新たな依頼①
ともすれば後ずさりを開始しそうになる足を叱咤し、何とか「応接室(兼リヴィング)」に赴いた時、既にオオタニはWを席に着かせていた。ソファにふんぞり返るオオタニと、パイプ椅子に腰かけるWとが、テーブルを挟んで対峙している……。要するに、私が普段「依頼人」の話を聞く時とほとんど全く同じ光景が、そこには広がっていた。ムカつくことに、飲み物の入った湯呑みが用意されているという点まで同じだった。
しかし反面、お言葉を返すようで恐縮だが、その光景には極めて重要な要素が欠落しており、それゆえ実際には完全な同一性から程遠い状態にあったと言わねばなるまい。もはや詳述するまでもなかろうが、その「欠落」とは、私の代わりにオオタニが、「依頼人」の代わりに配達員Wが、それぞれ場を占めていたということに由来する。180センチ90キロ超の恵まれた体躯を持つ筋骨隆々の男と、身長170センチに満たないぐらいで、髭の剃り跡さえ目視出来ないぐらいツルリとした顔を醜く泣き腫らしているあどけない青年……、そのある種斬新な組み合わせは、「事情聴取」よりもむしろ「折檻」の最中に近い異様な雰囲気を場にもたらしていた。
そんな中、何を思ったか全くわからぬが、「助手」の分際で私の定位置に陣取っていたオオタニは、それだけで偉くなったと勘違いしたのか、あろうことか私の目の前で、私を差し置いて、さらにWに質問を投げかけることをした。
「えーと、じゃあもう少し、説明してもらっていいすか?」
ほぼ同時に私は様々な意味合いにおいて我慢がならなくなり、気づくとオオタニの横のスペースに腰を下ろしていた。
すぐに後悔した。
ソファは3人掛けだったが、私もオオタニもそれなりに大柄な方なので、実際には2人でさえ座面に収まり切らないほどであった。つまり窮屈でならなかったのである。
だからすぐに私は「おい、ちょっと詰めろよ」と言ったのだったが、それに対し、オオタニは「あ、キクチさん、正気に戻ったんすか」とか何とか、わけのわからないことを返してきた。やはり「身の程」というものがわかっていないのだろうと、相手の心中を正確に見て取った私は、すぐさま「正気じゃねえのは、いつでもテメエの方だろ? ……というかタバコくせえな、また吸ったのか?」と言って軽くいなすと、改めてWの方に向き直り、尋ねた。
「それで、今日はどのようなご用件で?」
その頃には既にWは泣き止んでいるようだったが、膨れ上がった顔には良くなる兆候が全く見られなかった。むしろ距離が縮まり、近くから眺められるようになったことで、顔面の何か所かに青あざのようなものさえできていて、思っていたよりもずっとひどい状態だということがわかった。それゆえと言うべきか、てっきりこちらが何を尋ねようと、どうせ例の喘鳴もどきを飽きもせず聞かせ続けてくるのだろうと高をくくっていたが、実際には違った。
低く小さい声で、それゆえ聞き取りにくくはあるものの、Wは確かに次のような「内容」を語り始めたのだった。




