239 新たなる展開。トラブル発生!?
翌日から魔走車作りは始まった。
とにかく、ケンカ、ケンカ、ケンカ。
魔走車を作っているのか、ケンカをしているのか分からないくらいだ。
日を増すごとにケンカも作業も苛烈さが増していく。
毎日のように怒声が飛び交うも、作業は順調。
少しずつ完成品の形が見えてきた。
そんなある日。
「むう、このままでは素材が足りなくなるな……」
製作中の魔走車を前に、ジョゼさんが呟く。
「お金が足りないなら俺が買ってきますよ?」
結局、賞金は手に入らず、魔走車も売れなかったため、この工房のお財布事情はよろしくない。
ひとまず、ここは俺が立て替えておくか?
「お金なら私が出してるから大丈夫よ。単純に素材が売ってないの。手に入らないから困ってるわけ」
と、魔走車の陰から立ち上がったヴィヴィアンさんが、額を拭いながら説明してくれる。
なるほど、品切れなのか。
ヴィヴィアンさんの言葉に頷いたジョゼさんが腕組みしながら話し出す。
「レースの後で魔走車の生産が活発化しているため、部品となる素材がどこも品薄なんだ」
「そうか、優勝したら設計図が買われて、大手工房で生産されるんでしたっけ」
「うむ。この時期は大手が部品や材料の大半を押さえてしまっているせいで、うちのような若手がやっている小規模な工房では手に入れにくいんだ」
「私も伝手を当たってみたけど駄目ね。事前に契約が結ばれていて、こっちに回せないみたい」
ジョゼさんもヴィヴィアンさんもお手上げといった様子だ。
「もとから大量に作ることが決まっているから、仕方ないといえば仕方ないですよね」
レースなんだから誰かが優勝する。
その優勝車を大量に作ることが決まっているんだから、大手工房としては当然の準備といえる。
むしろ、それを想定してこちらも前もって買っておくのが普通なんだろう。
今回は緊急で作ることが決まったから、何もかもが足りていない状態となってしまった。
「私とジョゼの使ってない魔走車をバラす?」
ヴィヴィアンさんが無理矢理部品を調達しようと苦肉の策を言う。
「私用で使うならそれで問題ないが、今回はお客用の品だ。そんな使い古しの部品を使うわけにもいくまい。そもそもそれをやっても、全然足りないがな」
それでも足りない、とジョゼさんが首を振る。
「「う〜ん……」」
そして、腕組みして考え込む二人。
「それなら、取りに行きます?」
市場に出回っていないなら、外へ取りに行ってはどうだろう。
魔走車の部品はモンスターの素材が大半だし、探せばなんとかなるんじゃないだろうか。
「そうか! その手があった」
俺の言葉に目を輝かせるジョゼさん。
「盲点だったわ。私たちって滅多に街から出ないから、外に行くって発想に結びつかないのよね……」
ヴィヴィアンさんも、それならなんとかなりそうと言う。
「それで必要な素材というのは何ですか?」
で、結局何を取ってこればいいのかな。
「一番必要なのはジャイアントマンモスの素材だな。牙、骨、皮なんかがいる」
「後は金属ね。鉱山で勝手に採掘できるわけないし、他の街へ買い付けにいくのがいいかしら」
ジョゼさんとヴィヴィアンさんの返答から、ジャイアントマンモスの素材と金属が必要と分かる。
「もしくはモンスターだな。金属を甲殻のように纏う種類がいる。それを倒せば手に入るぞ」
ほほう、モンスターからも金属が手に入るのか。
「買い付けは伝手がない限り難しいんじゃないでしょうか」
紹介状的な物もなしに、会いに行って売ってくれるのだろうか。
この世界の金属事情に詳しくないのでなんとも言えないな。
「確かにそうねえ……。急に行って大量にくれと言っても無理かもしれないわね」
「なら、モンスターの方がいいかもしれんな。一匹倒せば事足りるはずだ」
どうやらモンスターを倒す方が確実みたいだ。
「この辺りに出るモンスターなんですか?」
後はモンスターの生息場所が分かれば、道が見えてくる。
「わ、わからん……。専門ではないので把握していない」
「私も。むしろ冒険者のまるもっちー君の方が、そういうことは詳しいんじゃないの?」
さすがにそういったことは分からないと、首を振る二人。
むしろ俺の方が知っているだろうと話を振られるも、全く分からない。
「いえ、全然。ギルドで聞いてみるしかないですね。ちょっと行って聞いてきますよ」
「分かった、頼む」
俺はジョゼさんに頷き返すと、ギルドへ向かった。




