13
エルフたちの軍隊は徴兵制で、戦場から近くの戦闘スキルを持つ人の中から選ばれる。
普段はそれぞれの生活がある人がほとんどだ。
これは、他の国では見ないことのようだ。それは、人は生まれ持ったスキルを絶対として生きるものだとされているからだ。
エルフがそうではないのかと言われれば、それはまた違うのだが、エルフの国では戦闘スキルを持つ人が料理や給仕をしていることがあるということだ。経験値やお金を手に入れられなくても、雇用という形態がないわけではない。
クレイも普段は実家の宿屋を手伝い、もしもの場合に備えて鍛錬も怠らない人。スキルが【宿屋】といったものではないため、実家を継ぐということが完全にできない。しかし、なんと彼には婚約者がいるという。その婚約者は【給仕】のスキルを持つ人で、宿屋関連の一つとして成り立つそうだ。
スキルの存在するこの世界だからこその構造だろう。
そして、徴兵制であるからこそ帰ってからは少しの猶予を与えられてから、軍のほうへ集合がかかる。
帰還直後に軍の駐屯基地に報告というわけではないのだ。帰って家へ顔を見せる程度だが、これが意外といい緩衝材になるそうだ。
ちなみにだが、完全に軍に従事するという人もいる。
それは上官であり、報告書をまとめ、それを国の上層部へ送るなどの業務を受け持つ。なかなかに忙しいそうだ。
サルカというエルフ兵隊の大隊長を勤めた人もそういった、軍に常駐するような人であるらしい。
「それでは報告を受けたいと思う。第一部隊から頼む」
眼鏡をかけたエルフが書類の束を傍に言う。
ちなみに、五人組で小隊、それが五つ集まって中隊、その五倍で大隊となる。エルフの大隊長というのは125人を統率する人であったようだ。
「大隊長が来てたけど、サルカさんは個人で強いから、実際に連れて来られたのは60人ぐらいかな。聞こえたでしょ? あの足音」
サルカさんのスキルは本人の意向により公表しているようで、【精霊と共に歩むもの:B】だそうだ。
【落ち葉拾い:F】では足元にも及ばない戦闘力だ。
「それにしても、魔導士様がいらっしゃるとは思わなかったな」
魔導士フィン。僕が街にドナドナされたときに温かく迎え入れてくれた人だ。
えらく墓場だなんだと言っていた。
「若者をからかう癖だけはやめてほしいな」
クレイはあの人に引っかかって、掃除した後の部屋を別の部屋とすり替えられて、逆に掃除してない部屋と掃除した部屋をすり替えられたそうだ。
軽く転送やらなんやらを成し遂げてしまうのだそうだ。
「おばあさんまで一緒にふざけるから、どこまで本気かわからないんだ」
「ノリいいんだな」
「ほんとだよ」
この世界の魔法について質問をした。
「エルフって魔法をどうやって使うんだ?」
少しはぐらかした質問の方法だ。
「僕に魔法工学を聞かないでくれよ。白衣の人が医学系、筋肉質な眼鏡が工学系だよ」
彼が指をさしたほうに、白衣を着たエルフと日に焼けたような細いエルフがいた。
「簡単なものなら僕だってわかるけど、専門家に聞いたほうがいいよ」
おーいと声をかけて一人を呼び出した。
「久しぶりだな。今回付いて行ってたのか?」
「それはお前もだろ。紹介するよ、こいつはワカバ。同じ掃除仲間だ」
「掃除仲間なんて本当にできるものかよ。俺はクレイの同級のカルバレット。カルでいいぜ」
「ワカバだ。クレイが掃除仲間なんだ」
驚いたカルバレットは、まじかよと肩をすくめた。
「ワカバに魔法を教えてくれよ。お前が適任だよ」
「わかったぜ! 俺が丁寧に教えてやるよ」
次話 11/8 5:00




