9月24日㉕
仕方なく私はクソガキどもが「滑り台」付近から捌けていくのを待つべく、「フードコート」の椅子に腰を下ろしてしばらくじっとしていた。午後十時を回ったか回っていないかという時間帯だったが、その周辺だけに限らず、「デパート」は全体的にわりと込み合っているように思えた。目立つのは「家族連れ」、それに「カップル」だった。
やかましい声で泣き喚いているクソガキを困惑気にあやしている父親がいる。手を握り合って必要以上に(いや、むしろ必要なのか……?)ノロノロと進む男女がいる。ベビーカーを押しながら、連れ立って歩くその兄弟らしきクソガキに渋面を晒している母親がいる。……こんな夜遅くまで、誰かと一緒に時間を過ごそうとするなど、ずいぶんとまあ、ご苦労なことだ、だが一番ご苦労なのは、やはりこの俺自身だろう、いったい俺はこんなところで何をしているのか? いったいこの「家族」ごっこはいつまで続くのか、いつまで続ければいいのか? それとも今すぐに「名探偵」としての責任など全てを放り出し、姿をくらましてやろうか……?
そんなことを考えながら私は左手で頬杖を突き、右の拳でテーブルを不規則にコツコツと叩きながら周囲の様子をただ見ていた。つまり私は誰にも迷惑をかけていたわけではない。
しかし予めわかりきったことだったが、やはり私が私である限り、いくら「誰にも迷惑をかけていたわけではな」かったとしても、残念ながらいつまでも自分の身に何事も起こらないまま平穏無事でいられるなどということはない。
気づいた時、既にクソガキが近づいてきていた。
またクソガキだった。あいつらはマジで頭が沸いている。私の幼少期、我が子を躾けることは最低限の親の義務として世間一般に認められていたような気がするが、今は家族総出で他人に迷惑をかけ続けることを生業としているような輩がそこらじゅうで次から次へと増殖しているので全く堪ったものではあるまい。……本当に、こんな世の中に誰がした?
その時はまずクソガキが、私の座っている席のテーブルの縁に手をかけ、目から上だけを覗かせるという、モグラたたきのモグラの物まねみたいな高等テクを頼んでもないのにいきなり披露し始めてくれた。所謂「つぶらな瞳」兼「上目遣い」とやらで、私のことを見つめ始めてくれたというわけだ。恐らくそうやっているのが可愛らしいと勘違いしておりくさりやがるのだろう。消えてくれ。
私はもちろん無視した。……クソガキどもよ、貴様らは自分たちが生きて呼吸しているだけで、どれだけ人類全体に対して負担をかけているかということをもう少しきちんと自覚した方がよい……。そう考えながら私は、頬杖を突いたままただ一瞥だけを与えた後、すぐさま視線を明後日の方向に彷徨わせじっとしていた。恐らく小学校の低学年ぐらいと思われるクソガキは、生意気にも髪の毛を肩にかかるぐらいまで伸ばしており、性別を見定めるのが難しかったが、いずれにせよロクな奴でないのは明白だった。
しかしそれで終わりではない。
ほどなくして、今度は満を持して「親玉」の登場だ。
「親玉」のうちの一人である父親は、四角いフレームの大きめな眼鏡と皺の目立つくすんだ水色のワイシャツが特徴的な冴えない男で、とらえようによっては平凡であると言えなくもなかったが、もう一人、すなわち母親の方は非常に強烈だった。まず腫れ上がって見えるほど顔面に化粧を厚塗りしているのと、脱色しすぎたのか敢えてその色にしたのか知らぬが、白というよりもむしろ緑に近いカラーリングのボサボサな毛髪を確認した時点で、私は意識からそいつを抹消することにひたすら専心し始めた。「おかめ」の面の頭部に、使い古された書道の筆先を大量に植え込んだようだったと言えば伝わるだろうか?




