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51話 頂上にて

 !!!!!!。


 後ろから激しい爆発音がして地面が揺れる。


「おい、今の……」


「大丈夫、ただの爆発音だよ」


 何だか嫌な予感がしてネメアの方を見るが彼女は気にした様子もない。


「それよりそろそろ頂上だよ」


 トシミツと別れてからかなり走ってきた、そろそろ火口に着こうとしていた。


 周りの空気は先程よりも熱を帯びてとても暑く、高度が高くなり肺に入ってくる酸素も薄く感じる。


「こいつはまた凄い魔力だな……」


 いつの間にか精霊石の中に戻っていたリュミールがボソッと呟く。


「お、流石リュミール、どうやら気づいたみたいだね」


「何に気づいたんだ?」


 いまいち二人が何について話しているのかわからず直接聞く。


「ドラゴンだよ。こいつはまた……この前戦ったベヒーモスより凄い魔力だ……」


「まじかよ……」


 あの時の戦闘は思い出したくもない。今はこうして神獣は力を貸してくれているが前のような死闘はもう御免だ。


「まあまあそんな嫌な顔しないで、もしかしたら意外と話が通じるかもよ?」


 目の前の悪魔はそんな呑気なことを言ってのけるが楽観視し過ぎではなかろうか……。


「ああ、それはありえるね」


 なんでお前もそんな考えになるんだ。


「はあ……」


 今更になって気が重くなってきた。


 そんな思いとは裏腹に火山の頂上、火口の側まで到着して、足を止める。


 火口の中はドロドロとした真赤な溶岩が流れ、それに逃げるように火花が空に舞う。


「やばい、倒れる……」


 熱さで意識が朦朧とし、足がふらついてくる。


「おっと……大丈夫?」


 咄嗟にネメアの肩につかまり何とか姿勢を保つ。


「ごめん……」


「流石に暑さを感じないと言ってもこの温度は凄いな……レイルがふらつくのも無理はない」


 いつもの様に軽口を叩いてくるかと思ったが、今回は珍しくリュミールも心配してくる。


「っ!!!!!」


 途端、とてつもない威圧感が襲いかかってくる。


「今日は随分と来客が多いな」


 先程のデーモンキングよりも大きく、炎を連想させる真紅の躯体、余計な脂肪はなく引き締まった筋肉、大きく広がった翼はひとつ羽ばたく度に強風を生み出す。


 そこには神話級の魔物、ドラゴンが居た。


「お、家主の登場だ」


 神話級の魔物を目の前にしても魔装機は驚きもせず、落ち着いている。


「すまないなお客人、今の私は虫の居所が悪い、今すぐにここを立ち去れば今回は見逃してやろう」


 真紅の龍は俺たちの目の前に着陸して威圧を放ち続ける。


「いやー、こっちも色々と急いでてね。少しお邪魔させてもらえない?」


 悪魔は引かずにこちらの意志を押し通す。


「聞こえなかったか? 私は機嫌が悪い、即刻立ち去れ!」


「はあ?なにそれ、なんで私達がアンタの機嫌を取らなきゃならないのよ」


 何だか、雲行きが怪しくなってきた。


「貴様、今誰にそんな口を聞いているのかわかっているのだろうな?私は誇り高き………」


「貴方が誰だろうが誇りが高かろうが知らないけど私達はこの中に用があるの。さっさとその馬鹿でかい体が退けてくれない?」


 何故かネメアはドラゴンに喧嘩腰の態度をとる。


 おい、さっきまで話が通じるとか言っていたのはどこのどいつだ?

 何故そんなに相手の機嫌を損ねるような態度をとるんだ……。


「そうだそうだ、このクソトカゲ野郎が! 調子こいてるといてこますぞ!!」


 お前も野次るんじゃねえ。


「おい!! 今私のことをトカゲと言ったのは何処のどいつだ!!!」


 ほら、怒った。なんでお前らは物事を面倒くさくするのか………。


「貴様らは許さん! ここで消し炭となるがいい!!」


 空気が震える咆哮を上げてドラゴンは戦闘態勢に入る。


「……よし、上手くいった」


 そんな呟きが目の前の悪魔から聞こえてくる。


 ………え?あなたもしかして戦いたいからあんなわかりやすい挑発したの?


「嘘だと言ってくれ……」


 思わず口から溢れ出てしまう。


「ホントだよ?」


 満面の笑みをこちらに向けてネメアは大鎌を構える。


 ……なんでこうも俺の周りにいる悪魔や精霊は面倒事を起こしたがるのか。


「ほら、さっさと構えないと死ぬぞ?」


 他人事のようにリュミールは精霊石から言ってくる。


「……はあ」


 まだ手に馴染まない剣の重さに違和感を覚えながら、腰の剣を抜く。


 ラミアから餞別として貰った剣はネメアに壊されてしまったので魔王城から適当に替えの剣を拝借してきた。


 見た目は特に変わったことのないただの片手剣。しかし手に持つとわかる、この剣はただの剣ではないと。剣の細かい善し悪しを見分けれるほど詳しいわけではないが、素人目から見てもこの剣は業物だとわかった。


 さすがは魔王が作った剣と言ったとこか、これでも失敗作というのだから驚きだ。


「来るよ!」


 ネメアの注意とともにドラゴンの尾が鞭のように鋭くしなり向かってくる。


 早く攻撃に反応できたので何とか尾を躱すことが出来たがその威力は絶大。


 今の一振で俺達がいた場所の地面は深く抉れ、大穴が出来上がっていた。


「さすがドラゴンだね! 次はこっちの番……」


 すぐさまネメアは地面を蹴ってドラゴンへと突っ込んでいく。


「よっと……」


 ドラゴンの首元めがけて大鎌を大きく振る。


「ふむ」


 ドラゴンは特にネメアの攻撃を躱したり防御することなく、もろに攻撃を喰らう。


 ガコン、と耳に響く打撃音がしたかと思えば

 ドラゴンは無傷で何も感じていないようでそのままネメアを手で払い飛ばす。


「流石は神話級……今のじゃ駄目かー」


 ネメアは綺麗に着地をして、ボヤく。


「おい、自分から吹っかけたんだから何とかしてくれよ?俺は何もできないぞ……」


「任せてよ、これから本気出す!!」


 そう言って今まで微塵も感じさせなかった闇魔力が爆発するようにしてネメアの周りに漂う。


「ほう、なかなかの魔力量だ。それでは私も……」


 ネメアと同じようにドラゴンも自信が持ちうる魔力を解放し、本気を出す。


「レイルは混ざらなくていいのかい?」


「……馬鹿言うな、こんなのに混じったら本当に死ぬぞ」


 加護があるにしたって天職もなければ今は晦冥も満足に使えないのだ、誰が好き好んであんな死地へと赴かなければいけないのだ。


 今回は「任せろ」と言ったネメアのお手並みを拝見させてもらおう。


「……ホッ」


 先ほどよりも速く地面を蹴り、ネメアはドラゴンへと接近していく。


「フン!!」


 ドラゴンは牽制するようにそこら辺の大岩を掴むと粉々して石礫のようにしてネメア目掛けて無数に飛ばす。


「よっ……と……」


 しかしネメアは兎のように飛び跳ね、余裕綽々と石礫を躱していく。


「ねえ、ホントに混ざらないのかい?」


 ネメアの華麗な動きに目を奪われているとまたもそんな無謀な声が聞こえてくる。


「しつこいぞ?」


「はあ……それじゃあ私は少し休ませてもらうよ。呼んだとしてももしかしたら気づかないかもしれないからその時は自分でなんとかしてくれ」


 そう言ってピタリと静かになる。


 ……自分の出番がないと思って拗ねたな。


「……」


 まあ、今はいい。


 どうせこの調子では俺たちの出番は本当に無さそうだ。


 目線を戻すとネメアとドラゴンは激しく武器と拳をぶつけ合っている。

 ドラゴンが口から火を吹いたかと思えばその火をネメアは大鎌の一振でかき消し、そこからまた殴り合いのような打ち合いが始まる。


「なかなかやりおるな!!」


「そっちもね!!」


 先程まで怒り心頭だったはずのドラゴンはどこか嬉しそうに頬を釣りあげている。


 あまりにも楽しそうに戦っている両者を見て、仲良くキラキラと爽やかな汗を流してるようにしか見えなくなってくる。


「なんか目的忘れてない?」


 一人の悪魔と一匹の龍を眺め、そんな嫌な予感が頭の中を過ぎり始めた。



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