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「おかえり、クレイ。その子は友達かな?」
クレイの親が経営する宿屋へ着いた。
話しかけてきたのはクレイの父親であるラベルさんだ。
エルフだからといって、老けないわけではなく寿命は150年ほど。地球の日本の平均寿命の二倍だから、長いと思われるかもしれない。だけど、この世界の人間は100年生きると神様的な半透明の板に聞いたから、そこまで長くはないそうだ。それでも、五十年ほども違う。
「そうだよ、お父さん。彼はワカバ。戦争先で出会ったんだ」
「戦争先か。またとんでもないところで出会ったんだな」
「ああ、騙されて連れて来られたらしくてね。そこで話をしたら、気が合ってね」
「それはよかったな。クレイは少し変だけど良いやつに育った、自慢の息子だよ。よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
自慢気なクレイを見ると、親子関係は非常に良好なんだろう。
そもそも、仲が悪いのに見たことのない友人を連れてきて、値段を値切るなんて無いだろう。
「クレイ、ポアラにも挨拶してくるといい。厨房にいるからな」
「わかったよ。ワカバも付いてきてくれよ。お父さんはお母さんに頭が上がらないんでね」
「お前にもわかる時がくるさ」
その言葉を真に受けずに流すクレイについていく。
「お母さん。ただいま。友達を連れてきたんだ」
「あら、おかえり」
クレイのお母さんは綺麗な人で、もちろんクレイも美形だ。
「彼はお友達? 私はポアラ。クレイの母よ。よろしくね」
「僕はワカバといいます。よろしくお願いします」
「ワカバを部屋へ連れて行っていい?」
「いいわよ。でも、荷物はどうしたの?」
ありません。
持っているのは大量の落ち葉だけです。
「それは大変だったのね。安心して、そんな子からお金を取るほどひどくはないわ」
ポアラさんはとても良い人なんだな。
「じゃあ、次は街の案内だよ」
八百屋、干物、肉、生活必需品、嗜好品、日用品、小物を売る場所。
鍛冶屋や魔法専門店など、馴染みのない店まで教えてもらった。
そして最後に軍の詰所だ。
「集合時刻には遅れてないね。よかったよ」
次話 11/7 15:00