2話 事情
午前中、あの様な言い付けをされても、いざ行動するとなると難しく、作戦本部のテントにいる責任者であるというフィルアニア人女性のギルド幹部ロジータは、作戦に直接関係のない事には答える必要はないと相手にせず、取りつく島もなくなった二人は、仕方なくエリナ達と共にグィホンの看病をすることにした。
エリナに尋ねてみる。
「グィホンの調子はどう?」
「そこまでひどくないよ、しっかり休めばすぐ回復すると思う。」
身体こそ怪我をしているものの、意識は明瞭としているグィホンが答える。
「ああ、この様子なら明日も余裕で参加できるぜ。」
「それは絶対に駄目!無茶すぎるわ!こんなの馬鹿げてるよ。」
「いや、俺が参加しないと、俺たちの中で罠を見つけるのが1番上手いのは俺だから。」
「なんでテツヤもあなたもこの仕事に拘るの?危険だって言ってるのに!」
「テツヤが言ってた、この仕事を成功させることだけが、俺たちがフィルアニアで地球人としてやってく最後のチャンスかも知れない。って……。」
一同は静まり返った。話を聞いていた鞍馬とソンヒョンも反論の余地はなかった。
考えてみれば、この仕事で褒賞を満足に貰えなかった場合、多少の蓄えがあるとは言え、この冬を現在の環境で耐えきるには難しいものがあるかもしれない。今すんでいる家を手放し、ギルドの宿舎などに拠点を移し、安い仕事を奪い合いその日暮らしの生活をすることになれば、地球人としての誇りを忘れ、粗野なフィルアニア人冒険者と変わらない存在になってしまうかもしれないと、テツヤは危惧しているのだろう。
鞍馬はテツヤ達に合流するまでの2ヶ月間を思い出した。
そして、テツヤ達は自らを地球人と呼び、生物学的、民族的特徴を呼称にすることは差別的であるという考えからか、プライドが許さなかったのだろう、頑なにブラックアイと言う呼称を用いることはなかったことも。
その日はそれからは目立ったことは何もなく、帰って来たテツヤ達も出くわした10匹程のゴブリンを難なく駆除し、後で換金するための証明書をギルドから受け取った後、班みんなで食事を取り、眠りについた。
次の日の朝、鞍馬は日の出前にテツヤに起こされ、身支度をした後軽いミーティングをした。
「今日は遺跡の調査をする。鞍馬とユミコ、怪我をしているグィホンは何か身に危険を感じたらすぐにここに帰ってくれ。」
「遺跡の中に入って、仮に日が暮れても中で仮眠をとって調査が終わるまで俺たちは帰らないつもりだ。他の班がそうしているように。」
昨日遺跡の調査に出た班3つの内、帰還したのは2つだけである。その班の報告によると、遺跡内部にはゴブリンや簡単な罠が散見されるものの、その班が探索した限りでは決して危険ではないということであった。そのため、死体の見つかっていないもう1つの班は日が暮れたら帰還するという命令を無視して探索を続けているものとテツヤとソンヒョンは推測した。
テツヤの説明を聞きながら、エリナは複雑な表情を見せていたが、説明が終わると強い表情でこう語った。
「みんな、この仕事を成功させて地球人としての誇りを守りましょう!」
「「オオー!!!」」
一同の士気は最高潮に達した。そして長い1日が始まった。




