聖女とお話し
「よく来てくれた。正直来ないと思っていたが……」
「ただの気まぐれだ。気にしなさんな」
俺の前に聖女アウライディスがテーブルを挟んで椅子に腰掛けている。
アルケオン王城内客室。俺は堂々と聖女の手紙を城の番兵に見せたら、メチャンコ畏れてた。その後聖女付きの侍女、メイドさんに案内された。専属のメイドか、羨ましい。
「……君を呼んだのは、あの謎のプレイヤーの事だ」
アウライディスが神妙な面持ちで語る。
「乱入して来た暴風少女か?確かに気にはなるな。それに変な事言ってたよな。"まだデータが完全では無い"とか」
俺はあの少女が言っていた言葉を思い出す。
「そうだ。まるでまだ本当に彼女にはゲームが続いてるような言い回しだった。私はこの世界はゲームのダークネスセブンズソードでは無いと思っている。あくまでも非常に似てるだけで別の世界だと認識している。これは600年かけてこの世界で生きてきた私の見解だが、君はどう思う?」
「アンタはこの世界がパラレルワールド的な何かだと?俺は逆にこの世界は単純にダークネスセブンズソードの延長だと思ってる。本物のゲーム自体はサービス終了したけども。要するにアップデートされ続けてるんだよ。今もこの時も、誰かしらの手によって、な。まあ、正直解らない事ばかりだが」
俺は思った事を伝える。
「……未だゲームが続いてるということか?もう私にはこの世界が現実だとしか思えないのは、過ごした時間の差か……」
聖女さんにとってはこれがリアルな当たり前の世界になってるのか。長いこと いろいろ苦労してそうだけど。まあ、それはいいが俺には他に気になることがあるから聞こう。
「聖女さんや、この世界に蘇生魔法はあるのか?俺は闇属性ばかりで光魔法は一切使えないんだけど、アンタ使えるんだろう?完全復活のリザレクションとか事前復活のリーンカーネーションとか強力なやつ」
聖女は俺の問いに何言ってんだコイツ?みたいな顔になった。
「……蘇生魔法は失われた伝説の魔法だ。光の女神がこの世界から去って生命を回帰、再誕させる魔法の類は一切使用出来ない。私も最初は蘇生魔法はあるものばかりだと思っていたが、初級の基本魔法のレイズデッドすら使えないことに驚愕したのだ。死の直前に至るまでの傷や病や呪いならいくらでも治癒出来るが、死んでしまったらそれまでだ。知らなかったのか?」
「……どうりで基本のレイズデッドも表示がグレーになってるから使えなかったのか。んじゃ例えば光の女神が復活すれば蘇生魔法使えるんじゃないの?」
光の女神は闇の女神に殺されたけど光の女神の力は完全には失われていない。だから回復魔法は使えるが蘇生魔法は使えないわけか。ゲームだと普通に蘇生魔法使えたのにな。
「……光の女神を復活させる、もしくは新しい光の神を誕生させる……か。今、世界には光の女神を信仰している者たちが数多く存在している。暗黒の黎明期が終わり1000年、平穏に暮らす人々の信仰心が高まる今の時代なら神の再臨もあり得るのかもしれんが……」
アウライディスが少し間を置き口を開く。
「……光の女神の復活は不確定要素の希望的な話だが、私にはもうひとつ看過出来ぬ不安要素がある」
聖女が俺をジッと見つめてくる。
「……闇の女神の復活、もしくはそれに変わる邪悪なるモノの誕生だ」
「……おい、なんで俺を見る?闇の女神の復活は無いぞ。七罪大業の魔剣は俺が全部持ってるからな。闇の女神の意思は俺が滅ぼしたから乗っ取られるとかなら絶対に無い、と思うが……もしかしたら俺がその邪悪なるモノと言いたいのか?」
コレは俺も考えた事だ。
闇の女神の力の象徴たる七つの罪を冠する魔剣。これがもしかしたら操者の魂を乗っ取るとか洗脳するとか徐々に意識が書き換えられるとかで最終的に闇の女神の再臨とか胸熱な展開になるのでは?とか。
そんな美味しいイベント俺は見逃さない。
暗黒面のもうひとりの己れとそれに抗う本来の己れが闘うとか考えるだけでも楽しいんだけど。
もしくは、すでに俺自身が邪悪なモノとして誕生してるか。
これには気になるスキルがあるからな。''邪神の胎動"これがなんなのか解らんけど特別なものだという事は解る。
仮に俺自身がラスボスとかだったら、どうなるんだ?他の転生者と闘うんだろうか。そうなったら世界征服でもするか。別次元の世界の侵略とかもいいかも。
もしくは神を倒すか。それも楽しそうだ。
俺がそんな事を考えているとは思ってないだろう聖女は、苦笑いしながら首を振る。
「……いや、君ならば多分大丈夫だろう。仮に君がそうなったら全力で戦い滅ぼそう、必ずな」
「そん時は頼むわ。絶対に負けんけど」
やっぱり俺は嫌いじゃないな、この聖女さん。
「あとの懸念はやはりあの少女だ。あの少女からは邪悪なるモノの気配がした。間違い無く世に禍を招く存在になる。私は仮にも聖女を賜る身だ。捨て置けない……だから君を呼んだのだ魔女ゼレスデウナ」
なるほど。これが本題か。




