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絶望的な恋の救世主は着ぐるみの『中の人』  作者: かたたな


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1/8

私の恋は始まらない。

数年前、別サイトでの投稿した作品の全年齢版リメイクです。よろしくお願いします。



 〜♪〜〜♪〜〜♪♪〜


 にゃぁ〜


 涼しい風が通り抜け、暗闇の中をライトの光が柔らかく照らしてくれる。軽快な音楽とゆるい声が響くここは会社の屋上。

 白くてモフモフの『大きな着ぐるみの猫』が私の目の前で踊っている。


 たまたま屋上で遭遇し、仲良く?なった会社のゆるキャラ『タチネコにゃん』さん。


「休憩するにゃあ〜」

「はい!」


 男性が、頑張って裏声で話すような声をしている。けれど、なかなか可愛いその声は、聞くたびに癒される。


 ある種の『失恋の呪い』を持った私にとって、それを忘れられる貴重な時間がここにある。


 私は、この中身も知らない彼に恋をしていた。彼は、恋人を作る事が絶望的な私にとっての救世主。


 多分…


 彼との恋が叶わないのなら、私は生涯独り身となるだろう。




 ◇ ◇ ◇




 「先輩が好きなんです。この気持ち、もう抑えるなんてできません!」

 「は!?待て、ここ会社だぞ。そんな、急に言われても。っ…」



 ガタンッ!



 会社のほとんど利用されない資料室。その前を通りかかると案の定これだ。


 何度こんな密会に遭遇したことか。


 もう慣れてしまった。



 ほんの少し開いた扉から、チラリと中を覗いてみる。行儀がいいとは言えないけれど、確認しなければいけない。このやり取りをしたのが誰で、それを受け入れたのかどうか。無理強いされたものでないか。


 この会社のコンプライアンス部に所属する私にとって、業務の一つ。


 決して…BLを見たいわけでは…


 チラリ


 しかし、目の当たりにした光景に絶句した。薄暗いその部屋で、後輩男性に迫られ拒みきれず口付けを受け入れる男性。その人は紛れもなく私がアプローチを始めた男性だった。

 押しに弱いというよりは満更でも無いという雰囲気。互いに息を荒くして頬を赤らめていた。




 またアプローチしてた男性が男に取られてる…


 コレが、私に呪いのように付きまとう『ときめいた相手にイケメンが迫るBLの呪い』だった。



 ◇ ◇ ◇


 この世界で、弟という存在が生まれた時。

 私は前世の記憶が蘇った。


 今でも忘れない。両親が楽しそうに弟の名前を発表した時だ。


美得瑠(びえる)、弟を大切にしてあげてね?」

「すっごく大切にするよ!お母さん、お父さん!」


 その名前は、私が前世で愛してやまなかったBL漫画の主人公と同じ。そしてこの世界は、あまりにもその漫画の世界に似ていた。いいや、そのものと言っても過言ではなかった。


 最初は喜んだ。それはもう有頂天。


 大好きなBL漫画の主人公。その姉になっていて、身近で推しである彼らを応援し、支えながら観察できたのだから。


 可愛い可愛い弟を必死で守りながら最終回まで間近で見守ることに成功した。


 だけど、漫画の最終回を過ぎ、弟達のアナザーストーリーを満喫しながら自分の人生を考えてみた時。


 自分の恋愛は絶望的だと思い知らされた。


 キュンとなった男性は、ことごとく男性と恋愛関係に発展する『イケメンとの恋愛イベント』が発生してしまう。


 それは、前世で「この友人達も絶対付き合うって〜」とか「このモブのBLも読みたいなぁ、本当にこの先生はキャラデザ神だよぉ〜」と盛り上がったせいなのか。


 どうやら神様は、私の転生先に配慮し過ぎたらしい。


 幼馴染み、同級生、先輩、後輩…。「好きです!」って告白された事もあった。それらの人達と交流を深め…ドキッ!とときめくと、その人物にイケメンとの恋愛イベントが発生する。


 この世界は、私の天国に見せかけた地獄なのではないか?と考えたりもした。


 目の前の素敵な人達は、あくまでも見ることしか出来ない。どう頑張ってもドキッとすれば男性とお付き合いする。深い仲にはなれない呪い。


 そりゃあ少子化にもなるよ。


 もしかすると、この世界の少子化は私のせいなのかも?


 呪いをどうにかしなければ、この国は終わりだよ…まったく。


 思い悩みながら生活するけれど、就職してもそれは変わらず…。私は誰とも付き合えず27歳になっていた。そして今回は、漫画の世界にしては地味な同期男性にアプローチをしていて、良い関係を築けていたのに「地味な俺にイケメンな後輩が迫ってくる。」という構図が出来上がっている…。


 くぅ…、この前うっかりドキッとしてしまったばかりに!!


 階段を一段踏み外してしまった時、彼が助けてくれたのだ。…けれど「この危険に対するドキッも含まれるの?」と困惑してる。ドキッと判定が雑だよね?神様?


 それでも、こうなってしまっては身を引くしかない。


 とぼとぼ歩き、自分のデスクまでたどり着くと椅子に力無くストンと座る。視線の先には『富士吉(ふじよし) 美得留(びえる)さん、会議が朝に変更になりました。必要資料は本日中に仕上げて下さい。』と私宛のメモ書きが残されていた。


 自分の名前に慣れない…


 美得瑠(びえる)って。両親は私の名付けに失敗した事に気がついたのか、弟にはまともな名前を付けているし。漫画の世界なだけあってか変な名前とは言われなかったけれど、同性婚も出来る近未来?な日本を舞台にこの名前は違和感が凄いよ。



 「はぁぁ~~~~~~。」

 「そのため息、もしかしてまた?」

 「…はい。」

 「あちゃ~。呪い再び。」

 「呪いなんてやめて下さいよ…。やっと良好な関係を築けていたのにあんまりです…。」


 先輩含め、私以外の人は夫と幸せそうで…妬みたくなるのを抑えるのに必死。邪心よ去れ!!とまるで修行僧の様に気合いを入れてから出社する毎日。


 同性を好む素質のある男性に惹かれるのか…それとも私が好意を寄せたから私を当て馬にしてBL漫画展開に発展するのか。その辺は27年生きていてもよく分からない。


 先輩はそんな私を気にかけて慰めてくれる優しい大人の女性で妬みの対象になんてしたくない。日々修行だ。



 「先輩と飲みに行きたいです…愚痴聞いて欲しいのに残業確定ですよ。」

 「どんまい。また婚活アプリで誰かと会う約束してみたら?ビーちゃん美人だし、アプリには多くの可能性が秘められてるよ…それを励みにさ。」



 BL漫画主役の姉なだけあって見た目は整っていると思う。それなのに27年彼氏が出来た事すら無い。婚活アプリなら!…と始めたら、デートの約束までは案外簡単にたどり着ける。


 それなのにこの前は、会って話しながら歩いている時に颯爽と現れたイケメンによって「ごめん!こいつ俺のだから!」とデート相手をかっさらって行かれた。



 「励みに…なれば良いんですけど。」



 むしろ落ち込んでいく。


 更にその前なんて「美得留(びえる)さんみたいな美人に会っても心が動かないなんて…やっぱり俺、自分の気持ちに嘘はつけない。あいつじゃなきゃダメみたいだ。ごめん美得留(びえる)さん!」と何も始まってないのに勝手にフラれた。


 この呪いは…どこまで続くのだろう。



◇ ◇ ◇

この後も続々投稿予定です。

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