鎧、人になる
『これを、、、そうだなぁ。タンタ、身につけてみてくれ。』
『にゃ!オレ?』
俺は、タンタに作ったばかりの姿見の護符を手渡した。
その護符を恐る恐る身につけるタンタ。
『これ、大丈夫なんっすか、、、?』
『別に危ないものじゃないぞ。』
タンタの体格にはそぐわない大きさだが、試着なので勘弁してもらおう。
タンタが護符を身に着けた途端、異変が起こった。
『おおー?』
『なんだなんだ?』
タンタの見た目が変わり、20歳前後の人間の女の子になった。
もちろん、ケモミミも尻尾もない。
『成功だ!』
パチパチパチ!
俺は、心のなかで拍手喝采した。
『えぇ〜!オレ様、人間になってる?』
『というか、タンタ、女の子だったのか、、、』
『ぷっ!もう師匠ったら。』
タンタが驚き、別の意味で俺も驚き、エルトが少し笑う。
『ありがとな。タンタ、それを返してくれ。』
『は、はいな。あぁ〜ビックリした〜。』
タンタから護符を返してもらい、タンタはまた獣人に戻る。
そして、その護符を今度は俺自身につける。
鎧姿だった俺は、、、
『やった。人間の姿だ!』
『わぉ!』
『お〜!こいつは驚いた。』
『はい、兄さん。僕もです。』
『わ、私もです。』
『ふふふ、どうだ?俺の思いつき。』
そう人間に変化する護符。
エルフのエルトが人間に、獣人(猫)のタンタも人間に、なら俺はどうだろう?
試した甲斐あって、俺も人間の姿に変身し大成功。
姿見の護符は、天樹様素材の板に魔力遮断術が仕込まれ、術式が仕込まれた宝珠ではなく、変化術の効果がある魔石が使われていたわけだ。
多分、変化の能力を持つ魔物の核なんだろうな。
ギルドの宝物庫に、エルトの持つ姿見の護符についている石とそっくりな魔石があって、もしやと思ったが、一緒の魔石だったとはな。
問題だったのは、変化術の術式を俺が知らないことなんだが、魔石だったならこの変化術効果だけを引っ張り出し天樹様素材の板に埋め込み、バランスを保つだけだ。
あとは、その二つを繋ぎ止めている精霊力の残滓量とのバランスだったんだが、緩衝材料として俺の魔力を結構注いで、ようやく調整での折り合いがついたって感じだ。
”人間に変化”と言う、この小さな魔石の変化効果の複雑なことといったら。
コツさえ掴めば、人間以外の何にでも化けることができるのだろうが、あいにくとそこまでは解らないし、今は必要ないだろう。
人間に化けれる、それだけで十分だった。
「お?しゃべれる、、、おぉ?匂いも感じる!ん〜食欲も有る。ふふふ、これで皆とも一緒に食事が出来そうだぞ。ん?どうした?」
「いや、あのよぉビルって、何歳位って言ってたっけ?」
「俺の年齢?多分、40歳位だが。」
「多分?」
「俺は、戦災孤児だったからな。生まれた歳も月日も分からん。」
「そうか、、、ハイリン、どう思う?」
「ん〜、、、」
「なんだ?さっきから。俺の外観に問題でも有るのか?」
俺は、急に不安になってきた。
人間にちゃんと化けていると思っているが、実はとんでもなく人間離れしているような顔つきだったりとか、腕がもう一本あるとか?そんな変な状況になっているのではないかと。
「ビルさん。その、ご自身で40歳だと言っていますが、見た目は20歳前半くらいで、とても若く見えます。」
「なんだ、俺が若く見えるってことに疑問をもっていたのか。まぁ俺は、元々人間でなく人魔族だからなぁ。種族的なものだと思うぞ。エルトだって護符をつけると少女になるだろ?」
「いやまぁ、ビルは、もっとおっさん顔してると俺は思っていたんだが、仲々の美丈夫じゃないか。」
「師匠、、、ポッ。」
(いや、エルトは、何かちょっと違う感情で俺を見ていないか?)
「あの、師匠。少しお聞きしてもいいですか?」
「ん?なんだ?」
「そのお召し物は、以前から身につけられていたんですか?」
「衣装?そうだな、鎧に取り込まれる前に着ていた服だな。」
ゆったりした長めの灰色のワンピースで、腰のところを紐でくくった簡素な作りだ。
「えとですね。私達エルフの村での寝間着に似ているんですけど。」
「へぇそう、、、ん?え?この服、エルフのパジャマぁ?」
俺は、ずっとこのタイプの服を着ていた。
子供の時から、成長につれて身体が大きくなってサイズは変わっていったが、基本的にこの服だ。
俺の師匠がそうしろって言ったのもあるが、、、
「もしかしたら、師匠は、エルフの血を引いているんじゃないかと。」
「あぁ、なるほど、それなら若く見えることには合点がいく。」
ハイドが手をぽんっと打つ。
(その仕草の方がおっさんくさいけどなぁ。)
「、、、って、俺、エルフ?でも、耳は長くもないし、長寿ってわけでも、、、あ、それは誰にもわからんか。」
「ビルがエルフの血を引いていても不思議でも何でもないな。」
「そうですね。その見た目もですが魔術だとか。」
「あぁ、そうか。それで精霊力も感じ取れるのか。変に納得した。あ、でも、精霊と会話なんて出来ないから精霊魔術も使えないぞ。」
「ハーフエルフではなく、もっと血が薄いんではないでしょうか?」
「あぁそうか。俺の両親は、どちらも人魔族だったから、、、先祖にエルフがいたんだろうなぁ。いや、まぁ、俺の出自の話は、もういいじゃないか。俺は俺だ。それより、めしを食いに行こう。」
「それもそうだな。知ったところで何も変わらんしな。ともかく、めしにしようぜ。俺も腹減ってたわ。じゃぁ、あらためて宴会しよーぜ!」
「兄さん、お酒はほどほどに、、、」
「師匠。私もなんだか嬉しい気持ちです。」
そうして、俺達は、宿屋アムールの向かいにある食堂で大いに飲み、大いに食べまくったのだった。
(あぁ、めしを食うっていいよなぁ。この感覚、忘れてたわぁ〜)
、、、、、、、、、、、
「はっ!あれ?ここは?いや、いつもの白い世界、自分の意識世界か。っていうか、俺、寝てしまっている?」
「お?気がついた?っていうか、まだ寝ているけど。そうね、ここは睡眠と覚醒のはざまだから、半分覚醒かな。あの姿見の護符を作れたのは凄いけど、身につけて食事してお酒も飲んだら、そら眠気も来るよねぇ。」
「キョウカか、、、もう大丈夫なのか?魔力切れだったようだが?」
俺がそう声を掛けると、俺の目の前にパッとキョウカが現れた。
なんか久しぶりの白い世界のキョウカの登場だった。
「あら、やだ。どの口が言うのかしら?」
「あ、すまん。俺の無茶が過ぎた結果だったっけ。でも、お陰でみんなを守れたし、クエストもクリアした。ありがとうな。」
ぷいっと、あっちを向いてるキョウカに、俺は謝罪と感謝を告げる。
キョウカは、ちらっとこちらを横目で見たかと思うと、また向こうをそっぽを向いてしまった。
「なんだ?今日は機嫌が悪いのか?」
「ちがーう!」
と、言ったと思ったら、ぱっとこちらに向き直り満面の笑みで言い放つ。
「おめでと!レベルアップ!そして、上級者到達!」
「お、おう。」
どこから出したのか、紙吹雪?を撒き散らし、笛?で音を奏でだすご機嫌な様子のキョウカ。
「おぉ〜、上級者かぁ、実感無いけど。」
「すごいね。たった10日でここまで来るなんて。エルフの末裔ってことを差し引いても驚くべき成長ね。ダンナはもう、不可能を可能にしちゃう漢よね。」
「ははは、ありがとな。」
キョウカに褒められて悪い気はしない。




