34話 それからそれから
リュミールと契約を結んでから1週間が経った。
俺の中にあった闇の魔力はリュミールの力で何とか抑えることができて、これで死ぬこともなくなったのだが未だに授業に出ないで森の中にいた。
別に授業がめんどくさくなったとかそういう訳ではなく、リュミールの力を使いこなすための特訓をしているのだ。
自由にリュミールの光の力を使えると言ってもすぐに使える訳ではなく、もちろんのごとく練習が必要なのだ。
一刻も早くアニスを助ける方法を探すためにまずは力をつける必要があるので授業をサボってこうして練習をしている。
今はその特訓の休憩中。
ギラつく太陽の光から逃げるように俺は木下の木陰に座っていた。
「君はなかなかに忍耐力があるね〜」
すると金糸雀色の綺麗な髪を一本にまとめて結ったリュミールが姿を現す。
「なんだよその髪の毛……」
わざとらしく髪を見せ付けてくるのでしかたなく聞いてみる。
「お! 気づいてくれたね〜。そんなにこの髪が気になるかい!?」
「いや別に……」
「よし!いいだろう、説明してあげようじゃないか!! いつも同じ髪型だと君が飽きると思ってね、私の粋な計らいで髪型を変えてみたわけだ。どうだい、いつもより二倍増しで可愛く見えるだろう?」
あざとい仕草をくねくねとしてアピールをしてくる。
「ああ、いいんじゃない……」
めんどなので適当にあしらい、特訓を再開する。
「うわ〜、すごい棒読みだな。そんなに恥ずかしがらなくてもいいのにね〜」
などと加害者は随分と自分の都合のいいよに今のやり取りを解釈する。
1週間一緒に特訓してきてずっとこれだったのでさすがに慣れてきたと思いたいがまだ少しウザイと感じてしまうから本当にウザイのだろう。
「さっさと始めるぞ」
「もう、せっかちは色々と行けないぞっ!」
……ほんとにうるさい。
リュミールは俺の左手につけている母ステラから貰ったブレスレットの石の中に入る。
なんでもこのブレスレットについている石は精霊石というとても貴重な石らしくリュミールも300年程ぶりに見たらしい。元々、紺色だった精霊石の色もリュミールがこの石を依代にし始めてから金糸雀色のよく見覚えのある色に変わってしまった。
「いくぞ」
「ああ、いつでもいいよ」
息を合わせて精神を集中させる、容量はアニスの時と変わらない。俺の体には今、二つの魔力が存在する、一つ目に闇魔力、二つ目に光魔力だ。
この二つの魔力は元々、人間の体にはない魔力で普通の人は元素魔力と言う魔力がある。この元素魔力とは火、水、土、雷、風の五つの属性魔法を使う時に必要なものだが、俺にはこの魔力は皆無で今言った五つつの属性魔法は使えない。
そのかわりなのか俺は普通は持ち得るはずのない二つの魔力が体の中にある。
一つ目の闇魔力というのは、これは元々アニスの魔力でこの魔力をアニスからもらって俺はいつも魔法やスキルを使っていた。その魔力がなぜだか俺の体の中に残っていてのだ。今まではアニスのおかげでなんの害もなく闇魔力を使えていたていたが今はその制御がないのでとても力の強いまま俺の体の中にある。人間には闇魔力の力は強すぎてとても扱いきれる代物ではないらしい。
そして何故俺の体に大量の闇魔力があるのかと言うとリュミールが言うにはアニスが残した魔石と俺の負の感情が共鳴して魔石の中に大量にあった闇魔力が俺の体の中に入り込んだのだという。そのまま俺は闇魔力の力に耐えれず迷宮の中で意識を失い大暴れしたらしい。こんなことは普通ありえない事でリュミールもしっかりとこの状況を理解できていない。
二つ目に光魔力だが、これはリュミールのものだ。この魔力を使って今は俺の体の中にある闇魔力の強い力を抑えてくれている。この魔力も人間にはない魔力で俺のように光の精霊と契約することでしか使えないのだという。今はこの光魔力を体に慣らしている途中でまだ完全ではないがいい感じに慣れてきた。この光魔力を使って何ができるのかはわからないがリュミール曰く、とても便利らしい。
体全体、血管一本一本に光魔力が流れる感じがする。
最初はゆっくりと流れ循環していきだんだんとその速さが上がる。
「くっ!熱い!!」
体の中でものすごい速さで流れる光魔力に耐えきれず苦痛の声が漏れる。
「おっと、やめやめ」
リュミールが急いで魔力の流れを止める。
「いやいや、だいぶ慣れきたじゃないか!」
「今のでどれくらいだ?」
「そうだな七割くらいかな」
「……そうか」
だいぶいい所まできてはいるがまだ魔法を使える日が来るのは先のようだ。
「もう一回だ」
「はいは〜い」
そしてもう一度同じことを繰り返す。
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気がつくと夕陽は完全に落ちて森の中は暗闇が包んでいた。
「今日はおしまいだね」
「そうだな、帰るぞ」
リュミールの言葉に頷いて学園へ続く道を歩く。
「ホイっと……」
真っ暗な森の道を明かりをも持たずに無言で歩いていると目の前に光の球体が現れる。
「……」
「もうっ、一言くれれば光ぐらい出してあげるのに〜」
「ああ、すまない」
リュミールの気遣いに感謝しながら進んでいく。
「それにしても夜になると不気味だよね、この森」
「……そうか」
「反応薄いな〜、私みたいにか弱い女子は怖いものなんだよ!」
「ジメジメした洞窟にずっと居たくせによく言うな」
「それとこれとは話が別なんだよ!」
「あ、そう……」
わざとらしく弱々しい演技をするリュミールを見て呆れる。
「ていうか君、学校ってとこには行かないのかい? 私行ったことないから行ってみたいんだよね〜」
ふわふわと浮遊しながらリュミールは聞いてくる。
「そんなことしてる暇はない。一刻も早くお前の力を使いこなせるようになってアニスを助けるんだ」
「その助ける宛はあるのかい?」
痛いところを突かれる。
「……今はまだないけど何をするにも力は必要だ。ある程度お前の力を使えるようになれば俺は学園を出るつもりだしな」
それはリュミールと契約した時から考えてたことだ。
宛がないのならばこの世界を歩き回って探すだけのことだ。
「いいのかい、君の夢は騎士になることだろう?この学園を出たら騎士にはなれないんじゃ……」
これまた痛いところを突いてくる。
「……その時はまた考える。今はアニスを助けることだけに集中する」
「まあ別に君の運命だ、私はその手助けをするだけだからいいんだけどね」
リュミールは大きく伸びをして、精霊石の中に入る。
「今日も疲れた、私は少し寝るとするよ」
「わかった」
そうしてまっすぐと寄り道をせず、暗い森の夜道をひとつの光を頼りに歩いていく。
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