第20話 義妹と恋人になったので、プールデートをしてみた!~害虫駆除編~
「――ぷはっ!? うははははっ! 楽しいなコガネ!」
「キシャァァァァァァァァァァッ!」
「何か波があるのにしょっぱくないってのも、不思議な感じだよな?」
「フシャァァァァァァァァァァッ!」
「そ、そろそろウォータースライダーでも行っとくか?」
「がるるるるるるるるるるるるっ!」
「……俺が求めていたプールデートは、コレじゃない……」
波の出るプールへ入って5分。
何故か女の子から俺へのナンパを警戒し、全方位警戒モードを解かない義妹。
もう、何て言うか、色気がない。
色気がないよ、コガネちゃぁぁぁぁぁん!?
このデートには、圧倒的なまでの桃色成分が足りてないよ、コガネちゃぁぁぁぁん!?
「ぐるるるるるるるるっ!?」
「ねぇ、マイシスター? 今、俺達、デート中だよね?」
「そうだよ、お兄ちゃん。楽しい、楽しい、デートの時間だよ♪」
「だよね! デートの時間だよね?」
なのにさ?
「言っている事と、やってる事が違い過ぎない? 妹よ?」
見知らぬ女の子が俺に近づいてきただけで、唸り声をあげ始めるマイ☆シスター。
全方位警戒し過ぎて、デートもクソもなくなっちゃってるよ……。
俺はさ? もっと妹とイチャイチャ♪ したいんだよ!
夏の思い出を、コガネと一緒に作りたいんだよ!
「波の出るプール、楽しい?」
「うんっ、楽しいよ。これで周りにお兄ちゃんを誑かす害虫が居なければ、もぉ~と楽しいんだろうけどね♪」
怖い……。
ウチの妹がマジで怖い……。
今日は1日、妹から絶対に目を離さないようにしよう。
「お、落ち着けコガネ? そんな警戒した所で、無意味もいいところだぞ? なんせ俺はコガネ一筋だからな!」
いいこと言ったぜ、俺! と満足気に胸を張っていると、何故か愛する義妹から不満気な視線で睨まれた。
えっ?
なんでそんな目でお兄ちゃんを見るの?
「お兄ちゃんは良くても、向こうは分からないでしょ?」
「向こう?」
向こうって? と、俺が小首を傾げると、スッ! と、その白魚のような指先を、俺の背後へと指示した。
どうやら『うしろを見ろ!』と言うことらしい。
俺は義妹の言う通り、素直に背後へ振り返ると、そこには俺達と同い年くらいの水色のワンピースを着込んだ女の子が、浮き輪に乗って、波と戯れていた。
「例えば、あそこのワンピースの女の子」
「あの子がどうかした?」
「あの子がいきなり、お兄ちゃんを背後から襲い掛かって、妊娠しようとしてくるかもしれない」
「ねぇよ。それだけはねぇよ」
日本の常識以前に、そんな女の子は嫌だ。
「他にも、すれ違いざまに妊娠をせがんでくる子も居るかも!? な、なんてハレンチな……恥を知りなさい、恥を!」
「彼女たちは、バーバリアンか何かかな?」
妹の頭の中は、ハレンチでいっぱいだ♪
「ほら見て? さっきの女子大生のお姉さん、まだお兄ちゃんの方を見てるよ?」
「あっ、ほんとだ」
「きっとボクが目を離した隙に、お兄ちゃんの子種を求めて襲い掛かって来るに違いないよ!」
「偏見を極めてるのかな、ウチの妹は?」
「偏見じゃないよ! お兄ちゃんが机の引き出しの二重底になっている所に隠してある、世界史の教科書でカモフラージュしていたエッチな本に、同じ事が描いてあったもん!」
「漫画と現実は違う――ちょっと待って、コガネちゃん? 今、なん言った?」
凄くナチュラルに俺のトップシークレットを暴かれた気がしたんだけど?
冷や汗全開で愛する義妹を見つめるのだが、コガネはどうやらそれどころではないらしく、目につく女の子を片っ端から威嚇し続けていた。
一体俺の彼女はナニと闘っているんだろうか?
義妹の思考回路が理解できず、困惑していると、
――ざっぱぁ~んっ!
と、一際おおきな波が俺たち兄妹を襲った。
「おぉっ! 今のは大きかったなぁ!」
「うわっぷ!? うぅ……水が鼻に入ったぁ~」
「おいおい? 大丈夫か、コガ……ネ……んぁ?」
うぅ~っ!? と鼻を押さえて、今度は違う意味で唸っていた義妹。
そんな義妹をからかってやろうと視線を向け――笑顔が固まった。
「??? どうしたの、お兄ちゃん? そんな固まっ……て……へっ?」
不自然に棒立ちになる俺を不思議に思ったのか、コガネが可愛らしく小首を傾げた。
そのまま、俺の視線を追うように、吸い込まれるように自分の胸元へと意識を向け、
「えっ? えっ!? ちょっ、なんで!?」
一瞬で顔を真っ赤にしたコガネが、間髪入れずに両腕で胸元を隠した。
そう、無い。無いのだ。
この前購入した、赤いビキニの上が、無くなっているのだ!
おかげで、義妹の張りのある白いお肌がコンニチハッ!
腕から溢れる大きなおっぱい、略して『おっぱい』が、
――ふにょん♪
と大きく形を変え、華奢な身体に似合わない柔らかさを、俺に伝えてくれた。
「で、デンジャラスッ!?」
「あ、あばばばばばっ!?」
コガネのおっぱい。
愛するおっぱい。
義妹のおっぱい。
彼女……おっぱい。
『目を逸らさなければ!?』と思うのに、目を逸らせない。
これが万乳淫力の法則か!?
ニュートン先生、すげぇっ!?
「お、おに、おに、おにいちゃっ!? ど、どど、どうしっ!?」
事態を理解したコガネが、どうしたらいいのか分からず、目をグルグル回しながら、その場で固まってしまう。
プチパニック状態だ。
ハッ、そうだった!?
妹パイパイに見惚れている場合じゃない!
はやくコガネのお乳様を隠さなければ!?
もしコガネの生乳を他の野郎に見られたら、俺はソイツの目ん玉にレーザーポインターを照射せねばならなくなる!
事は緊急を要した。
「お、落ち着けコガネ! まずは落ち着いて、お兄ちゃんの背中に隠れるんだ!」
「う、うんっ!」
俺はコガネから背を向け、愛する義妹のデカパイが周りに見えないように、細心の注意を払いながら、壁役に徹した。
ディフェンスに定評のある金城とは、俺のことだ!
と、周りに男共に睨みを効かせていると、
――ぷにょん♪
「ッ!? なん、だと……っ!?」
「ど、どうしたの、お兄ちゃん!?」
コガネが焦った様子で俺に声をかけてきたが、正直、それどころじゃなかった。
こ、この背中に感じる熱々の、柔らかくしてしっとりした物体は……まさかっ!?
俺はバッ! と弾かれたように、首だけ背後へ振り返ると、そこには上半身裸のまま俺の背中に抱き着く、愛する義妹の姿があった。
当然、上半身裸だから、マイハニーのデカパイは俺の背中で柔らかく潰れていて……あ、当たってる!? 当たってるよぉっ!?
た、ただ隠れて貰うつもりが、抱き着かれちゃってるよぉっ!?
「こ、コガネちゃん!? し、幸せの膨らみが!? お兄ちゃんの背中に、幸せの膨らみが当たってるよ!?」
「だ、だって! こうでもしないと、見られちゃうし!?」
余程テンパっているのか、
――むぎゅぅぅぅ~♪
と、さらに強く俺に抱き着いてくるコガネたん。
そのせいで、気づいてしまう。
愛する義妹の幸せの膨らみの中心部が、妙にコリコリしている事に。
こ、このコリコリしている突起物は……まさかっ!?
「あっ! お兄ちゃん、アソコっ! アソコ見てっ!」
思考がヤバイ方向へ吹っ切れようしていた寸前、背後に隠れていた義妹の声に、我を取り戻す。
ハッ!?
お、俺は何を考えていたんだっ!?
「ど、どうしたコガネ? ハハッ!」
「水着っ! ボクの水着がアソコに浮いてる!」
下心を悟られまいと、千葉県の某アミューズメントパークのマスコット・キャラクターのような甲高い声をあげる俺を横目に、コガネが明後日の方向を指さした。
見ると、確かにコガネの言う通り、真っ赤なビキニのトップスが、ぷかぷか♪ と、気持ちよさそうに波に漂っていた。
「よし、ちょっと待ってろ? お兄ちゃんがすぐ取って来るからな?」
そう言って俺は、コガネの赤ビキニを回収するべく、1歩前へと前進し、
――ぷるんっ♪
と、おっぱいが俺の背中で弾むのが分かった。
「こ、コガネちゃん? なんでお兄ちゃんの後を、ついてくるのかな?」
「ぼ、ボクも一緒に行く。お、お兄ちゃんが居なくなったら、隠すモノがなくなっちゃうし」
「そ、そうか」
ほんとにそうか?
少しの間なら、手や腕で隠せないか?
チクショウッ!?
お互いテンパっているから、正常な判断が出来やしねぇ!?
「じゃあコガネ、右足から行くぞ?」
「う、うん」
とりあえず、俺達は下手クソな二人羽織の要領で、えっちらおっちら! と、呑気に浮かんでいる赤ビキニのもとまで歩いていく。
その度に、俺の背中で
ぷにゅん♪ とか、ぷよん♪ とか、幸せの擬音が聞こえてきて……『俺もう、このあと死ぬんじゃねぇかな?』って、本気で思った。
あぁ、今なら警察に通報されても、文句は言わないぜ?
むしろ豚小屋で『いやぁ、やっちまったぜぇ~♪ でも、後悔はしてないぜぇ~♪』と、笑顔で言い切る自信がある。
「水着、獲ったどぉぉぉ~っ!」
「ナイス、お兄ちゃんっ!」
ヘイ、パス! ヘイ、パス! と、軽く背中を叩いて合図を送ってくる義妹。
くぅっ!? このドリームタイムが終わってしまうのは名残惜しいが、しょうがない。
いつまでも、愛する義妹をフリーダム・スタイルでプールに浮かせるワケにはいかない。
「受け取れ、コガネ! 新しい水着よ!」
俺はアンパンを時速144キロで投げるパン工場の娘さんのように、丁寧にコガネに赤ビキニのトップスを手渡した。
ありがとう、お兄ちゃん! と、俺から水着を受け取るなり、モゾモゾと身体を動かすマイ☆シスター。
途端に背中に感じる胸の感触が、水着越しのソレに変わった。
……ヤダな、残念がってないよ?
「ごめんお兄ちゃん。気が抜けたら力抜けちゃった……。もう少しこのまま抱き着いていていいかな?」
「もちろんОK牧場さ。というか、そろそろお昼時だし、プールから上がるか?」
「う、うん」
「よしっ! お兄ちゃんにしっかり捕まってろよ?」
俺は力の抜けた妹を背中に乗せ、人工ビーチの方へと歩いていった。
そのまま妹を器用に背中におぶったまま、陸へ上がろうとして……プールの中へ引き返した。
「どうしたの、お兄ちゃん? 上がらないの?」
「いや、なん言うか、もう上がってるっていうか……。その……ね?」
「???」
頭の上にクエスチョンマークを乱舞させる妹に、曖昧な笑みを浮かべる俺。
ごめんね、コガネ?
お兄ちゃんも陸に上がりたいんだけどさ、違う部分が立ち上がちゃって、もう出るに出られないんだ。
いやぁ、もう凄いよね?
何事においてもそうなんだけどさ? 達人クラスになると、技を出された瞬間は、もう手品だよね?
アレ、いつの間に!? って、感じ☆
「まぁ、水着着てるし、大丈夫か」
「お兄ちゃん?」
「いや、何でもない。陸に上がるか!」
俺は覚悟を決め直し、再び人口ビーチの方へと特攻。
そのまま、ある種の解放感を感じつつ、胸を張り、妹をおんぶしたままビーチの方へ上がると、周りに居たギャラリー達が『ギョッ!?』とした表情で、俺を見て来た。
きっと水着越しでもその存在感を大いに主張してしまう、ビックな我がムスコを前に、恐れ戦いているに違いない。
「何かみんな、コッチを見てない?」
「それだけコガネが可愛いんだろ?」
「いや、ボクというより、お兄ちゃんを見ているよう――なぁっ!?」
瞬間、コガネが顔を真っ赤にしながら、何とも言えない声をあげた。
ヤッベ!?
おっきしてる所、見られたか!?
兄としての威厳が崩れてしまう危険性に、内心ヒヤヒヤしながら、いつも通りの口調を心掛けて、義妹に声をかける。
「どうした? そんな変な声を出して?」
「お兄ちゃん、下っ! 下っ!?」
「お兄ちゃんも男だからな。おっきしてしまうのは、しょうがない。許せ、妹よ」
「そうじゃなくて! おっきの方じゃなくて!? 毛が、お毛けが!?」
お毛け? と、小首を捻りながら、妹の視線を追うように、視線を自分の下半身にズラす。
そこには、愛する義妹の言う通り、毛が――えっ?
なに、この毛!?
というかっ!?
「な、ないっ!? 俺の水着がない!?」
腰がもちろん、膝丈にも、足首の周りにも、俺の海パンがない!?
一体どこへ――ハッ!?
さては波のプールで妹と戯れている際に、スポッ! と脱げたのか!?
という事は、アレは?
俺は今現在、現役女子高生をフルティン(臨戦態勢)のまま背中におぶって、衆人環視の中、人工ビーチに上がっているのか?
神々しいにも程があるぞ!?
俺は一体、どこの神々の民だ?
そりゃ解放感に溢れているハズだわ!
だってある種、限界まで解放されてるんだもん!
『どいてください! 全裸のゴリマッチョが現れたというのは、どこですか!?』
『監視員さん、コッチです!』
俺の優れた聴覚が、向こうの方からプールの監視員さんがやって来ている事を察知する。
あ、アカンッ!?
捕まる!?
「ヤベェ、どうしよう!?」
「お、お兄ちゃん! アソコ!」
コガネが波のプールの方を指さして何やら言うので、そちらに目をやる。
そこには、明らかに俺の海パンと思しき魅惑の布切れが、波にぷかぷか♪ 浮いていた。
瞬間、俺はコガネをその場に下ろし、波のプールへと再び特攻していた。
「お兄ちゃん、お尻が!? お尻が丸見えだよ!?」
と叫ぶ義妹を無視して、全力のクロールで海パンのもとへ泳いでいく。
途中、プールから出て、陸を走った方が速いんじゃないか? とも思ったが、全裸で陸を疾走する己の姿を想像し……やめた。
とてもじゃないが、出来ない。
俺は覚悟を決めて、泳ぎ続けた。




