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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
76/106

76 跳龍1

今回、跳龍という魔物が出てきますが、描写力不足でイメージがつきにくいかと思いますので補足します。この魔物のイメージは、小型肉食恐竜になります。

初代ジェラシックパークにでてきたヴェロキラプトルのようなイメージに近いです。


「本当に、洞窟というより、渓谷って言う感じね。」

「ああ、天井が抜けている場所が多いからな。

時々、日の光が入るので、動きやすい。そして、それは相手も一緒だな・・・。」


洞窟はしばらく暗がりが続いたが、すぐに天井が開けた広場のような場所に出た。

そこからまた何箇所かの横穴が伸びているようだ。


「みろ・・・ありゃ・・・鹿だ。そこまで古くないな。」

広場の中央よりやや外れた位置に、動物の死体が横たわっている。

ほとんどが骨だが、ところどころ腐食した肉片がまだついており、ハエがたかっている。

乾いてはいるが、地面もよく見れば黒ずんでいる。

「散乱状況からすると、狼とか熊とかそういう獣系だな・・・」

人型の魔物が鹿などを食した場合は、肉はほとんど残らないし、骨の散乱の仕方もまた違う。

おそらくは、手が器用でない肉食獣の可能性が高い。

「狼か・・・熊か・・・。いずれにしろ、何かいるな。」

そういうとウェンツとギルは剣と小型の盾を構える。

盾は、亀の甲羅を加工して作られており、軽さの割に強度がある。

叩きつける攻撃にはやや脆いが、剣や矢などを防ぐには丁度よいし、万一壊れてもそこまで修理や買換え費用が高くないため人気があるものだ。最も亀の種類によって効果なものもあるが。

フェルやクリスは弓の邪魔になるということもあって持っていなかったが、前衛職のハンターには使い勝手がよい。


「予備で盾もちょっと持っておいたほうがいいかもな・・・。」

フェルがつぶやくと、クリスも頷く。

フェルの“転送”があれば、ある程度の重量のある盾も持ち運べる。

普段使わなくとも、お金に余裕があったり何かの機会で手に入れることがあれば持っておくのも悪くない。



「おそらく、前の一番大きな穴だ。あそこの前だけ草が少ない。」

ウェンツとギルがやや散会しながら前に進み出ていく。

やや後に後退した中ほどに、ニースで三角形のようなフォーメーションになる。

ニースの装備は、槍とバックラーと呼ばれる金属と木を組み合わせた小さな盾をつけている。

そして、その後にフェル達とカティアがならんでいる。すでにフェル達は矢をつがえている。



「キィィィイ・・・」

甲高い叫び声がすると、奥の洞窟から二頭の2足歩行の巨大な鳥のような魔物が駆け出してきた。

それと同時に、ドームの裂け目の天井からギルに別の一頭が襲い掛かる。


「跳龍?!!」

ギルが盾で噛み付こうとする魔物の頭を押し戻しているところに、ウェンツがすばやく斬撃をいれる。

「キュオーン」

魔物は、悲鳴をあげてギルから離れるが、鱗とも羽根ともとれる皮膚に阻まれて刃はほとんど通っていない。


跳龍と呼ばれたのは、体長3~4メートル、体高が1.5mほどもある。

体系は、全体的に細長く、足も縦に細長いことから、巨大な鳥のように見えるが、顔は蜥蜴や鰐に近いかもしれない。

さすがに龍というのは名前負けしてしまっているが、その大きな鋭い鉤爪は15センチメートルにも及ぶうえ、頭の長さは40cmはあり、鰐のように鋭い牙と口をもっており、凶暴な捕食者であることには変わりない。鋭い鉤爪は、戦闘の際、獲物の肉に深く食い込む強力な武器となり、その牙が喉笛に噛み付けば、普通の生き物では抗することは難しいだろう。

森や荒野の食物連鎖の頂点に近いところにいる種族で、ゴブリンやオークも彼らには格好の餌でしかない。

なにより、頭がよく集団で狩をするといわれている。

走りも早く、人間の速度で振りきることは困難だ。


「離れるな!壁を背にして、密集するぞ。」

「おいおい・・・。こんなところにいるべき奴じゃないだろう。」

「カティア!祝福<ブレス>をお願い。クリスとフィル君はよく引きつけてから撃って。

相手は、あの体格だけれどかなり素早いわ」



6人は、盾を持つ3人を前衛にしてカティアを中心に半円を描くように固まり、壁を後にして密集体系をとる。そして、ゆっくりと、洞窟の入り口の方へ徐々に後退しようとする。

広い場所では、かえって不利になる。こうすることで、同時に襲われにくくしつつ退路を確保するのが目的だが、いち早く気がついた一頭が、洞窟の入り口方面に回りこんでしまった。



「くるぞ!」

先ほど、ギルに襲い掛かってきた跳龍が、大きくジャンプをするようにして突進してくる。

この跳龍の名前は、この強力なジャンプ力によるものだ。

亀甲の盾で防ぐが、鋭い爪の一本はその甲羅を突き破りウェンツを押し倒そうとする。


「くらえ!」

クリスのクロスボウで撃たれた矢が跳龍の脇腹にささるが、ささりが甘い。

そこをすかさず、ギルが蹴りこむ。


「ギャオ―ン」

たまらず跳龍が後退するが、その際にウェンツの盾も一緒に持っていってしまう。

そして、後退した跳龍の直ぐ後を、別の一頭が鋭い牙をねじ込んできてウェンツに襲いかかろうとする。

「グギャーン」

その口の中にすかさずフェルが骨矢を打ち込む。ウェンツもなんとか一瞬のすきを逃さず身体をひねって牙をかわし、剣を顔に突き刺した。

剣は、深々と顔に突き刺さるが、致命傷にはいたらなかったようだ。

そればかりか、逆に首を大きく振りながら大暴れをする。


「くそ!」

ウェンツは剣も手放し、転がるように逃げる。


「少し離れて。」

フェルが叫ぶと同時に、暴れる跳龍の頭上1mぐらいのところに巨大な岩が現れる。


ドゴンォーン。

轟音とともに、跳龍の首に岩が落ち、二つに割れた。

流石に、これには耐えられなかったのか、跳龍はしばらく痙攣をすると動かなくなった。



何が起こったか理解できるとしたら、フェル以外にはクリスだけなのだが、クリスはそれどころではなかった。先ほど矢をねじ込んだ跳龍がクリス目掛けて襲い掛かってきたのだ。

ニースがバックラーを両手で突きつけながら間に入るが、かなりの衝撃だ。

おそらく祝福<ブレス>の魔法が聞いていなければ、堪えきれないに違いない。


みると、出口をふさいでいたもう1頭もこちらに駆けてくる。その足は、かなり速い。

よほど上手そうに見えたか、クロウボウを脅威と見たかはわからないが、こちらもクリスを狙っている。

ギルが移動して盾で防ぐが、盾が半分割れてしまい押し戻せていない。

「カティア。もう少し出力を上げて。堪えきれない。」

ニースが悲鳴に近い感じで叫ぶ。



「灯火よ!暗闇を照らせ。」

クリスが、ククリナイフを取り出すと、カティアの目の前の跳龍の目の前で力いっぱい叫ぶ。

一気に何か力が流れ出る感覚とともに、クリスのククリナイフが異様なほど発光する。

跳龍は、その光に貯まらず首をもたげ、仰け反った。


「今だ。」

ウェンツがニーズの落とした槍を短めに持つと、跳龍の下から心臓があるあたりを突き上げる。

上や横には多い鱗だが、腹の下の辺りはそうではない。

鋭い爪が肩を引っかき、血が飛び散るが、ウェンツは槍を地面に突き立てるようにさらに押し込む。


「ギエェェー」

ますます暴れようとするが、暴れれば暴れるほど槍が食い込んでいき、血が回りに振りまかれていった。

「しぶてぇやろうだ・・・。」

ウェンツは、もはや全身血まみれとなっている。腰の後につけた予備の武器である短剣を槍の付け根あたりから刺し、全力で一気に引き裂く。

普通では、困難だが腕力の増加した今だからこそ出来る芸当である。

跳龍は自分の内臓がこぼれるのを見ると、やがてあきらめたかのように動かなくなった。


(あと1頭いますが、文字数もいいあたりなので、また明日にでも。)


読んでいただきありがとうございます!

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