異色なふたり
偶然出会ったアルトと名乗るホストは、陶器のような白い肌に銀髪が映え、ハイブランドのスーツを気負いなく着こなしていた。それだけでも十分に目立つ存在なのに、目鼻立ちも整っていて、周囲の視線を独占するだけの華があった。
そんな身なりや立ち振る舞いから、彼がかなり稼いでいる売れっ子ホストだということは、一目でわかった。
今振り返ってみても、初対面のアルトはとても自然体だった。こちらを警戒する素振りはなく、受け答えにも棘がない。
ただ、すでに完成された形でそこに立っていて、腹の底は最初から伏せられていた。けれど、それを悟らせないように振る舞う隙のなさもあった。
それは、あたしがホストに抱いていたイメージ――単なる中身のない軽さとは明らかに違っていた。
きれいに作られた殻だけを、意識的に見せている。そんな印象を受けた。
まるで、誰にも触れてほしくない何かを、必死に護っているようだった。
そんな、一度だけ成り行きで荷物を運ぶのを手伝ってもらっただけの男が、ある日、野良猫を連れてトランクルームにやってきた。
生まれたてみたいに幼い顔をしたその少女は、すべてを悟りきったようでいて、実は何も知らなさそうな、不思議な目をしていた。
口や耳にいくつもピアスをつけ、ピンク色の髪をした、いわゆる地雷系な少女を、彼が連れてきた理由は、あたしにはまったく見当がつかなかった。
ただ、とてつもなく訳ありで、面倒なことが起こる予感だけはあった。
案の定、アルトはその家出少女・瀬奈の「衣食住」、ひいては仕事の面倒まであたしに見ろと、ぶっ飛んだことを言い出した。
あたしは昔から、「自分が一番」の人間だ。赤の他人の面倒を見るほど、世話焼きでもお人好しでもない。
それでも結局、その少女を預かると決めたことは、自分でも予想外だった。
トランクルームで作業を少し手伝ってもらった時、二人の人となりが見えてきたことも大きかった。
アルトは、ほんの少しの説明ですべてを理解した。こちらが指示を出す前に、次にやるべきことを察して動く。箱の向き、積み方、手を出す順番。どれも最短で、迷いがない。
こちらの話に手は休めず、必要なところだけを拾って、相手が求めていない相槌は打たない。
一方で瀬奈の動きはまるで違った。
ひとつひとつ、しっかり確認してから手を動かしていた。ラベルを貼る位置をきちんと揃え、少しでも歪んだら貼り直す。
決して効率は良くない。袋に詰める時も優しく触れ、箱を置く時はそっと手を離した。あたしが最初に言った、扱いは丁重に、という言葉を、素直に受け止めているのが伝わってきた。
二人の動きは対照的だったが、作業は滞らなかった。むしろ、妙に噛み合っていた。
瀬奈が棚にあった古い段ボールの中身を取り出そうとした時、箱の一部がほんの少しだけ裂けていた。
中には梱包に使う材料が入っていて、中身が落ちるほどではないが、少し不安定になっていた。
瀬奈はその箱の代わりに、近くに積んであった空の段ボールを引き寄せ、中身を移し替える。
箱が少し裂けていても、中の梱包材料の量は少なく、今すぐやらなくても何の支障もない。
古い箱の中を空にすると、綺麗にたたみ、端に立てかける。
誰に頼まれたわけでもなく、作業の流れとして必要でもない。
ただ、気づいたからやった、という動きだった。
アルトはそれを見ていない。
正確には、見てはいるが、関与しない。自分の役割を終えるまで、余計なところに触れない。やるべきことと、やらなくていいことの境界が、最初から引かれている。
瀬奈の動きには、その線がない。必要かどうか、誰にどう見られるか――なんて初めから考えていない。
どちらが正しいとも思わない。
ただ、生き方の違いとして、あまりにも分かりやすかった。
最近あたしのオンラインショップはなかなか忙しくなってきていて、人手が足りないというのは前から思っていたことだった。何より――
あたしは、この異色でヘンテコなふたりが、なんとなく気に入ってしまったのだ。




