表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/66

深淵を覗くモノ

 








「キシャアアアッッッ!!!」


 カマキリに酷似した巨大な魔物の両の腕から生えた鋸状の大鎌が振り下ろされる。


 真下には小柄な少女が悠然と立っていた。蒼黒のセミロングの髪に裾丈の極端に短い黒いノースリーブのジャケット。下半身はローレグの紐パン。両腕と両足には黒い皮のベルトがいくつも拘束具のように巻かれていてる。


 ――――ガッッッギィッン


 甲高く鳴る金属音。


 ………ギャリギャリギャリ


 そして引き金切る嫌な響き。


「ふふっ、そんなに慌てなくてもちゃんと貴方の相手もしてあけますよ? ちゃんとね」


 少女の両手には自身と同じ身長ほどある大型の曲刀が握られており、打ち下ろされた魔物の大鎌をいとも軽々しく受け止めていた。


 その少女の足元には今対峙しているカマキリ型の魔物と同型の魔物の屍が有象無象とばかりあちこちに散らばる。

 足元だけではない。何処かの洞穴か遺跡か少女の周辺一帯には大小様々細かく斬り刻まれたカマキリ型の魔物の骸が埋め尽くしていた。 


 少女に鎌を振るった巨大な魔物は、転がる同型種よりも遥かに大きく、また威圧感と威風感が並々ならぬ雰囲気であるからにしてこの種に君臨する女王だと思われた。斃されたのは我が子たちだろうか、ギャリギャリと己れの鋸鎌を引き絞る力は凄まじい怒りに満ち満ちているのが解る。




 デスサイズイビルクィーン


 ランク: S

 種族: 蟲型魔獣


 蟷螂型の蟲型魔獣を束ねる女王。群れで狩りをする恐るべき捕食者。あらゆる魔物の天敵でり、竜にも匹敵する強さを持つ。有精卵で一度に数百〜数千もの卵を産む。





「この子たちの業魔(カルマ)は美味しく頂きました。メインディッシュは貴方で決まりですね――――とても美味しそうです」


 ペロリと赤い舌を出し可愛らしい唇を舐める少女。これから自分が平らげる獲物を見上げる。まるで体格差が違う両種。なのに対等、それ以上に少女が放つ雰囲気は眼を見張るものがあり、醸す殺気は尋常では無い。


「ギギッ」


 女王カマキリが両腕の下から新たな両腕を広げる。今少女と鍔迫り合う腕と合わせて4本。


「ギギギッッ」

 

 さらにその4本の両腕の根元から新たに2本の大鎌の触腕が生えてきて計6本。新たな4本の大鎌の腕先がゆらりと揺れると勢いよく少女目掛けて振り下ろされた。



「――――狂いいざ啼け『荒ぶ暴嵐の悪鬼(デーモニックテンペスタ)


 少女が呟くと魔物の大鎌を受け止めている大曲刀の刀身が3枚刃に展開し高速回転して大鎌を容易くバラバラに細切れにすると、そのまま勢いよく振りかぶり二対の旋風刃を投げ放つ。


「ではいただきます。――――逆巻き渦巻け螺旋の極嵐『裂刃骸砕喰龍(レイジングサイクロン)』」


 二対の旋風刃が禍々しい巨大な竜巻となり四つの大鎌を破壊しながらカマキリの女王の半身を飲み込み、下半部のみを残して駆逐する。


「ふう、ご馳走さまでした………あれ? 倒したのに業魔(カルマ)が入らない?」


 少女が不思議そうに小首を傾げる。


 下半部だけになった魔物の腹がビクビクと動き震えると肛泄器官からニュルニュルと黒く長い何かが這い出してきた。


 その長く伸びた触手のコブ状に膨らんだ先端部がガバリと花弁が咲くように開くと不気味な単眼がギョロリと少女を凝視する。


「えーと、もしかしたら''ハリガネムシ"ってやつですか?」


 すると魔物の尻から這い出したそれの単眼の瞳が赤く輝く。破壊されたカマキリの女王の身体、手脚が時間を巻き戻す様にみるみる再生されていく。


「キシャアアアッッッ」


 身体を取り戻した6本の大鎌を掲げる捕食者が再び怒りの奇声を上げた。


「うわあ……さすがSランクの魔物、雑魚とは違って簡単にはいかないみたいですね。これは食べ応えがあります」


 少女の手元に旋風刃がパシリと収まる。


「あのお腹の中にいるハリガネムシみたいな魔物を倒さないと延々と戦い続けるハメになりそうですね。だったら――――亡き踠き裂けべ『毒蛟の鋏咬(ヴェノサヴェート)


 二対の旋風刃は姿を消し、代わりに巨大な手甲が出現し右肩腕部を全て武装し覆うと少女が身を低く構える。


「――――スキル『舜影舞遊』」


 少女の身体が搔き消え魔物の正面に肉薄する。カマキリの女王がすぐさま大鎌を連続して振るが切ったのはことごとく残像であり本体はすでに空中に移動していた。


「どうせすぐ再生しますからね。まず首から貰いますよ」


 突き出した手甲の先から、くの字型の生物の骨を加工したような巨刃が2連現れ鋏のように挟み込み魔物の首を切り離す。


 首を切られたのにも拘らずカマキリの女王が6本の大鎌を上下左右6方向から切り込まれるが、少女は残像を残しながら受け流すと同時に攻撃してきた触腕を手甲の鋏で全て断ち切る。


「ここら辺ですかね。あの蟲がいるのは」


 寸断した首と触腕はすでに再生を始めている。先程姿を見せた寄生魔獣は腹の中に潜って顔を見せない。宿主の肉体が危機的状態に陥らなければ出てこないらしい。


 だから無理やり引き摺り出すことにした少女は魔物腹部中央部に狙いをさだめた。


「――――朽ち堕ちて悶えろ『毒螺魔愚羅(ドグラマグラ)』」


 鋏が大きく横に開きカマキリの女王の腹に食い込み、手甲中心から節くれた歪な杭が現れる。杭の先端は注射器の針のように鋭く穴が空いており、ズドンッと射出され魔物の腹に穿たれた。


 途端、再生途中だった魔物の身体の動きが緩慢になり止まると体色がどす黒く変化して表皮にぶくぶくと気泡が出来てドロリと溶け出した。


 毒だ。


 少女が手甲の杭から撃ち込んだ強力な毒が魔物の再生力を上回る速さで躰を浸食しているのだ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ