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深まる謎、未知の脅威、新たな道標

 







「お前さん、鑑定で知ったと思うが、改めて自己紹介しよう。儂はアーヴァング・サンダーホークスだ。この聖王国アルケオンの冒険者組合の支部長を務めているただの老いぼれジジイだ」

 

 アーヴァングの爺さんが白髭を撫でて名乗るので俺も名乗りを上げることにする。


「そっちも鑑定で見たと思うが、俺の名前はゼレスデウナだ。こんな国に来たのは初めての田舎出身の初心者冒険者、っていう風だ。……それで?俺をわざわざ呼んだの理由は?」


 オレはスッと手を払うと従魔たちは静かに影の中に消えていく。


 爺さんはまったく物怖じしない毅然とした態度でオレを見据えている。


 ちなみに美人秘書さんは相変わらず青い顔して固まって動かないが。


「……ふう。やれやれ、とんでもないな、アンタは。あれほどの従魔を従える身の内の魔力量が計り知れん。恐らく鑑定で見えたステータス通りではないだろう」


 アーヴァングは剣を消して、アイテムストレージに収納したのか手ぶらになった手でコーヒーを傾ける。


「お前さん近場でAランク魔獣を狩ったそうじゃないか。それにあの若僧二人が一緒だったんだろう。まったく無茶しおって」


「あー、爺さんやっぱあの二人とは知り合いか」


 アーヴァングの爺さんがしたり顔からカール王子とマクスは爺さんと旧知か。


「まあな。アイツらがガキの頃からの付き合いだ。ちいっとばかし闘い方教えたのも儂だからな。おかげでヤンチャになっちまったがな。ガハハハッ!」


 爺さんは大仰に笑うと、真面目な顔になる。


「……お前さん『闇の女神教団』って知ってるか?」


「闇の女神教団?いや、知らないな。何だそれは?」


「ここ最近急成長した異教団だ。光の女神を主とする聖教会に対抗するように現れた。遥か昔に封じられた闇の女神を崇拝し、その復活と再来を理念とする。そのためなら何でもやる過激派なヤツらも多く集まる厄介なヤツらが、闇の女神教団だ」


 ふーん、闇の女神教団ね。ダークネスセブンズソードのゲームの世界には無かった。俺が知らない間にそんな大層な組織が出来てたんだな。まあ闇の女神は俺が倒したし、その力の源泉は俺が7つの魔剣を一つにした『暗澹たる七罪の痛み』として持っている。だけど闇の女神の復活は無いとも言い切れないからなあ。


「ヤツらは何処にでもいる。普段は日常の中に紛れて一般人として生活しているが、この街にも信者が何人も紛れているのは調べはついてる」


 アーヴァング爺さんはそこまで言ってコーヒーを飲み、後ろで固まっている秘書さんに声をかける。


「イーリャ、いつまでも突っ立てないで、コーヒーのお代わりをくれ」


「あ、は、はいっ!すぐにお持ちしますっ!」


 秘書さんはハッと我に返ると姿勢を正し奥の部屋に引っ込む。


「……まあだからと言ってヤツらが表立って動くことはあまり無いんだが。宗教は自由だ。闇の女神でも光の女神でも好きなだけ拝めべばいいが、恐らくキマイラなんぞ持ち込んだのは闇の教団絡みだと儂は睨んでいる」


「うーん、教団かどうかは知らないが、悪魔が使役していたからな」


「何?悪魔、だと?詳しく教えてくれんか?」


 俺は悪魔マラコーダとの一件をアーヴァング爺さんに話す。


「……なるほど、悪魔の組織マレブランケか。闇の教団が関わっている可能性は十分あるか。ゼレスの嬢さん、カールのガキどもを助けてくれてすまなかった。あんな奴らでも一応国には必要な奴らだからな。礼を言う」


 アーヴァング爺さんが頭を下げる。


「……しかし悪魔か。しかもそれは上級悪魔だな。上級悪魔は古代大戦でほとんど魔界に封印されたはずだが、生き残りがいたのか、あるいは……?」


「爺さん、目に目を、悪魔には悪魔を、だ。悪魔に詳しい奴が俺の従魔にもいる。アルモディア」


 ゼレスデウナの影の暗闇から抜き出すように真紅のゴシックドレスに身を包んだ美幼女が現れ優雅に一礼する。


「妾は千牙の吸血戦姫アルモディア。先程は失礼を御老体。してマレブランケなる怪訝な悪魔集団と嘯く悪魔、マラコーダについて、ですね?御主人様」


「ああ、知っている範囲内でいい。教えてくれ」


「……今から数千数百余年前、妾が己れの力を高めるために他勢の闇の者を喰らい狩っていた時代に遡りまする。当時闇の世界では数多の悪魔が血で血を洗う争いの坩堝の中で生存を懸けて戦っていました。妾もその内のひとり。少しばかり他の悪魔とは力の差があり運良くも生き残っておりました」


 一旦区切るアルモディア。


「粒揃いの悪魔の中でもしぶとく生き延び何度も何度も闘いを挑んでくる悪魔が一匹だけ現れました」


「そいつが例のマラコーダという悪魔か?」


「おそらく。妾にとっては幾多の悪魔と変わらない認識でしかありませんでしたが、妙にその者だけは知恵が回り力が強かったのは覚えています。妾も暫くは暇つぶしに相手をしていました。後は我が戦いに少しばかり飽きて固有空間の城を構えて侵入者を一切排除し御主人様に従魔化される千年の間は遭遇していませんでしたが」


「うむぅ……封印を逃れた(いにしえ)の悪魔か。厄介だな。其奴が現世で何らかの暗躍をしているやも知れん」


 アーヴァングの爺さんが髭を摩り唸る。


「爺さん、あれこれ考えても仕方ないぜ。狙われたのはオレなんだし、奴らはもともと聖女に喧嘩ふっかけようとしてたんだからな。なるようになるさ。とりあえずまた会ったら二度と悪さ出来ないようにシバいとくぜ」


 オレがあっけらかんとにべも無く言うとアーヴァングの爺さんは一瞬キョトンとした後、豪快に笑った。


「はっはっはっ!なんとも剛毅な小娘だっ!気に入ったっ!ならば儂からもお前さんにひとつ頼み事があるんだがな…………」


 爺さんはニヤリとする。










 ******










「私の師匠ですか?偏屈で頑固な引き籠もり隠居陰険エルフですよ」


 ジャスミィがにべもなく師をディスる。


「ジャスミィちゃんの師匠は転移魔法使えるらしいね。是非とも会いたいが、大丈夫かな?」


「大丈夫ですよ。ただ、師匠は精霊大陸にいるので、ここから向かうとなると何ヶ月も旅することになると思います」


「へー、ジャスミィのお師匠さんて凄い人なんだねー」


 シイラちゃんが感心して言う。


「もしあの駄目師匠に会いに行くならば紹介状を書きます。あの人は滅多に他人と接触したがらないので、明確な理由が無いと絶対に会ってくれないと思うので」


 俺はジャスミィちゃんに彼女の師匠に会えるよう紹介状を貰った。


 転移魔法を使える人物ともなれば、かなりこの世界に関するキーパーソンの可能性が高い。


 現状、よく分からん規格外アイテムしか確認出来てないからな。恐らく俺が考えるにはこの世界に何らかの制約、規制がかけられているのだと推測する。


 ダーネスセブンズソードの世界でも大陸の移動手段は普通は馬車か船か、一部で飛翔する生物に乗るかしか無い。


 プレイヤーはゲームシステム上、簡易なテレポート機能を利用していたが。


 その転移機能を解放出来ればいいな、と思う。


 こうしてとりあえず俺はジャスミィちゃんの師に会うべく今、エルドアザルの背中に跨って空を飛行している。


 ジャスミィちゃんたちに一緒に来るか誘ってみたが、本人はまだ未熟なので多分行っても会ってくれないだろうと断られている。


 とりあえずいったん彼女たちとはお別れだ。


 目指すは妖精や精霊が棲む精霊大陸。


「主ヨ、我ノ飛行能力デモ数時間ハカカル距離ニナルト思ワレル。構ワナイカ?」


「ああ。構わない。飛んでくれエルドアザル」


「承ッタ」


 水晶黒龍エルドアザルが天に向かい巨体をくねらせて登る。


「ほう………」


 どんどん空に上がると、青々とした澄み渡る空が何処までも広がる。


 遠くにちらほら何かの群れが飛んでいる。


 真上には煌々と照らす異界な太陽。そして昼でも存在感を表す三つの大中小と並ぶ月。


 うーむ。ゲーム内ではただのグラフィックだったが、こうしていると吹いてる風が心地いい。


「エルドアザル。ちょっと上に行けるとこまでいってくれないか?」


「上?承ッタ。主ヨ」


 すぐさま高速で真上に飛翔するエルドアザル。


 白い雲海を突き進み、しばらくすると抜ける。


「おっ!雲から出たぞーっ、てっ、アレなんだっ?」


 雲間から抜け、見上げた青さが濃い上空には異様な物体。


 巨大な歯車が幾つも取り付けられた金属の格子状のバカでかい機械の球体が見えた。


「主ヨ。アレハ『天秤球ザラスシュトラ』ダ」


「ザラスシュトラ?あれが?世界の魂魄のバランスを量る神の天秤という?」


 あぁ〜、ダークネスセブンズソードのストーリー設定にあったような。


 世界のすべてにおいて生きとし生ける魂の量は一定であり、光の女神と闇の女神が管理していた。溢れる生命は地に還り、次の生命が天より皈る。


 でも光の女神も闇の女神も存在しないなら、あれは機能していないのでは?


「………気になるな。あそこまで行けるか?」


「無理ダ、主ヨ。アレハ次元ノ領域ガ違ウ。ソコニアルヨウニ見エルダケダ。辿リ着ケナイ」


 なるほどね。やっぱり転移系は必須か。今の時点では行けない場所と。


「ところで、エルドアザル。今どの辺飛んでる?だいぶ時間と距離を稼いだと思うんだが」


「ウム。オソラク精霊大陸ニ差シ掛カルト………ムッ!?地上カラ何カ来ルゾッ!!掴マレッ!主ッ!!」


 エルドアザルの言葉と同時に白い雲界を一気に突き抜けて巨大な厳つい鳥の姿が目の前に現れた。











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