第55話 ダンジョンの戦果
翌日、早朝に市場に行っていつものように大量仕入れをした。ダンジョン産のサメのヒレも買い取ってもらって、完成品のフカヒレを購入したりもした。交易品の取扱店でも蒸留酒を樽で大量購入した。
そして領都への帰還だ。来た時同様にスピーダーを飛ばした。
帰還してすぐに倉庫でドロップ品を放出した。スタンバイしていた鑑定班が目まぐるしく動き出した。
魔物肉はすごい量があるので、値崩れを起こさない程度に一部だけを買い取りに出すことになった。余りは俺がマジックバッグで保管しておくことになる。宴会する都度にみんなで消費していこうということになった。
鑑定班に指示を出していたフィデルさんがやってきた。
「それではダンジョン出張の報告を聞きましょうか。」
「ソフィー、あなたはトレーニングをしていなさい。キャノンちゃん、ソフィーの面倒を見てあげて。」
シルビアさんはそう言ってソフィーちゃんの頭の上にキャノンを乗せた。
キャノンがトレーニングの監督をするようだ。頑張れソフィーちゃん。
チャールズさんが報告を始めた。1~3階層の状況、今回の成果を報告している。
「聞けば聞くほど我が商会にとって都合が良いダンジョンですね。仮に攻略できなくても、定期的に魔物を氾濫させて2~3階層を乱獲するだけでもいいわけですね。」
「ただ、やはりルノさんがいらっしゃることが前提になりますね。緊急でダンジョン産素材が必要になった時は、私とルーベンで走って行きますが。」
水上歩行スキル、ルーベンさんも持っているのか。あのスキル、適正者少ないらしいんだよな。
「待て、チャールズ。ルーベンがダンジョンに行ったら酒場はどうなるんだ。」
寡黙なロドリゴさんが珍しく話に割って入ってきた。このおっさんの頭の中は酒のことだけだな。そもそもルーベンさんが酒場のマスターに就任するとは決まってないだろうに。
「ん?ルーベンと酒場が何か関係があるんですか?」
「あ~!商会長!聞いてくださいよ~!ダンジョンでシルビアちゃんとルノ君が、夜にお酒飲んでイチャイチャしてたんですよ~!」
「ちょっと、キアラ!突然何を言い出すんですか。あれは新作のお酒が完成したからと試飲を勧められただけです!」
なんか混沌とした報告会になってきたな。
「ルノさんも黙ってないで何か言ってください!」
「えっ?俺ですか?」
急にシルビアさんから話を振られてしまった。
「え~と、あ、そうだ。先日、こんな物を作ってみたんですよ。シルビアさんに差し上げますよ。」
俺は先日作った青い宝石を付けたネックレスを差し出した。
「ドロップ品の頂いた謎の金属で作ってみたんですよ。一人でダンジョン行った時に一階層でドロップした宝石もあったので、それも付けてみました。初めて作ったにしてはなかなか良い出来だと思ってるんですが、どうでしょうか?」
みんなは唖然とした顔でネックレスを見ている。どうしたんだろうか?
「まさかネックレスになるとは・・・。てっきり私は武器を新調されるのかと思っていましたよ。」
「わお!このタイミングでこんな物を出すなんて~!流石ルノ君だね~!」
「オリハルコンの・・・ネックレスだと!?」
「ふむ。流石ルノさん。想像の斜め上をいく。」
「これは素晴らしい出来ですね。この宝石はブルーダイヤモンドですか!宝石は門外漢ですが、色付きのダイヤモンドは非常に高値がつくと聞いていますよ。」
シルビアさんは目が点になって表情が抜け落ちている。
みんながそれぞれ感想を述べているが、さっきオリハルコンって聞こえたな。
「これ、貴重な金属だったんですか?皆さん、あっさり譲ってくれたものだから、大したものではないと思っていたのですが。」
「ルノ君~。流石に鑑定スキルが無くてもオリハルコンは見れば分かるよ~。」
キアラさんに阿呆を見るような目で見られた。この人にそんな目で見られるのは心外だ。
「でもね、ルノ君~。ネックレスを渡すなら、ちゃんと相手に付けてあげないと駄目なんだよ~!」
キアラさんはすっごいニヨニヨしながら、シルビアさんの背をぐいぐい押してきた。
「えっ。付けるの?俺が?」
それはセクハラになるんじゃないだろうか?駄目な気がするのだが。
「ほらほら~!早く付けてあげて~!」
未だにシルビアさんは表情が無いままなのだが、とりあえず付けてあげた。うん、やっぱり青がよく似合うな。デュンケルも影から出てきて、シルビアさんを見て頷いている。デュンケルも製作に関わったからな。作品が実際に着用されるところを確認したかったのだろう。あの様子だと出来に満足しているようだ。
「うんうん~。シルビアちゃん似合ってるね~。」
「青が良く似合いますよね。シルビアさんは。」
「こ、こんな高価なものを頂くわけには・・・。」
シルビアさんがようやく再起動したようだ。
「大丈夫だよ~、シルビアちゃん。オリハルコン製なんだから~。普通のネックレスみたいにうっかり引きちぎっちゃうことは無いよ~。」
「そんな心配をしているわけではありません!」
ネックレス引きちぎっちゃうのか。うっかりさんなんだな、シルビアさんは。
「しかし本当に見事な出来ですよ、これは。実は今回のドロップ品の宝石類をどうしようかと思っていたのですよ。ルノさんにお渡ししますので、アクセサリーに加工してもらっても良いですか?もちろん普通の金属類で。商品化して店内で売ってしまいましょう。」
「普通に売却してお金に換えたら良いのでは?」
「信用できる宝石商との付き合いがないのですよ。間違いなく買い叩かれます。私は成り上がり者なので敵も多いのですよ。今、目利きできる人材を雇い入れようと思って商業ギルドに依頼しているところなんです。鑑定スキルでは宝石の価値までは分かりませんからね。」
どうやら宝飾品部門が設立されるようだ。俺の仕事がどんどん増えていってる気がする。そうだ!デュンケルに丸投げしよう!
「まあ、宝石はそんなにたくさんあるわけではないですからね。空いた時間で作っておきますよ。デュンケルが主に製作することになりますが、構いませんよね?」
「それは良い考えですね!あのワイバーン像でデュンケルさんは注目を集めてますからね。販売する時に紹介しやすくなります。宝石を使っていないアクセサリーも可能であればお願いしますよ。もちろんアクセサリー以外の物でも構いません。」
「分かりました。それはそうと、話が脱線してしまいましたね。」
「あ~!そうだった~!酒場のマスターはルーベンがすることになったんですよ~!」
違うだろう!ダンジョンの報告会だっただろ!これ以上話を脱線させるんじゃない!
キアラさんは何がそんなに面白いのか、ルーベンさんの背中をバンバン叩きながら笑っている。
その後、順を追って説明することになった。
「なるほど。これがカクテルというものですか。実に鮮やかで客受けしそうですね。ふむ、味もまた面白い。」
「緑の方は私が気に入ったからキアラグリーン。青いのはルノ君がどうしてもって言うからシルビアンブルーって商品名になったんですよ~!」
「キアラグリーンにシルビアンブルーですか。良いと思いますよ、採用で。そしてルーベンが酒場のマスターですか。ちょっと想像できないですが、ルノさんが言うならその方向で調整しましょうか。」
ルーベンさんの人事異動が決定されてしまった。巻き込んでしまって申し訳ない、ルーベンさん。
「ダンジョンは少人数でも良いので、水上歩行部隊を作りましょうか。年単位の時間がかかるとは思いますが。」
その後はダンジョン報告会の流れに戻っていった。
なんかすごく疲れたよ。キアラさんは爆発物を投げるのは戦闘時だけにして欲しいね。会話中にまで爆弾を投下していくから話が進まないよ。
あ、俺もオリハルコンネックレス出したのが悪かったのか。反省しよう。




