鎧、協力者を得る
『お前さん、儂の思念が伝わるか?』
『!!』
(驚いたな。この親父と思念伝達ができそうなんだが、信用していいものかどうか?)
『警戒しているのか?悪いようにはせん。とりあえずミハイルから離れてくれんかの?』
カチャン。俺は、返事をする代わりに装備を解除してやった。
そして、バラバラになりミハイルを解放した。
「お?おー!!親父、助かったぜ。解呪もできるのか、、、流石だな。」
(うるさいヤツだ。勘違いをしているが、今はその方が都合がいいか?)
「ミハイル坊、とりあえずこの鎧は儂が預かるが、誰にも言わんでくれよ。」
「ああ、わかってるって。」
そう言ってミハイルは、せいせいした風で店を出ていった。
「さてと。」
親父は、そう言って俺の方に向き直り、また触れて語りかけてきた。
『お前さん、話はできるか?儂は、鍛冶師のガストだ。少し話を聞かせてほしいんじゃが。』
『、、、正直、驚いたぜ。あんた何者だ?』
『おっと、やっと喋る気になったか?じゃが、それは儂のセリフじゃ。お前さん、本物の鏡花水月じゃろう?』
『お?知っているのか?』
俺は、少し警戒を解いた。
『あぁ、ワシらドワーフの間では有名じゃしな。ドワーフの技量をも凌ぐエルフの鍛冶師のことはのぅ。そして魔術付与の幻のアイテム”鏡花水月”の話もな。まぁここに名前が刻まれているからなんじゃが、、、』
ガストが指さすところには、確かに文字が刻まれている。
俺が触れた時は、俺自身がこの鎧に取り込まれてしまったが、ガストが触れても何も起こらなかった。
『あとは本物か偽物かの判別が必要なんじゃが、ミハイル坊からの話からすると自立している鎧と見た。さすれば、本物の可能性が高い。で、お前さんは、その鍛冶師キキョウなのか?』
『いや?俺はキキョウではない。ビルハインドというが、、、』
俺は、この親父を信用することにした。
そして、ここまでの経緯を語った。
魔王軍に追われ、森を彷徨い、そして謎の館が眼の前に現れ、その館にあった鎧に触れたら、こんな風になっていたと。
ついでにキキョウや鏡花水月については、名前くらいしか知らないことも付け加えた。
『おそらく、その謎の館は、”時空の館”と呼ばれるものじゃな。』
『時空の館?』
『そうじゃ、館そのものが時空を彷徨っているという話じゃ。そして、お前さんの前に、たまたま現れたんじゃろう。』
『ふーむ、その館がキキョウの住まう館だったと?誰も居なかったように思うが。』
『キキョウは生きているかどうかもわからん存在じゃ。何せ2000年前の傑物じゃ。だが、彼の者が作った代物は、簡単には消えんじゃろ。時空の館しかり、お前さんのような鎧しかり。』
『それで、あんたは、俺をどうするつもりだ?』
『ん?いや、そうさのぅ。眼の前に彼の者が作った物があり、他にも複数あることがわかっただけでも、十分いい経験したと思って満足しておる。儂はともかく、お前さんじゃな。これからどうするつもりなのか。儂にできることがあったら手伝っても良いと思っている。』
『ほ、本当か?』
(なかなか、いい親父さんじゃないか。)
俺は、すっかり気に入ってしまった。
『それと、お前さんは、そう簡単に鎧から出れないじゃろう?。というか、出たいか?昔の暮らしに戻りたいか?』
『いや、俺は、魔王軍から追われてた。今更、戻りたいとは、思っていないさ。それに飲まず食わずで、いいしな。』
『まぁ戻りたいと思っても、例の時空の館に行くしかないがの。行ければの話じゃが。』
『ま、そん時は、探してみるさ。』
『そうか。ま、その話はさておき、お前さん、まずは、この村から出ることだな。昨晩、ギルドから通達があってな、ギルド倉庫にあった鎧が何者かに盗まれた、とな。もし、店にその鎧を持ってきたやつが居たらギルドに報告するように。とも書いてあった。お前さんの事じゃろ?もっとも、お前さんは自力で脱出したんだろうが、ギルドもまさかそんな鎧とは思っても見ないじゃろうしな。』
『俺としては、魔術を覚えてもう少し気楽に過ごしていきたいと思っちゃぁいるが、今のままじゃただの魔物扱いだ。どうしたものか、、、』
『ふーむ、そうじゃの。まず、兜がないから魔物と言われる。だから、人間の相棒、装備者が必要なわけじゃな。』
『ああ、そう思ってあのミハイルに装備してみたんだが、、、』
『ミハイル坊みたいなやつはいかんな。あやつは馬鹿じゃからな。フォッフォッフォ』
『そうだな。確かにバカだったな。しかし、原因はそうではなく、会話ができないことだったんだが。』
『いや、すまん。そういう意味ではなく、、、』
『はぁ、、、』
『そう落ち込むな。お前さんの考えている相棒が現れる可能性は、ないわけじゃないだろう。』
『まぁそんなに期待はしてないさ。さて、それじゃ、もう一つの希望は、魔術かな。』
『おお、そうじゃ、お前さん魔術を覚えたいと言ったが、今の時点でなにか使えるのか?』
『あぁこの姿になる前だが、仕事で使っていた簡単なものなら、今も変わらずに使えるようだぜ。鬼火に水膜、土壊、それに浮遊だ。』
『おー!凄いの。初級とはいえ、4属性も使えるのか。鎧にしとくのはもったいないの。』
『おやじ、皮肉はいいから、何か魔術を使えるなら教えてくれ。もしくは、魔術書の一冊でもあったら見せてくれ。』
『フハハ。鎧なのに皮肉とは、笑わせよる。あと、お前さん、ここをどこだと思っとる。鍛冶場だぞ、んなもんあるわけなかろう。そして、儂もただの鍛冶師じゃ。』
『そ、そうだよなぁ。』
俺は、すっかり落ち込んでしまった。
『じゃが、儂が探してきてやることはできるな。どんなものでもいいのならじゃが。』
『ほんとか!頼む。もう少し使える魔術を覚えたいんだ。』
『ふぉっふぉ、鎧が、フルプレートアーマーが魔術を使うか!ふははは。』
ガストは、腹を抱えて笑っている。
(いや、俺、マジなんだけど。)
『あと、不思議に思ったんだが、あのミハイルには念話が通じなかったのに、あんたとは念話ができる。この差はなんだ?』
『あぁ、簡単な理由じゃ。ミハイル坊には、魔力特性が無いからの。儂には、このマジックアイテムがあるからじゃが。』
そういって、俺に触れていた手袋をひらひらとさせた。
『こいつの本来の効果は、アイテムの鑑定。じゃがお前さんのようなインテリジェンスウェポンとなら、会話できるんじゃないかと試したんじゃ。』
『そうなのか。だとすると、人間の相棒としての条件が一つ追加だな。魔力特性所持者か。』
(念話が出来ないんじゃ不便なことこの上ないしな。)
『よし、じゃぁ、取引といこうかの。わしは、魔術書と相棒になりそうな人間を探してきてやる。お前さんは、たまにでいいからここへ来て、旅の話を聞かせてくれ。その時のこの鎧の状態も見たいしの。今はまだ未成熟な鎧と見た。どんな力を発揮するのか非常に興味があるわい。』
『なんだか、俺の方にメリットが多い気がするが、いいのか?』
『そうでもないぞ。そのキキョウの技を少しでも垣間見えたなら、儂もまたその域に到達できるかもしれんからの。』
『そういうもんか?』
『お前さん、感じからするとまだまだ青二才じゃな。』
ガストのじいさんは、「とりあえず魔術書を探してきてやるわい」と言い残し鍛冶場から出ていった。




