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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
69/106

69 それぞれの道1

エルアの街 約束の双子亭

その夜は、ギルドマスターであるオーギュストによって貸切となっていた。

ゼペット、フェル達、”暁のカルテット”、そしてなぜかエドガーとリューク、ネールやフェスカなどのメンバーによる祝勝会が開かれていた。カティアも病から回復したようで参加をしている。

まだ皮膚は痛々しい泡腫の跡があるが、これもしばらくすれば消えるといわれて喜んでいた。

妙齢の女性なのだから、当然といえば当然である。


この祝勝会は、オーギュストによるおごりである。

どうやら、ギルモアから、こちらのギルドにも謝辞があったらしい。

オーギュストも大変機嫌が良かった。


「ところで、バーンよ。お前さんゼペットさんところにスカウトされているようだが、どうするか決めたのか?」

エドガーが、隙を見てバーンに耳打ちする。

バーンは、困ったような笑いを見せながら話す。

「実は、すごく迷っています。この話は大変ありがたい話ですし、僕の夢でもあるんで。

だけど、まだ短いですが、フェルやクリスと一緒にいろいろとやっているのも、すごく楽しかった。

一緒に店を構えたいというのも間違いのないことなんです。

ゼペットさんともよく話しましたが、やはり弟子入りをしながらパーティーを継続するのは難しい。

もちろん、素材の確保などはいるんですが、やはり一緒に活動するのは厳しくなる・・・」

「で、フェル達には相談したのか?」

「いや・・・。なかなか怖くって。」

「そうか。だが、一度ちゃんと話をした方が良いぞ。

結局は、自分で決めることだが、人生の先輩として言えば、自分が何をしたいのかもはっきりといった方がいい。どちらのほうが後悔しないかをよく考えることだな。

多分、フェルとクリスがどう考えるかが気になっているんだろうが、それを抜きに一度考えてみろ。」

そういうと、エドガーは席を立ってフェル達のところへ行った。

バーンはその後も、皆と色々話をしたが、エドガーに言われたことが常に頭の中にあり、上の空であった。



「フェル・・・。お前、バーンがゼペットさんのところに弟子にいったらどうする?」

エドガーは、にこやかにふるまいながらも、時々浮かない顔をするフェルの横に来ると尋ねる。

こちらもちょっと困った顔をしながら、答えてきた。


「いや・・・、バーンがゼペットさんの所に弟子入りできるなら、すごく喜ばしいことだと思うんです。

バーンの夢も知ってますし、そのための努力や才能は今回の件でも良くわかっているつもりです。

なにより、ギルドも僕たちも、バーンの作る薬が良くなって手に入るのならそれに越したことはないですし。でも、なんでしょう・・・。ちょっと寂しいというか・・・。」


「ああ、そうだな。バーンも同じように悩んでたよ。

だが、フェルの言う通り、バーンが魔法薬とかを作れるようになれば、喜ぶやつは多い。

それに、気づいていると思うが、バーンは戦闘には不向きだ。悪いが運動神経もそうだし考え方が甘いところがあるからな。今のランクならともかく、遅かれ早かれ第一線で活躍するより薬師として活躍する道を選ぶことになる。」


「そうですよね・・・。」

「まぁ、お前らが決めることだが、行くところがないなら、俺たちとパーティーを組んでもいい。

護衛と討伐がメインになるが、このまま二人よりはいいだろう。」

そんな話をしていると、酒に酔ったウェンツが割り込んでくる。


「いやいや、フェル。俺達と組まないか?俺たちの方が歳も近いし、なによりクリスがやりやすいぞ。なんといっても、うちには女性が二人もいるからな。」

「ほぉ・・・。おっさん二人で悪かったな。」

エドガーとウェンツが冗談をいいながら、酒を酌み交わす。

「まぁ、パーティの件はどっちでもいいが、しっかりと話をするこった。」

そういいながら、エドガーは”暁のカルテット”の所にいき、ニースとカティアと楽しそうに話し出すのであった。



「ねぇ、フェスカさん。ちょっと見て」

そういって、クリスは指をパチンと鳴らしながら簡単な呪文を唱える

『水よ現れよ』

そういうと、指先からグラスに水が注がれる。

コモン魔法の一つ、”水滴”である。

グラス1杯分ほどしか用意はできないが、無から綺麗な水を精製する呪文である。

コモン魔法は、初歩の魔法だが、一般人でそれが発動できる人は少ない。

「あれ、クリスって魔法使えないんじゃなかったっけ?」

ギルドのランクは、魔法が使えればFランクからスタートする。

クリスはGランクだし、この間話した時も魔法が使いたいといっていたはずだ。

「へっへ〜。実はギルモアで、バーンのお兄さんが話していた話を聞いて練習したんですよ。ほら。」

そういうと、次は発火を見せる。

「あなた・・・、才能があるかもしれないわね。

ぜひ一度訓練受けにいらっしゃい。あ、お金がたまったらね。」



『おまたせ〜。岩蜥蜴の香草焼きと角うさぎの煮込みできたぞ。』

いつものように、店主のコーリーとコックのランディの双子の兄弟もやってきて、祝勝会は続くのだが、フェルとバーンはやはり今後の事が頭から離れない。

無邪気なクリスが少しうらやましい二人だった。





・・・・・






翌日の昼過ぎ・・・

約束の双子亭に、3人は集まっていた。重苦しい雰囲気が漂う。

最初に口を開いたのは、この空気に耐えかねたクリスだった。


「で、バーン。話ってゼペットさんの弟子入りの件よね。」

バーンは頷く。眼には、何か決意をしたような強い意志が宿っていた。



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