息吹の決意
「クナト様。私タケミ様の所に行ってみます」
涙を拭ってそう決心した私。私が氣吹戸主の生まれ変わりならば、タケミ様を救うことが出来ないかと考えていた。
「いぶき・・・。うん分かった。明日村の案内も兼ねてタケミのとこに行ってみよう。私が行ってもタケミの遣いにタケミに取り次いでは貰えなかったけど、いぶきと一緒なら・・・」
「クナト様・・・」
「タケミは私を許さないんじゃないかと今日まで逃げてきてしまったけど、いぶきがこちらへ来たからには私もちゃんとタケミに向き合わないといけないね」
クナト様の勘違いが結果的に村の荒廃を招く原因になってしまった。今日までずっと自責の念に苛まれていたのだろう。クナト様も泣きそうな顔をしている。
「氣吹戸主はきっと後悔していないと思います。・・・なんとなくですけど」
「いぶき・・・」
氣吹戸主は自分の意志でやりたい事をやり遂げたのだ。私でも、自分にしか出来ない事ならば、やっぱり行動してしまうから。
「・・・おまたせ」
人と話す時は相手の目を見て話しなさいというお母さんの言いつけどおりに、丁度お互いを見つめ合ってる(下心無し)時におとりちゃんがお風呂から出てきた。
わぁ、なんてナイスタイミング。で、この後クナト様が要らない事行ってますますおとりちゃんに誤解されるという未来予想図が見える。
「おとり、早かったね!もっとゆっくりあったまって来ればいいのに」
「・・・今は夏なんだけど。もしかして私邪魔だったかしら?」
「わぁ、そうじゃなくて!」
ほらね。やっぱりこうなった。クナト様が私に助けを出してほしそうにこっちを見てるので私は
「おとりちゃん、私にも選ぶ権利はあると思う」
「!!そ、そうね。そうよね」
フォローをしてみたんだけど、それはそれで複雑そうな顔をしているおとりちゃん。
何かフォローの仕方を間違えたかな?
こんなとりとめもない話をしているだけでも、私の居た世界ではどんどん月日が流れている訳で・・・。そう思ったらなんとも言えない気持ちになった。
「とりあえず、この後おとりには私から話をしておくから、いぶきは布団に横になりなよ」
「布団は敷いてあるわ。こっちよ」
「はい。クナト様おやすみなさい」
「おやすみ、いぶき」
クナト様、さっきの話はどこまで話すのだろうか?うまく話を合わせられるか心配だな。
おとりちゃんに私が今夜寝る部屋まで案内してもらった。客間というか、布団の枕元に蝋燭の灯り以外何にも無い和室に布団が敷かれている。
電気の無い生活にも慣れなくちゃいけないのか・・・。
「私達は居間の隣の部屋で寝るから、何かあったら声かけてちょうだいね」
「ありがとう。おやすみなさい、おとりちゃん」
「おやすみなさい、色々あって疲れたでしょうからゆっくり休んでね」
おとりちゃんが襖を閉めて出て行った後、私は布団に横になってみた。
ふかふかお布団はお日様の匂いがする。向こうの世界とおんなじだ。お母さんが干してくれたお布団・・・。じんわりと目の奥が熱くなるのを感じた。
お母さん・・・お父さん、尊に、タロウ。
私が居なくなって物凄く心配してるだろうなぁ・・・。ごめんね。ごめん・・・ね。
泣きながら眠ってしまった私がその日見た夢は、家族で笑いあっている夢だった。