悪ー捌ー
この街、ユニアドは驚くべきことに街全体が学校となっているようなものだった。
行くところ行くところ『ユニアド学園』という文字がついた建物を見かける。
なかには研究施設、なかには専用施設、なかにはユニアド学園の卒業生が立ち上げた店もしくは企業。
一応ユニアドとは関係のない店などもあるにはあるがそこもユニアドの学生だと証明できるものがあれば半額となる仕様となっている。
ここはまさに学校のための街だった。
街そのものが学校なのだ。故に学園都市。
俺の国ではこんなことありえない。なにせ国が総力をあげて一つの学校を作ったようなものなのだから。
そんな資産はウチの国にはない。ここまでのものとは言えなくても小さな学校一つも作れるほどの余裕もない。
なぜなら、戦争中だからだ。
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毎日毎日、血で血を洗うように敵なのか味方なのかどちらか区別がつかないほどたくさんの命が奪われているのだ。
そんな情勢でまともに学校など作れるはずもない。
勉強も教えていないわけではないが、そのほとんどの時間は訓練で相手をいかに効率良く殺せるかの練習と不測の事態についての対処法ばかり。
まだ十五にも満たない少年が自分の隣で共に戦っていたこともよくあった。
そして自分より年下のまだ未来ある若者が目の前で死ぬ光景もよく見た。
最初はそれを見た時、俺は何のために戦っているのか、と自身の心に訴えかけたものだ。
自分の国を、未来を、子どもたちを守るためではなかったのか。
そんなことを思うこともあり、たびたび上官にあたって殴られることも多々あったものだが、いつしかそれも思わなくなった。
別に何も感じないわけではない。
ただ、それよりもまず自分の中にある言葉が囁いてくるのだ。
『これは戦争なのだ。仕方のないことなのだ。己の無力を呪う暇があるのなら、敵を殺せ』
そんな、誰に言われたのかそもそも本当に誰かに言われたのかも分からない言葉が俺の中に染み渡っていく。
あぁ、そうだ。そうだった。
もしもこの光景が嫌ならば。
自分よりも年下のまだ未来ある若者が死ぬ光景を見たくないならば。
俺が敵を一人でも多く殺せばいいだけではないか。
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ここ、ユニアドに来たのもとある目的があって来た訳だ。
それも早急に達成しなくてはならない。
このユニアドは怖ろしいほどまでに生徒の教育に力を入れている。確かキャッチコピーは『よりよい技術と街の革新を』だったか?
生徒達の何か突出した部分を育て上げ、研究し、データにとってそれを一時ユニアドの情報機関に保存し、その後新たな発見があれば学会やらなんやらで発表して支持を得てさらにユニアドの技術を向上させている。つまりこの街は生徒のためにではなく街のためにやっているのだ。
そこで問題なのはそのデータだ。
いつの世も戦乱渦巻く時代でも平和な時代でも必要なものがある。それがカネだ。
ユニアドは私立ではあるが自国への情報提供で国からカネを貰っている。だが国からの支援だけでは街全体が学園のユニアドの向上はおろか維持も難しくなる。
そのためユニアドは売る相手を外に向けた。
海外にだ。
実質ユニアドの情報はかなり重宝とされていた。なにせ世界最新の技術の情報だ。どの国からもまるで競売に賭けるように値が張ったらしい。
だがこれが自国が黙っていなかった。それもそのはずだ。
なにせ我が国自慢で最新鋭の技術の情報の独占が出来なくなるのだ。しかもその情報を安々と(実際は安くないのだが)売るのだからたまったものではない。
よってユニアドは自国から充分な資産の獲得に成功し、国は情報の独占に成功した訳だが…。
それでもユニアドの技術の情報が欲しい、という国がチラホラと出てきた。それも秘密裏に。
つまり国を通さずユニアドという街に直接取引したということになる。バレれば国の面子丸潰れでは済まない事態になるだろうがそこは割愛する。
そしてそのユニアドの情報が欲しいという国が。
俺の国の敵国なのだ。
そもそも、ユニアドがこれほどまでに技術の向上を図るのには幾つかの説が存在する。
一、他国との差をつけるため。
二、他国に力を見せつけるため。
三、戦争をするため。
そして今現在この三が最も有力なのではないかと噂されている。というのもユニアドから発表されて開発されるもののほとんどが戦場で使うものを前提としたものが多いからだ。
法律上の問題でこの国には基本的に武力を持つことは禁止されている。しかし万が一に備え自衛隊なるものが存在してしまうこの矛盾。 別にそこに関しては責めるつもりは無いが。
そのため軍事技術の底上げをするためにユニアドが設立されたのではないか…と噂されている。あくまで噂だ。
そしてその技術は現にそういった戦争をしている国に売られたこともある。
結果は様々だが、ほとんどがユニアドの情報を買った国が勝利した。
それほどまでに脅威となっているのだ。このユニアドの技術は。
そのため俺が国より下された依頼は一つ。
《ユニアドの情報を奪取せよ》
そのために俺はユニアドに来た。
名前も国籍も年齢もありとあらゆる自分の情報を偽って。
全ては俺の国を、子どもたちを守るために。




