57 買取報告
「お、、、おい。お前ら大丈夫か?!」
そう声をかけられたのは、街道をしばらく歩いていた時だった。
通りかかった隊商から声をかけてきたのは、以前訓練につきあってくれたギルドの顔なじみ二人である。
エルアの街への護衛依頼中なのだが、街道を歩く血まみれのフェル達を見つけて声をかけてきた。
血まみれという事は、近くに盗賊や魔物が潜んでいる可能性もある。
隊商にとっても、無関係な状況ではないため、緊張感が走る。
「ああ、大丈夫です。ちょっとゴルダの丘でリザードマンと戦闘になりまして・・・・」
「リザードマンか・・・。よく無事だったな。
ゴルダの丘か・・・最近ちょっとそういう話を聞くな。そうすると、近くで襲われたわけではないな?」
「ええ、丘でも遭遇したのは、ほぼ頂上に近い位置ですね。」
それを聞いて隊商には安堵の表情が浮かぶ。
隊商の責任者らしき人は、護衛の人たちとしばらく話をすると、馬車への乗車を申し出てくれる。
どうやら、フェル達の身元を確認したようだ。
街までそこまで遠いわけではないが、それでも血まみれの若者を放置して先にいくのは、気が引けたのだろう。盗賊などの一味でないことを確認したあとは、クリスは御者台に、フェルとバーンは荷台に乗ることになった。
クリスが御者台にのることになったのは、単に返り血をほとんど浴びていないからであり、フェル達がかなり汚れ、血の匂いもひどかったからである。
「すみません。正直助かりました。」
「いや、困ったときはお互い様だよ。我々もハンターの皆さんに助けられることもあるしな。」
・・・・
街に戻ると、バーンは隊商の方に行きに払ったのと同じ乗車賃を払う。
大した金額ではないため、隊商たちは最初は、不要といっていたが、バーンが荷台の清掃代というと受け取ってくれた。実際には、血は乾いていたので、清掃などはしないのだろうが、商売人には借りをあまりつくりたくなかったのだ。
”貸しはいくらつくってもいいが、借りはなるべく作るな”というのは、エドガーの教えの一つだった。
馬車にのったため、日暮れ前にギルドに戻ってくることが出来た。
今回は、収穫が多いため、ギルドには搬入口の方から入る。
中は通常の買取窓口とつながっているのだが、そのまま解体処理ができるところへ運べるので獲物が大きい場合はこちらから渡すように前回言われていたためだった。
「おいおい。随分な格好だな・・・。大丈夫なのか?」
全身血まみれのフェル達を見てネールが問う。
買取はネール以外の職員もいるが、フェル達には何時もネールが応対してくれていた。
かなりの贔屓だが、ネールの面倒見の良さをよく知っている古参のギルドメンバーもそれを見ているので、特に問題はなかった。
「はい。エリー湖とゴルダの丘でリザードマンに会いまして・・・・」
「おいおい・・・。よく無事だったな。」
「ええ・・。エリー湖の奴は全力で逃げたんでよかったんですが、ゴルダの丘では逃げようがなくて・・・。」
「まさか・・・討伐できたのか?」
「なんとか・・・。」
それを聞いて、ネールはため息をつく。
「お前たちは、本当に運がいいのか悪いのか・・・。
まぁ、いずれにしても無事でよかった。で、買取は?」
そういわれて、フェルが次々と獲物を出す。
『なっ・・・・』
流石のネールも声が出なかった。
フェルが出してきたのは、岩蜥蜴の尻尾が3本に、ガーアリゲーターが2体、さらにリザードマンの死体が3体と鉄の槍が2本である。
収納持ちがいるにしても、普通のハンターが持ち込む量ではない。
しかも、ガーアリゲーターの一頭はかなりの大物だ。
そして、問題のリザードマンは3体いる。
リザードマンは人数が同じであれば、Fランクのパーティーでも全滅しかねない。
それを多少のケガはしていても、倒せているのだから大したものである。
「運が良かったな・・・」
他の人が言えば、失礼極まりないが、ネールが言えばまた別の意味がある。
ただ、彼らの努力はネールもよく知っているが、同時に腕も知っている。
そして、様々な経験から、リザードマンの危険性もしっかりと把握しているだろう。
その彼が言うのだから、間違いがない。
3人は、黙って頷いた。
「まぁ、運も実力のうちっていうからな。運が良かったとわかってるならそれはそれでいい。」
そういうと、買取額を計算をしていく。
「ちょっと時間がかかるからな。中で待ってろ。
と、ちょっと待て。おまえら・・・この槍は1本は持っといたほうがいいな。
特にバーン。正直お前は剣よりこっちの方がいい。敵と距離を取れるからな。」
そういって、2本を見比べてよさそうな一本をバーンに返した。
・・・・
「うん。応急処置の仕方が素晴らしいわね。これならすぐに治るわよ」
フェスカがバーンの首に回復魔法をかける。
すぐによく見なければ差がない程度まで傷口が消えていく。
「まぁ、知ってるかもしれないけど回復魔法は治療を促進するもので、万能じゃないから気をつけて。
しばらくは傷口が開きやすくなってるし、場合によっては熱を持ったりするから。
しばらく安静にすることをお勧めするわ」
回復魔法の代金は、評価ポイントで清算が出来る。
今回の値段は10P。高くもないが、安くもない。
やはり、もっと効率的に自前で魔法薬が調合できれば・・・とバーンは考えていた。
「待たせたな・・・。いつものように評価ポイントで渡しておくが・・・。無駄遣いすんなよ。」
そういって、ハンターカードを3人に返却する。
クリスの評価ポイントは、一気に320Pも増えていた。
思ったより、良い買取値である。しかし、流石に次もエリー湖に行く気はしなかった。
「まとまった報酬も入ったし、バーンの療養もある。明日は休養にしないか?」
その提案に反対する者はいなかった。
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