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鎧、悪夢を見る

、、、、、、、、、、

「はぁはぁはぁ」俺は、暗い夜の森を彷徨っていた。

「なんで、こんなことに、、、」


 一人文句を言っても誰も答えてくれない。

 魔族の鍛冶師として、魔王軍に武具を作って納めたり修理したり、忙しい毎日を過ごしていた俺だったが、突然、俺の作業場に兵隊共がやってきて、俺にこういった。


「貴様の武器の性能が悪かったせいで、魔王軍に大きな被害が出た。よって貴様を捕らえよ。との命令だ。悪く思うなよ。」

「ちょっ、待ってください。そんな理不尽な、、、」と言いつつも、ここから脱出を考える俺。


 うまく作業場の裏から脱出できたのはいいが、、、

 着の身着のまま手ぶらで走り続け、追手をまくために魔族領の深い森に入ったものの、このままじゃ魔獣にでも襲われて、のたれ死ぬだけだ。

 しかし、妙案もなく、あてもなく彷徨い続けた。

 途中、見つけた川で喉を潤し、尚も、森の中を歩いた。

 どのくらい彷徨ったか、気づけば奇妙な館の前に居た。


挿絵(By みてみん)


「こんな森の中に館?」


 誰かが住んでいる様子もない、闇に包まれた朽ち果てた古びた洋館。

(何か出そうな館だけど、、、なにかしら道具があるかも知れない。)

 ナイフや水を運べる器などないか探すため、この館に入ることにした。

(扉には鍵か、、、いや、これは魔術錠?)

 魔術錠は、物理的な鍵が不要で、鍵をかけた者の魔力特性によって閉じられている錠前だ。

(それよりも変なのが、この館を覆う結界のような魔術、、、物理シールドでも魔術シールドでもない。シールドというより幻術の類いか?)

 周囲から見えなくするカモフラージュかな?だが、俺には見えている。

(うーん、まぁ、侵入することには違いない、っと、このくらいの魔術錠ならば。)


 俺は、職業柄こういった構造物は簡単に理解できる。

 しかも魔力特性については、師匠から叩き込まれた技がある。

 武器や防具などに魔力を付与する目的で、散々修行させられた。

 対象物の魔力の流れの道筋を読み取り、自分の魔力を流し込む。

 ただ俺は、未熟なので防具ならお守り程度。少し耐久性があがる程度だ。

 師匠の話だと、もっと効率的な方法が存在するらしい。

 まぁ今は、そんな必要がないので、この魔術錠の特性を読み取る。

(ん?そんなにややこしくはなかったか。)


 カチャン!


 なんだか厳重な鍵システムにしては、軽い音をたてて、解錠できた。

 館の扉を開けて、中を伺う。

(うん、真っ暗で何も見えないな。どうやって物を探すかな。)

 鬼火は、火事になりかねないし、追っ手に見つかっても嫌なので却下。

 そう思案していると、窓からの月明かりで、少し館内が照らされた。

(ん?月明かりか。)

 タイミングよく今日はフルムーンだった。

 月明かりもあり、暗さに目が慣れてきたせいもあって、ある程度、館内の様子が見えてきた。

 中に入ってみて思ったが、かなりの年月が経っているのか、埃が積もっている。

(やはり誰も住んでいない廃館だな?)

 中に入ってすぐの所は、ただのホールになっているようで、使えるものはなさそうだった。

 ふとホールの奥を見つめる。


 ホールの奥にある階段は、暗闇に溶けていて、じっと目をこらしてもよく見えない。

「ん?今、なにか光った?」

 おそるおそる、ホールの奥へと進んでみた。

 ヒタヒタと自分の足音が響く中、二階に続く階段の前まで来た。

 ここまで近づけば、何が光ったかわかる。


「鎧、、、」


 黒い重厚なフルプレートアーマーだ。

 二階への階段前で、立ちふさがるように数体並んでいる。

 鎧は今にも動き出しそうな状態でじっと立っているが、危険な雰囲気は感じない。

 何せ武器も持たず、腕はだらんとしていて、頭がない。

「あれ?なんで兜がついてないんだ?」


 そして、俺は尚も近づき、鎧の胴部分に刻まれた小さな文字を見つける。

「古い文字か?え?鏡花水月?、、、実在したのか、、、」

 その名は、昔話として聞かされた魔術アイテムの名前。

 師匠が遠い目をして、語った魔術付与を得意とする鍛冶師のおとぎ話。

 そのおとぎ話は、エルフでは珍しい鍛冶師の物語。


「まさか、こんな所に?本物なのか?」

 俺は訝しげに思いながら、その小さな文字に触れた。

 バチッ!

「!!ッツ!」

 指が鎧に触れたとたん指先に痛みを感じた。

 そして、俺は意識を失う。

、、、、、、、、、、、、、、、、


「うわぁ〜!!」

(うわ!!)

 耳元で絶叫を挙げられ目が覚めた。耳も目もないけど。

(な、なんだ?)

「何だこれ!こっわ!!」

(なんだミハイルが目を覚まして、血文字を読んだのか。)

「これ、夢だよな!!だれか夢と言ってくれ!」

(あいかわらず煩いやつだ。さっさと魔術店に行けって。)

「俺は、呪われてたのか!ちくしょー昨日から調子が悪いわけだぜ!」

(いやいや、何でも俺のせいにするなって。)

 文句を言うが伝わらない。


「くそ!今から行って店が開いてるかわかんないが、、、あの人の所なら。」

(何かブツブツ言いながらもちゃんと店に行くみたいだな。よしよし。)

 ガチャガチャと音を立てながらミハイルは家を出て、どこかへ向かっている。

 外はまだ暗いが空が白じんで来ている。


(日の出前か)

 まだ、周りは眠っているからかシンと静まり返っている。

 だからか俺の鎧の音が余計に響く。

(大丈夫か?これ?騒ぎにならないか?)

 そんな俺の心配をよそにミハイルは、とある店?の前で扉を叩いた。


「おやじぃ!居るか!助けてくれ!緊急事態だ!」

 そこは魔術店ではなかった。

(ここは、、、鍛冶屋?おいおい、俺のメッセージには魔術店って書いたはずだが?)

 俺が困惑しているうちに、店の中から返事がきた。

「起きとるぞ、鍵は開いとるから入ってもいいぞ。」

 ミハイルは、返事があるやいなや扉を開け店の中に入った。


「おやじぃ!すまねぇ!これをなんとかしてくれ~!」

「なんだミハイル坊か。どうした立派な鎧なんぞ装備して、戦争でも始まるのか?」

 ミハイルは首をブンブン振って、店の親父に泣きついている。

「ちげーよ。寝てる間にこんなことになったんだよぉ。こいつは、この鎧は昨日、この村を襲おうと来ていたやつなんだよぉ。外そうにも堅くて外れねぇし、しかも血文字で呪いの鎧だってぇ言うんだぁ~」

 最後の方は、支離滅裂な話を店の親父に言い出した。


 店の親父はいかにも鍛冶職人って感じのドワーフのようだ。

 あきれた表情でミハイルを見ている。

「何を言っている?呪いだって?いや、ちょっと待て、、、うーん、ふんむ。」

 俺を間近で見て、何かを見つけたらしい。

「こ、これは!」

 驚きの表情で、ミハイルに説明しだした。


「ミハイル坊よ。よく聞け。確かに呪いの鎧のようじゃが、儂がなんとかしてやる。その代わり、この事は他言無用じゃ。お前も呪われたなんて都合が悪いじゃろ?」

 そう言って、ミハイルを落ち着かせている。

 ミハイルは涙目になっている。

「わかったからよぅ、誰にも言わないから、親父、頼む。このままじゃぁ用も足せないし、重いし動きにくいし、呪われたってのも格好がつかねぇし。」

「よしよし、少し待っておれ。」

 そういって親父は、鍛冶用の手袋を身につけ、そっと俺の胴体部分に触れてきた。

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