生徒会長が横暴な件について
王立魔法学園生徒会執行部。
それは、国内随一の名門校における各学年成績上位者2名のみで構成された全校生徒憧れの的。
そこに、エマ・ファーレンは2年連続で所属していた。
「――ということで。エマ、君には期待している」
「大変恐縮ですが、会長。なぜ私に任されるのか、私にはさっぱり分かりません」
「それはまあ……とりあえず、庶務だから」
エマはイラッとした。
庶務。そう、庶務。
2年連続でエマが任じられた庶務。
この役職が、非常に厄介な代物であった。
書記でもない。会計でもない。これといって具体的な職務が明示されていない庶務。
普段は影薄い感じで扱われるのに、誰が担当するか分からない仕事が発生したらなぜか急にスポットライトを当てられる庶務。
正直、副会長も似たり寄ったりの役職だと思うのだが、役職的にあちらの方が上なので断じて仲間ではない。
だいたい、とエマは思う。なぜ同学年だというのに、エマは2年連続庶務で、もう1人は会長になったのか。
王太子だからか。王太子だからだろうな。学園内平等を謳っておきながら、所詮は権力か。権力なんて滅びてしまえ。ふんっ。
ひと通り心の中で悪態を吐き、ある程度落ち着いたところで視線を戻す。
エマが悪態を吐いている間もぺらぺらと薄っぺらい建前を垂れ流していた会長は、エマと目が合うと宥めるように微笑んだ。
「何もこれから先ずっと、というわけではない。あくまで今回のお試し期間において、その実証に協力してほしいんだ」
会長によると、近頃、各国の名門校において、主に高位貴族の子息・息女が様々な問題を起こしているらしい。中には、校内に限らず国内までを混乱に陥らせるものもあり、この国のお偉いさん方が我が学園でも問題が起こらないか注視しているとのこと。
まあ確かに、この学園には高位貴族の子供たちが多く通っている。何しろ国内随一の名門校だ。入学試験を突破できるのも、教育を受ける機会を保証された者が多いのは当然だ。
そこで、お偉いさん方は考えた。悩める青少年たちが問題を起こす前に、相談できる機会を作ろうと。
そして、誰が相談を受けるか検討した結果、この生徒会に相談役を務めるようお達しがあったということだ。
正直なところ、そんな面倒で重そうな役目を学生に与えるなと心から思うけれど、ただの庶務にお達しを跳ね返せる力などない。
――だが、会長に反抗する権利くらいはあるはずだ。
「会長が聞いたらいいんじゃないですか?」
「もちろん、俺が聞くこともあるだろう。だが、……ほら、俺が目の前にいたら皆遠慮してしまうだろう?」
「私には遠慮しなくてよいと?」
腹が立つ。実際問題、否定できない現実がさらに腹立たしい。
会長は顔が良い。身分もこの学園で一番高い。頭も良いし、猫被りが上手なので性格も良いと皆錯覚している。人呼んで完璧超人の会長が目の前にいたら、それは緊張するだろうし、悩みも話しにくいことだろう。
それに対して、エマは子爵家の娘だ。貴族の子女が多く通うこの学園では、その他大勢に埋もれてしまう身分である。
容姿もまあまあのはずだが、会長をはじめとした無駄に顔の良い生徒会におけるオアシス的な存在であるというのが、周囲の見解であった。
「大体、私は他人の相談に対して立派な答えなんて返せませんよ。それに、たとえ相談を受けても問題の発生を防止できるかは保証できませんし、責任も取れません」
「大丈夫だ。そのあたりは対策を取るから」
「……具体的にその対策って何ですか?」
「これから考える」
つまり、現時点では何も考えていないってことですよね?
エマの不信感たっぷりの視線を、会長は綺麗に受け流した。




