冒険者組合アルケオン支部
白髪のオールバックに白髭を蓄えたがっしりとした巨体の爺さんが値踏みするように俺を見てくる。
俺は応接間のソファーにどっかりと腰を下ろして長い脚を組み、辺りを観察する。
ここは冒険者組合の奥にある客人用の応接間。
あの後奥から眼鏡の美人秘書みたいな女性が現れて、この部屋に招かれた。
コーヒー(この世界にもちゃんとある)を出されて飲んでいたら、厳つい爺さんが入ってきた。
そして俺の目の前でどさりと座ったわけだ。
ちらっと爺さんを見てちょいと鑑定魔法をかけて見た。
アーヴァング・サンダーホークス
レベル87
種族 人間
年齢 65
クラス スペリオルヴァンガード
称号 戦王 剛拳 剣聖 英雄 生ける伝説 冒険者組合アルケオン支部局長 孝行爺 孫馬鹿
………なんだこのハイスペックジジイ。レベル80超えは半端ないな。ステータスやスキルは割愛するが、軒並み高次元のヤベエ感じだった。
称号もヤベェし、この爺さん人間の中で最強なんじゃね?あと、この視線で人殺しそうなゴツい顔で孫大好き孝行爺さんとか想像出来んわ。
「……そうやって誰彼構わず鑑定するのは得策とは言えんな。看破スキルを持つならなおのことだ」
爺さんが俺を射抜くように見て言う。
「悪いね。癖なんだ。それに、爺さんも看破スキルで俺を見てるんだろ?お互い様だ」
俺は応接間に飾られている色々な調度品の数々を眺めながら太々しく話す。
「……数ある人外種族は長いことこの目で見てきたが、お前さんはそれらとは違う。聖女アウライディスと同じ埒外の存在だ。それこそ古い伝承の中で語られる神や魔王のように」
爺さんは低く唸るように声を絞り出す。
「儂の勘は戦場でよく当たる。お前さんは……あまりにも危険すぎる……」
「ふ〜〜ん。んで?戦るのかい?」
俺が視線を爺さんに合わせると爺さんから殺気が溢れ出す。
側で控えていた眼鏡美人秘書がギョッとして数歩後ろに退がり距離をとった。
瞬間爺さんが何処からしか取り出したのか剣を抜き放ち、ソファーでくつろぐ俺の首筋に当てる。
刹那の間。
微動打にせず剣先の流れに任せたままのんびりとする俺は、爺さんが本気で斬ってないことは解っていた。
「……儂の殺気を喰らって、なお変わらぬその豪胆不遜な態度。お前さん、やるなぁ」
ニヤリと悪戯小僧みたいに嗤う爺さん。
「俺は別に構わないんだけど。俺の従魔はなかなか手癖が悪くてね」
爺さんが座るソファーの背後にエルドアザルの黒水晶の巨大な頭骨の顎が影から顔を出して爛々と紅い灯火の瞳を燻らせる。
「……我が主人ニ害ナス輩、許スマジ……」
爺さんのすぐ隣には真紅のドレスの幼い美少女が鋭利に伸び生やした紅い爪で爺さんの首筋に狙い定めている。
「……ご主人様に殺気を向けるなど、無礼な……」
その反対側には影から這い出たレオヴァルトが額の角剣で爺さんの首を寸断寸前で構えていた。
「……我が君の敵は我の敵。一刀のもと両断してくれる……」
「……はははっ!一本取られたのは儂のほうかっ!まともにやり合ったと思うとゾッとするわいっ!!」
爺さんは愉快そうに笑いながらシャキンと剣を収める。
俺の従魔たちはまだ警戒を解かず爺さんを睨んでいる。
美人秘書さんは眼鏡がずり落ち、真っ青な顔をして固まって動けなくなっていた。




