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悪殺し -悪を引き寄せる話-  作者: 皆口 光成
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プロローグ

まさかの後半編。どうかサツキたちの話にお付き合いください。

ユニアドポート。




元は商業都市であったユニアドの唯一と言ってもいいほどの名残のある場所。




ここはかつては産業、漁業、工業と盛んであったが、学園都市となった今では海外からの旅客や車両を運ぶフェリー港が専らである。

それ故ここはユニアド外周部であるというのに人で賑やかである。

主に海外から来る者が多いのでそのため近くにホテルなどの建造物が多いのもその理由の一つと言えよう。




そのホテルの一角。




一つの個室に。




一人の人物がノートパソコンと面を向かっていた。

まだ昼間であるというのに部屋のカーテンは閉め切っており、カタッ、カタッ、とキーボードを叩く音が室内に響くのみである。




画面に表示されているのはユニアド学園の見取り図。

しかしホームページから表示したにしてはいささか立体的すぎると言えよう。




そこに写った画面は学園内案内というよりはまるで建築などで用いる3Dモデリングそのものだ。

その画像をありとあらゆる方面から見ていく。

そしてあるところでピタリと止めた。

それはユニアド学園の地下一階。

学園のホームページではただの長い廊下でしか表示されてはいないが3Dモデリングでは一箇所、本当に僅かとしか言えないぐらいのところにひと一人が入れるようなスペースがあった。




それを目撃した人物はニヤリと口元を吊り上げ、急いでノートパソコンを閉じたと思えばさっさとその部屋を出て行った。

まるで、何かを急ぐように。



ーーーーーー



粛清ノ時ハ来タレリ。

粛清ノ時ハ来タレリ。




ユニアド中心部。




そこのある建物の地下では怪しげな集団が集っていた。

全身を黒いローブで纏い、顔もほとんど見えないくらいに目深にかぶったその集団は、一つの灯の元に集っていた。




粛清ノ時ハ来タレリ。

粛清ノ時ハ来タレリ。




まるで何かの呪文であるかのようにその言葉を繰り返す。

やがて一人の人物がその集団たちの前、壇上に上がると全員の口が閉じられる。




『皆の者、時は来た』




まるで頭に直接響くような声が地下に響く。




『我々は本日この穢れに穢れてしまった街、ユニアドに粛清せんがために集った』




バサアッ、と両手を広げる。




『人は皆平等である!!人の上にも人はおらず、人の下にも人はいない!!』


『我ら人類は平等である!!その価値も優劣も無いのだ!!』


『全ての人は平等である!!個々の尊厳も能力も皆同列でなくてはならない!!』


『生徒一人一人の能力を突出させようなどというユニアドの方針は我ら“イコル教”に反するものである!!』


『故に、我らは裁かなくてはならない!!愚かにも人と人との均衡を壊そうとするユニアドに!!そのことに気づかない民衆共々!!!』


『これより我ら“イコル教”の粛清を開始する!!!』




少しの静寂。




その後地下に聞こえたのはこの声のみ。




粛清ノ時ハ来タレリ。

粛清ノ時ハ来タレリ。



ーーーーーー



ユニアド外周部。




通称廃墟リング。




まるで世紀末かのように廃れた建物たちを利用する者は同様必要無いとユニアドから追い出された者たち、ホームレスたち。

だがここに集まるホームレスたちは明らかに雰囲気が、いや見た目も違っていた。




頭にはヘルメットにマスク。胴部分はまるで軍隊が着るような迷彩柄な服に手榴弾が幾つか。腰にはピストルベルトを身につけカーゴパンツにブーツ。

まんま戦闘服であった。




「これで全員か?」




リーダー格の一人が全員に呼び掛ける。

返事が来ないことを肯定と捉え、自分の腕時計を確認する。

現在時刻は午前四時十二分。




「ではこれより最後の作戦会議を始める。…その前に我々の目的は何か今一度確認しよう」




リーダー格の男が手を後ろに組む。




「我々の目的は!!?」




そして突然の叫び声。




「「「ユニアドへの復讐!!」」」




その叫び声を返すように他の人物も叫び声を上げる。




「我々は何だ!!?」


「「「ユニアドに捨てられた者!!」」」


「何を失った!!?」


「「「家族、友人、職、住む家、ありとあらゆるもの!!」」」


「お前らはどうしたい!!?」


「「「ユニアドに思い知らせてやりたい!!」」」


「何をだ!!?」


「「「我々を捨てたことを!!」」」


「どうやって!!?」


「「「武力行使で!!」」」


「そのためにすることはまずなんだ!!?」




一瞬間。




「「「全ての巨悪であるユニアド学園を堕とすこと!!!」」」


「そうだ。そのことを忘れるんじゃないぞ」




仲間たちの士気を上げることに成功し、少しだけ優越に浸っていると。




「なぁ…ちょっといいか?」




リーダー格に近づく一人の男。




「ん?どうかしたのか?」




仲間たちが心からの咆哮を上げている中、それに参加しない者が耳打ちで話し掛ける。




「前に仲間に引き入れようとした四人組の消息が掴めなくなったんだが…」


「四人組ってあの?」




リーダー格の男が言う。




「あぁ、あいつらなかなか使えそうだからどうにか仲間に引き入れようとしたんだが昨日ユニアドの中心部に行ったっきり消息が途絶えちまってよ」


「別にいいんじゃないか?」


「え?」




あまりの発言にリーダー格の男の方をジッと見た。




「あの四人組、特にリーダーっぽいやつ。あいつ協調性とか絶対無さそうだったからな。しかもホームレスを集めて軍隊を作ろうとしてやがったし」




チラッと仲間たちの方を見る。




「俺らがもう作ったってのに」


「え…?じゃあ」




男が少し躊躇いながらに聞く。




「あぁ、あいつらはいらない。どうせユニアドに行って捕まっちまったかなんかだろうしな」




そう言ってリーダー格の男は再び仲間たちの方へ向き直る。




「それでは作戦会議を始める!」




おぉおおおお!!!と男たちの雄叫びが轟く中。




「あいつら…哀れなものだな…」




と、一人四人組を哀れむ声が一つ混じった。



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