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鎧、相棒を探す

太陽のまぶしさで気づいたら、俺はだだっ広い畑の真ん中にいた。

そして、なぜか鎧姿になっていた。

しかも頭部の無い鎧姿だ。

それは、あの怪しげな館の中で見た鎧そのものだった。

(なんで、こんな姿に?そして、ここはどこだ?)

頭部が無いのに、なぜか視覚はあった。

俺は、あたりを見まわす。

少し遠くに畑を耕す人影があった。

(あ、あの~、、、!?)声をかけようとしたが、声が出ない。

しかもその人影は、俺に気づくなり、驚いた形相で何か叫びながら大慌てで、

森の方に去っていった。

(あぁ行ってしまった、、、あっちに村でもあるのかな?)

とりあえず俺は、先ほどの人影を追い、森へ入った。

森の中からは道があり、この先に家なり、村なりがあるのだろうと思われた。

森の中の道を歩みながら思案する。

あの怪しい館で意識を失ったのか?何気に、この鎧に触れたとこまでの記憶しかない。

(つまり、俺は、この鎧”鏡花水月”に取り込まれてしまったのか。)

(呪いなのかなにかわからないが、こうなってしまっては、どうすればいい、、、、

いや、まてよ。ここがどこかがわからないが、少なくとも魔王軍からは追われることは、

ないかも?この鎧が俺、ビルハインドなんてわからないだろうし。)

俺は、楽観的に考えることにした。

(あとは、ここがどこなのか?だけど。)

そして、あの館はどこへ行ったのか?

(この道の先に答えがあるわけではないだろうが、じっとしていても始まらないしな。)

森の中の木々の少ない丘から、集落が見えた。

この道を進んでいけば、たどり着ける。

そうして、森を抜けて村がはっきりと見えたころ、物々しい連中がこちらに向かってきていた。

そして、その集団の先頭を走ってきていたのが、今、目の前にいる若造だ。


人魔族である俺には魔力があるが、魔術はあまり使えない。

俺は今更ながら、魔術の訓練をしてこなかったことを後悔した。

この鎧の姿になってしまってから、より一層そう思うようになった。

この状態で魔術が使えないというのは、不便でしかたない。

仕事で使っていた鬼火、水膜、土壊、というのが今の俺に使えていた初級魔術だ。

後は、現在も使っている物を浮かす浮遊魔術くらいか。

しかも剣術も習っていないから、剣も扱えるわけもなく、そもそも所持もしていない。

この鎧姿は、完全に見掛け倒しとなってしまっている。

そこで俺は考えた。様々な魔術を習得する。

見かけは屈強な鎧戦士、でも実は魔術が使える。

そうなれば、ここがどこだろうと生きていけるかもしれない。

更に剣術が使えるやつを中身とすればいい。

そうすれば、魔法戦士の誕生だ。

そうして、近くの村に行けば魔術書が入手できるだろう。

そう思って村に近づいたんだが、人間の村だったらしく、

そりゃこの姿じゃ、討伐対象だわな。(人間って懐が狭いよなぁ。)


面倒くさいが、中身が入れば他の人間も安心するだろう。

眼の前の若造に装備してもらえばいいわけだが、そう簡単にはいかない。

俺は、声が出せない。

口が、、、いや、頭がないからか?

つまりは、人間と意思疎通が現在できないということになる。

先ほどからこの若造に念話も試してみているが通じていない。

もしかしたら、鎧を装備してもらえれば通じる可能性にかけ、

こうしてこっそり、この若造についていってるわけだが。

(こいつは、家に帰るようだな。)

周りより少し大きめの家に入っていった。

俺は、外でこっそり家の中を伺う。

「おや、ミハイル。今日は早いじゃないか。」

「ああ、せっかく魔物を倒して名をあげようとしたんだけどな。酒場でこのざまだよ。」

「しかたがない子だねぇ。あんたは父さんと違うんだから、そんな無茶をしないで王都の守備隊にでも志願すればいいじゃないか。」

「いやだからさ、それだと名を上げることもできないし、昇進するまで無茶苦茶時間がかかるじゃん?ってもういいや。寝るよ母さん。」

「はいはい、お休みよ。」

(なるほど、この若造、ミハイルといったか?手っ取り早く名を上げたいわけだな。)

家の外で聞き耳をたてる俺。

何度も言うが頭はない。したがって耳もない。でも聴覚はある。

視覚同様、なんらかの能力なんだろうと思う。

この鎧”鏡花水月”の力は、未だ不明。

どんな隠された力があるのか全くわからない。

地道に試していくしか無いが色々できそうな気はする。

そしてミハイルは、二階の自分の部屋に入り、ベッドにもぐって眠ってしまった。

さて、まずは第一段階。

この男に装備が可能か試すとしよう。


浮遊で二階の窓に近づき、その応用で窓の内側からかかっている窓の留め具を外す。

この力は、戦いの場では役に立ちそうもないが、ダンジョンにあるという宝箱なんかの解錠、罠解除、あるいは、罠をわざと発動させる時には便利なんじゃないか?

ダンジョンなんかに行ったことはないのでわからないけど。

カチャン。小さな音を立てて、窓の留め具が外れた。

窓をそーっと開けて、浮遊状態で部屋に侵入。

そうして、眠っているミハイルに少しづつ装備させていく。

手足は簡単なんだが、胴と腰の部分の難易度が高い。

この部位は、2つに別れていて留め具で固定する仕組みなんだが、装備者が立っていないと装着できない。

そう思ったが、俺は一つひらめいた。

(こいつ自身を浮かせばいいのだ。)

ふわっとミハイルを浮かせた。

(あっはっはーこれは簡単。)

そうして、装着完了となった。


次は、第二段階。

(このミハイルを起こして、念話が通じるかどうか、、、)

俺は、ベッドの端に座り、手の甲で顔を軽く叩いてみる。

「ん?何だぁ、、、もう朝かぁ?」

まだ寝ぼけて目も開けないミハイルの片方の頬に手甲部を押し当ててやった。

(冷たかろう?)

「ぴゃぁー!!」

そして、やっと目を開け周りの状況を確認している。

「えーと?え?なにコレ?え〜!!この鎧は昼間の!どうなってんだぁ!なんで、俺が装備しちゃっているわけぇ!」

(まぁ混乱するよな。さて試すぞ。)

『俺は、この鎧だ。聞こえるか?わかるか?』

「うぉー外れねぇ!なんでだぁ!」

(ダメか。やはり通じないのか、、、)

「くそぉどうすりゃぁいいんだぁ!」

(そりゃこっちのセリフだっつうの。)

どうするか考えていると、一つ気付いたというか閃いた。

(字を書けば意思疎通ができるんじゃないか?)

そう思って、部屋のすみにある机に向かい、そこにあるだろう紙とペンを探そうとした。

「うわ!なんか身体が勝手に動く!気色わる!」

どうも身体を動かす主導権は俺にあるらしい。

「これは何だ!呪いの鎧なのか!」

(なんかうざくなってきたな。やかましいし。)

俺は、大人しくさせるために、少し力を入れて拳で顔をなぐった。

「ぶっ!」

(あ、力を入れすぎた?)

ミハイルは鼻血を出して気を失っている。

(硬い手甲で顔を殴られたら、そりゃ気絶するか。まぁいいか、、、いや、よくねえよ!気絶させてどうするよ!)

俺の第2段階計画は失敗したようだ。

(起こしてもまた騒ぐだろうし、どうするか、、、ふんむ、そうだな、こいつが気を失って、、、

もとい寝っている間に文をしたためるか。第2段階計画”改”だ。)

紙やペンがないか机の周辺を探したが出てこなかった。

(しかたがない、こいつの鼻血でやってみるか。)

俺は、机に鼻血で文字を書き綴ってみた。

なぜか、鼻血でスラスラと書ける。

鎧姿の無骨なガントレットの指で血文字を書いている絵は、傍から見てどうだろうか?

そんなことを考えながらも、机上に血文字で1文を書き上げた。

俺は、机にこう書いた。

"これは、呪いの鎧だ、呪いを解きたければ魔術店へ行くがいい。”

少々内容がストレートだが、血文字だから中々に雰囲気がでて、良いだろう?良いよな?

俺の計画は、こうだ。

ミハイルは、この文を読んで呪いの鎧と思い込み、魔術書のある店に行くだろう。

そこで俺は、魔術書をこっそり探し、使えそうな魔術を覚える。

そしてできれば、装備者と意思疎通できるような魔術があれば申し分ないが、、、

(何はともあれ、こいつが起きるまで待つか。)

こうして、俺の新たな人生、、、もとい、鎧生の初日が終わる。

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