち姉妹は生粋の龍人だから下級の精霊ぐらいしか契約できないの。」


 なるべく人として純粋である方がいいのなら、俺や雪も契約は絶対にできないだろうけどなんでそんな制約があるんだ?龍と精霊が相いれないのか精霊と人との相性がいいのか。


「それでね、魔術は文字通り魔の術、龍の能力を龍人でも扱えるようにしたもの。

 魔法は、魔の法。精霊の持つ概念を現象として捻出する。いうなれば自然法則の縮小化みたいなものかしら。」


「好きなんですか?精霊や魔法のことそんなに詳しいなんて。」


 俺以外の二人もアイリスさんの説明に聞き入っている。魔法の存在は知っていたがあまり詳しくはないのだろう。


「そうじゃないんだけどね、この図書館にある本は全部読み込んでいるからこういう知識は自ずと身についちゃってるの。そうそう、アモウ君は龍に関して調べに来たのよね後で案内して上げるね。」


「なら、あたしたちはここらでお暇しますか、ほらいくぞウェルト、あんたがぶっ壊した部屋を直しに行くんだから少しは付き合えよ。騎士様」


「ナ―シャもう少し姉に敬意をだな、はぁ。ではアモウ殿アイリス姉さん良い午後を。」


 そうして二人は出ていくふと時計を見ると13時を回っている。結構な間しゃべっていたらしい。気づいたらノルディックの話から精霊の話に代わってしまった。


「そういえばこの図書館の本先負読んだって話本当ですか?一生かかっても読み切れなさそうな量がありますけど。」


 あたり一面本、本、本、学校の校舎丸まる一つが図書館として使用されているぐらいの大きさだ。軽く万は下るまい。その量を全部読み尚且つ知識としているなんて一体何年かかるのだろうか。


「あらあら、まだ人間としての感覚が抜けていないようですね。龍人は龍の血が濃いほど龍の性質に偏って、筋力、魔力、それに寿命も長くなります。私がこの図書館の本を読み切るのにかかった歳月はだいたい130年近ぐらいでしょうか、ついつい一冊に集中しちゃうのよね~。」


 そうか龍人は龍の血が混ざっているのだから寿命も長くなるのは当たり前か。なら俺たちのような子龍は?この国に子龍がいないなら、この国の歴史よりかは短いだろうけど、戦死や病死の可能性も考えられる。長く生きることは悪いことでもないのだろうけど、周囲との寿命のギャップに悩まされないだろうか。


「じゃあこっちに来て、龍の蔵書はあの長い本棚3列分ぐらいあるから。」


ーーー


「龍とはこの世界の環境を作りそして生態系の頂点に立つ存在。よく龍と環境どちらが先かと議論されるが断言しようこの世界は龍なくば生命の誕生すらできないと。」

 初代龍教会教皇ヨハン・コーバック著「龍世界」


 およそ1000年前の本だが龍に関して調べるならこの本がいいとアイリスさんが勧めてくれた。確かに読みやすく客観的事実が述べられており読みやすい。他の本も試しに読んでみたが、回りくどい言い方や伝説などの脚色などが混ざっていて読みずらい。


 いわく龍とはこの世界の成り立ちから存在しており、一種の生命としては完成されすぎている。龍核さえ存在していればあらゆる怪我、欠損すらも完治する。そんなふざけた存在なのだと。


 けれど龍核とは非常に繊細で他者の魔力に反応して自壊してしまう。つまりは龍核を魔術なり剣なりで破壊さえすれば殺すことが出来る。現に幻の中で胸を切り裂いた龍は動かなくなった。


 龍の能力の中でも特筆されているのが、龍の息吹と呼ばれる強力な技だろう。下級以下の龍は体内構造的に使用できないが、中級以上の龍なら使用でき、上級以上の龍なら一息で都市を崩壊させることすら可能という絶対破壊の一撃。これから先戦うときは最も注意しないといけないだろう。


 そして、一番読み込んだのは始祖龍の頁だった。この世界にいる5匹の始祖龍はそれぞれ役割を持っていて

 火種となる炎龍

 純水を生み出す氷龍

 萌芽を育てる樹龍

 岩塊を砕く岩龍

 風雲を廻す嵐龍


 そのうち嵐龍以外は所在が分かっている。俺たちが一番最初に倒すことになりそうなのは、隣国のどこかにいる炎龍か海を渡った先にいる氷龍だろう。始祖龍を倒すのならやがて世界が立ち行かなくなりそうだがそのあたりの打開策はあるのだろうか。さすがに確認しないといけないだろう。


 兎にも角にもまずは力をつけないと。才能があるのか誰かと戦うごとに強くなっている気がする。本当は一日も休むことなく剣を振らなければいけない気がするが、今は体を休ませることに集中しよう。


 アイリスさんに挨拶をして図書館を出る。時刻は夕暮れ昨日のこともあり少しだけ警戒してしまう。次は俺たちからの要請がないとしないといっていたけれど本当だろうか。


 自室に戻る前に魔術訓練室に顔を出しておこうと思い、部屋に向かうと昨日と同じく王様がいた。


「ようやく来たかアモウ。今日はお前に見せたいものがあってだな。」


「また龍の大群ですか?」


「そう僻むでない、初めて龍と敵対して力不足を感じたであろうお前に、戦う力を与えようと思った俺の慈悲深い気持ちを無下にするでない。」


 子龍の肉体のスペックと剣術、龍に関する必要な知識があればあの量なら何とかなりそうな感じがするが、貰えるのなら貰うべきなのだろう。


「お前は魔術を扱えないわけだが、魔力がないわけではない。むしろ有り余っていると聞いている。この術式はなもともと天龍からの預かり物でな、子龍が剣を扱うなら渡してくれと言われていたのを昨日思い出して蔵から引っ張り出してきたというわけよ。」


 王様が懐から術式を取り出すが俺はいまいち術式というものが何なのかを理解していない。魔術を扱う上で重要なものぐらいな認識だ。それを渡されても使用することが出来ない。


「術式ってどうやって扱えばいいんですか?結局最初以外魔術の訓練には顔を出していなくて。」


「天羽君術式っていうのはね、魔術の根幹なの。龍の能力を私たちでも扱えるようにするためには簡略化する必要があるんだけど、その簡略化したものが術式って呼ばれる魔力で編んだ………なんでしたっけフェリスさん。」


「魔力で編んだ一種の出力装置です。基礎の基礎ですよ、ユキ様。適性さえあれば誰でもとはいきませんが、才能さえあれば魔力を通すだけで魔術が使用可能になります。最終的には自力で編むこととなりますが、最初のうちはこのような紙に書かれた術式を使うんですよ。けどお父様アモウ様は魔術を使えないはずでは?」


 3日目に確認したけれど全ての属性の適性は雪が持っている、なら俺には魔術が扱えないはずだけど、天龍は剣を扱う者に渡せと言っているのには訳があるのだろう。


「この術式は特別でな。天龍の子龍しか使えない代わりに属性の適性がなくても扱える術式だ。これは天龍しか成しえない超抜級の大魔術、まあ扱えるのはアモウだけだがな。ではその術式を剣の腹に乗せ魔力を通してみよ。」


 いまだ体外での魔力制御は苦手だけれど、言われたとおりにしてみる。剣を鞘から抜きその上に術式を乗せる。前のように飽和現象が起きると思ったが結果は見事に魔術が起動した。


 どんどんと魔力を吸い上げて完成したのは、まるで剣自体が白光を放っているように見えるほど魔力を放出している。先ほどまでは師匠からもらった剣だったはずなのに、今では全く別の剣だ。


「龍剣アド。この世に二つとない天龍が自ら生み出した、あらゆる龍を断ち持ち主の魔力を貪欲に喰らい自らの力となす至高の龍剣。その投影だ。本物はどこにあるかもさっぱりわからぬ。」


ビームを打ちそうな見た目

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