友達なら助けるもの
リコリスちゃんに見つめられたクロはえっへんと胸を張ってる。私の妹はやっぱりかわいい。写真撮らないと、写真。
「小夜さん、何やってるの?」
「写真だよー」
「ミリアも! ミリアもうつるー!」
ミリアちゃんがクロの隣でピースをする。スマホの写真を教えてから、ミリアちゃんはこの写真というものがお気に入りになってる。クロも満更じゃないみたいだから、一緒にぱしゃりと。うん、いい写真だ。
「小夜さん……」
「私もたまにはテンション上げていきたいので」
「あ、はい」
いつもいつも説明役だからさ。たまにはこうしてみんなと騒ぎたい。いやいつも最終的には騒いでる気がするけど。
でもさすがにそろそろ説明をしてあげないといけないよね。そんなに大した説明はできないけど。
「それじゃ、リコリスちゃん。さらっと説明するね」
「えと……はい……」
そうして説明したのは、いつもの内容。クロと私が姉妹で、この世界出身だということ。クロの魔法は友達候補を呼び出すもので、正真正銘の異世界だということ。あとはクロの簡単な身の上話。
全部語り終えると、リコリスちゃんはなるほどといった様子で頷いていた。
「異世界への召喚……。すごい魔法、です。時間があれば調べたいぐらい……」
「しらべる。だいじょうぶ。どうぞ」
「その……。時間が、ないので……」
とても残念そうにそう言うリコリスちゃん。リコリスちゃんは彼女の世界ではわりと有名人らしいし、忙しい立場の人なのかも。
そしてリコリスちゃんが続けて言った言葉に、私はとても驚かされた。
「わたしは、魔王討伐を目指す勇者パーティの一人なので……」
「勇者!? 勇者パーティ!?」
「わ」
思わず大声を上げちゃったけど、仕方ないと思うんだ。
だって、勇者パーティだよ? 魔王討伐だよ? 今までで一番異世界らしいんじゃないかな! 感動すら覚えるよ!
「おねえちゃん。おちついて」
「これが落ち着いていられるか!」
「おー……」
まさか勇者とか魔王が実在する世界があるなんて! 本当に驚きだ! 是非とも勇者様にも会ってみたいね! きっとイケメンだよイケメン!
そんなことを考えていたら、クロが頬を膨らませていた。
「むう」
「え、あれ? クロ、どうしたの?」
「嫉妬じゃないかな。クロは小夜のことが大好きだから」
リオちゃんの指摘でクロを見る。クロはじっと私を見つめてる。なにこの子すごくかわいい抱きしめようぎゅー。
「わぷ」
「クロはかわいいなあ!」
「むう、むう」
ふはははは! 抵抗すらもかわいいのだ!
「どうしよう、小夜さんのテンションがおかしい……」
「勇者とか魔王とかに何か思い入れがあるみたいじゃの。よくわからん」
まあこれは私の世界の人にしか分からないかもしれないからね。
「リコリスちゃん。今すぐは無理だろうけど、魔王討伐が終わったら勇者様に会わせてほしいな」
「ん……。わたしも。わたしもあいたい」
クロもなんだかんだと気になってたみたい。クロもゲームぐらいはするからね。
そんな私たちの言葉に、けれどリコリスちゃんは顔を曇らせた。
「それは……その……」
「ん?」
「多分、勝てない、ので……」
「え」
そうして、リコリスちゃんが今までのことを教えてくれた。
勇者様との出会いから、旅の話。自分たちがぎりぎりで、奇跡的に勝てた魔王軍の幹部と、それよりも強い魔王との決戦が控えていること。おそらく、勝てないだろうということ。
「クロちゃんの魔法、すごく、気になります……。皆さんの関係もすごく良好そうですし、ちょっと、仲間に入れてほしいなって、思っちゃいます……。でも、わたしは、勇者様の仲間なので……」
勝てないと分かっていても、目の前の犠牲を無視できる人ではない。だからきっと、魔王に挑むことになる。そう言うリコリスちゃんは、泣き笑いのような顔だった。
難しい話だ。もっと強くなるために引き返すと、たくさんの犠牲が出ることになる。でも魔王に挑んでも、勝てる見込みがない上に人類の希望も失われることになる。
八方ふさがりだね。私からは何も言えそうにない。
「リコリスは一人で逃げようとは思わないの?」
不意にリオちゃんがそう聞いた。
「一人で? それは、絶対に嫌です……! わたしだって、勇者パーティの一員なので……!」
「ん。そっか」
何故かリオちゃんは満足そうだ。何か解決策でもあるのかなと期待してしまうけど、リオちゃんはそれ以上何も言わなかった。
「リコリスさん。せめてこれを持っていってください。私が作ったポーションです。きっとお役に立ちます」
「え、わ、ありがとうございます……!」
エリーゼちゃんがポーションを渡してる。私たちからも何か渡せればいいけど、こういう時に何もできないのはちょっと悲しいところだ。
私たちができるのは、応援ぐらい。
「リコリスちゃん。変なこといろいろ言って、ごめんね。応援してる。頑張って」
「大丈夫です……。最後にこんな素敵な場所に来られて、嬉しかったです……。皆さんも、お元気で……」
それは本当に本心なんだと思う。リコリスちゃんは笑顔で言って、そして帰っていった。
リコリスちゃんが消えて、しばらくして。
「師匠」
「ん?」
「たすけたい」
クロの短い言葉。さすがに今回は難しいんじゃないかなと思ったんだけど……。
「ん。わかった」
リオちゃんはあっさりと頷いてしまった。
いや、私も助けることには賛成だよ。リコリスちゃんも間違い無く良い子だから。でもさすがにちょっと見過ごせない。だって、あまりに危険だから。
「少しはしゃいじゃったくせに言うのもなんだけど……。さすがに危なすぎない? リコリスちゃん、優秀な魔法使いでしょ? そのリコリスちゃんが勝てるか分からないって言ってるのに……」
勇者パーティにいるということは、彼女の世界では最上位の魔法使いなんだと思う。
もちろんリコリスちゃんにも死んでほしくはない。けれど、申し訳ないけど、私は自分の妹が一番大事だ。妹の幸せが私の何より優先するべきことだから。
「大丈夫じゃろ。あやつ、わしを明らかに警戒しておったし。リコリスがそれぐらいなら、わしらで対処可能じゃ」
「もちろん小夜の心配も分かる。だからしっかりと準備はする」
ぱたんとリオちゃんが本を閉じた。なんだろう、それだけで謎の安心感がある。この子、本当に頼りになりすぎない?
「クロ。リコリスは友達?」
「ともだち!」
「ん。友達なら助けないとね」
そう言ったリオちゃんの顔は、いたずらっぽく笑ってるような、そんな気がした。
・・・・・
壁|w・)もう助からないぞ!




