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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
77/106

77 跳龍2

「ぐわぁぁあ」

ウェンツが跳龍を倒したのと同じぐらいのタイミングで叫び声を上げたのはギルだった。

割れた盾を爪でかき分けながら左肩に鋭い牙で跳龍が噛みついていた。

ニースがバックラーで殴りつけるが、簡単には離さない。


フェルは至近距離で弓を射るが、何本刺しても跳流血はするが動きが鈍らない。

皮膚が厚いのか、はたまた痛みに鈍感なのか・・・。


「くそぅ」

フェルは弓を素早く”転送”すると剣を抜いて構え、跳龍の眼を目掛けて突き刺す。


「ギャオーン」

右眼をつぶされた跳龍は首を大きく振りかぶってギルを吹き飛ばすと、距離をとる。

フェルの剣は右目にささったままだ。

そして、少ししゃがみ込むように溜をつくるとフェルにとびかかろうとする。


「ギュイィィィ・・・」

クリスのクロスボウの矢が跳龍を捉える。

至近距離からだけあって、流石にこれは効いているはずだが、身をよじってうまく急所を外したようだ。

眼が烈火のごとく怒っているのが分かる。


二頭を倒し、あと1頭もかなり追い詰めてきているのだが、ちょっとばかりまずいことになっている。

ギルはかなりの傷を負い、武器の剣を先ほどの一撃で吹き飛ばされているし、ウェンツの剣は1頭目に刺さったままで、短刀しかもっていない。ニースの槍は2頭目に刺さっており、おそらくもう使い物にならない。そしてフェルもいま剣を相手の眼にさしたままとなっており、無手だ。

フェルの必殺の岩落としも既に使ってしまっていて、あれほどの岩はもうないし、弓の効果があまりないのは実証済みだ。

クリスもクロスボウを放った直後で、すぐには次の一手を用意はできない。


まずい・・・。

いくら祝福<ブレス>があったところで、素手でわたりあえる相手ではない。

フェルの背中に冷たい汗が流れるのがわかる。

フェルのまわりの時間だけが止まったかのように遅くながれていくかのような錯覚に襲われた。

緊張感が走る。


刹那、フェルは、自分のズボンのすそを引っ張る感覚を感じた。

フェルにはそこに茶色い服きた大きな顔に髭を生やしたをした小人がニカッと笑っているのが見える。

いや、実際に視線を向ける時間はないのだから、見えるというのは正しくないのかもしれない。

しかし、フェルには確かに”見えた”のである。


「フェル!」

ティルクが悲鳴のように叫ぶ。跳龍がフェルに向かって飛び掛かってくる。


「グノーム!!」

フェルは跳龍から身を守るように両手を顔の前でクロスさせながら叫ぶ。

フェル自身も自分がなぜこのタイミングでそう叫んだのかはよくわかっていない。

しかし、それは確実にフェルの叫びに応えた。


跳龍とフェルの間の岩が突然隆起して壁ができる。

さほど厚い壁ではないため跳龍があたると砕けてしまったが、それでも突然現れた壁に全力で自らぶつかったことにより、跳龍はふらつく。

その隙に、フェルはクリスのククリナイフを拾い上げ、ニースはギルの剣をもって切りかかる。


「ギャァ、ギャギャギャァ」

跳龍は首や爪を大きく振って抵抗するが、壁にあたったダメージが抜けきれていないのか、うまく当たらない。


「はぁはぁ・・・急いで!祝福<ブレス>がもう持たないわ・・・・」

カティアが肩で息をしながら、叫ぶ。おそらく魔法力が持たないのだろう。

現在でもギリギリなのだから、祝福<ブレス>がない状態では、かなり分が悪くなる。

しかも、副作用が出れば下手をすれば動けなくなる可能性まである。


「急げ!」

ウェンツも短刀で切りつけるが、流石にうまくダメージを与えることが出来ない。

跳龍も、もはや動きに切れはないが堅い鱗と羽根にさえぎられて、致命傷が与えられない。

クリスも、乱戦ではクロスボウを放つのは危険すぎて放てない。


「もう、持たないわ!」

カティアが叫ぶとほぼ同時に、跳龍が倒れる。

とどめを刺したのは、満身創痍のギルだった・・・・。

ウェンツの使っていた剣で心臓を貫いたのだ。




・・・・





「悪いが・・・しばらく動けん。」

「俺もだな・・・・。」

ウェンツとギルが大の字の倒れこむ。

ギルは、大量の血を出血しているのもあるが、動けない理由は祝福<ブレス>の副作用だ。

フェルやニースも筋肉痛だが、動けなくなるほどではないし、ニースは魔法力切れでの疲れで座り込んでしまっているが、動けないほどではない。クリスも同様だ。


「ギルさん。ちょっと傷口を見せてください。」

そういうと、フェルは木筒を何本か取り出す。

「少し、沁みますが・・・」

そういうと、黒い粉末上のものを傷口に刷り込み、別の粉を水に溶いてから刷り込む。


「これで、止血と消毒は大丈夫だと思います。それで、これを・・・・」

最後に竹筒から液体をかけると、包帯で巻く。

熱を持っていたギルの肩からすっと痛みが消える。

「おい・・今のは・・・」

「バーンにもらった薬ですよ。まぁ、もうないのでまた買いに行かないといけないですが。」

「まじか・・・。これは・・・すげぇな。あの痛みが嘘のようだ。」


「あとは、この薬ですね。すぐには効きませんが、飲んでおくと明日が楽です。」

そういうと、栄養薬を二人にに差し出す。

やや苦いが、ギルの治療を見ていた二人はもちろん文句は言わない。


「ところで、フェル・・・。跳龍だが、どれぐらいもてる?」

「どれぐらい・・・というと?」

「いや・・・正直珍しいというか俺達にも初の獲物でな・・・。何が売れるかよくわからん。

爪などは間違いないと思うんだが・・・」

「ああ、それなら3匹丸ごといけますよ・・・。」

「な・・・3匹ともか!いや・・・それは助かるんだが・・・。いや、何も言うまい。」


「あなたたち・・・聴いていた以上ね・・・」

カティアがゆっくり立ち上がりながら、クリスにつぶやいた。













読んでいただきありがとうございます!

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