222 不審者現る! とんでもない事態に……!
翌日の朝。
俺が工房の片づけをしていると、作業場の方から妙な声が聞こえてきた。
よく聞こえなかったので、なんだろうと耳を澄ます。
「ふむ、ここか」
「誰だ、勝手に入ってきたのは。ここは店ではない。工房だぞ!」
なにやらジョゼさんと勝手に入ってきた誰かが話している様子。
誰だろうと思いながら、作業場へ向かう。
勝手に入ってきた不審者は、どうにも話が通じないタイプのようだった。
「で、昨日のレースで使った魔走車はどこにある」
「なんなんだ、一体どういうつもりだ!?」
ガサゴソと大きな物音が鳴り、それに反応してジョゼさんが声を上げる。
一体誰が何をしているんだ? と、慌てて作業場へ向かう。
作業場へ着いて相手の顔を見た俺は驚いた。
「え、バルバラさん?」
工房に勝手に入り、一方的に話していたのはバルバラさんだったのだ。
「む、お前たち、こんなところで何をしている?」
バルバラさんが俺とミミの姿を見て、不思議そうな顔をする。
「それはこっちのセリフですよ! 無断で侵入した上にこんなに散らかして」
どうやらバルバラさんは質問だけでなく、家探しもしていたようだ。
作業場のあちこちに物が散乱し、強引に魔走車を探していた痕跡が残っていた。
しかし、そんなところを探しても魔走車が見つかるはずがない。
レースも終わったし、今日は作業場の片づけをするとジョゼさんから聞いていたので、魔走車は昨日から俺のアイテムボックスに入りっぱなしなのだ。
「家主に挨拶したかったんだが、子供しかいないようだったので勝手に入らせてもらった」
俺の問いかけに、バルバラさんが動じない様子で答えた。
そこでジョゼさんが子供という言葉に反応する。
「私がその家主だ! レースを見ていたなら背格好で分かるだろう!」
と、バルバラさんに叫ぶ。
「そうなのか。遠くから見ていたせいで、よく分からなかった。いや、失礼」
と言いつつも、視線は周囲をキョロキョロ。挙動不審である。
「それで、どうされたんですか? こんな所に居て仕事は大丈夫なんですか?」
シプレの街は今も復興で大変なはずだ。
こんなところをウロウロしていてもいいのかな。
「レース観戦は公務のうちだ。隣街と友好関係を築くのは、とても大切なことなんだぞ?」
「な、なるほど……」
バルバラさんに言われ、レースに招かれていた事実を知る。
一大イベントだし、確かにそういう交流もありそうだ。
特別席に座り、この街の街長と会談しながら観戦している図が容易に想像できた。
「ここに来た理由はズバリ、昨日レースに出た魔走車を買いたいからだ」
「ええ?」
それで家探ししていたのか。この人、マイペース過ぎるぞ。
「ひと目見て気に入った。欲しいので、方々に聞いて回ってこの場所を探し当てたんだ」
「な、何を言っているんだ、売らないぞ!」
人見知りのジョゼさんが、珍しく初対面の人に声を上げる。
というか、さっきから叫びっ放しだ。
「そう言うな。金なら払う。私に寄越せ」
が、バルバラさんも引かない。
「どう見ても人にお願いする態度ではないぞ。まるもっちー君、一体何なんだこの人は」
ジョゼさんが呆れた表情で俺に視線を向けた。
「あれ、知らないんですか? シプレの街の街長ですよ。ね、バルバラさん」
「その通りだ」
俺の紹介に、バルバラさんが胸を張って頷く。
「ええ!?」
バルバラさんが街長と知り、目を丸くするジョゼさん。
「まるもっちー、お前と私の仲だ。仲介しろ。私はなんとしても、あの魔走車が欲しい」
俺の肩に腕を回したバルバラさんが顔をこちらに寄せながら圧をかけてくる。
「む、無茶苦茶な……」
「いいのか、そんなことを言って。抵抗するなら私にも考えがあるぞ?」
「ぐぐぐ……」
具体的な内容は言ってこないが、どういった考えかは予想がつく。
こ、このままではパレードが行われ、俺の銅像が建てられてしまうかも……。




