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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
51/106

51 帰路

ゴブリンたちを埋めて、村にもどると時間はちょうど夕方近くになっていた。


「よかったら、公衆浴場がありますから、どうですか?」

そういわれて、フェル達は喜ぶが、どうも風呂は男性用しかないらしく、クリスがふくれっ面になる。

炭鉱夫の村なので、汗だくになった男たち用しかないのだというから、それはしょうがないのだが。





「傷はどうだ。」

そういわれて腕を見ると、すでに傷跡はうっすらとしか見えなくなっていた。

「回復魔法いらずだな・・・。」

「いや・・・、今回はたまたまです。

やはり、魔法の訓練も受けないといけないですね・・・・。」

「そうすると、ここだとフェスカに教わることになるなぁ・・・・。

ただ、魔法ってのは系統によってかなり教え方も扱い方も違うからなぁ・・・。

本当は、王都の魔導学院か、アルキアの賢者の学院で教わるのがいいんだが・・・」


王都までは、馬車で1か月はかかるし、アルキアも同じぐらいかかる。

しかも、学費は馬鹿高く、普通の庶民が入れる場所ではない。

そのため、大体は魔法はその卒業生である者から教わることが多いのだが、教える者によってクセや得意不得意がはっきり出る。

フェスカも魔導学院の卒業生で、治癒魔法を得意とするが、攻撃魔法は”たしなむ程度”。付与魔法についてはほとんど”素人”であった。


「魔法薬<ポーション>ってのは、確か付与系の魔法だよな?」

「ええ、大きな系統で行けばそうですね。回復魔法の要素もありますが。」

「すると、フェスカじゃぁ、うまく教えられんかもなぁ。」

湯舟につかりながら、バーンとエドガーが肩を並べて、魔法訓練の方法を話をしていた。


エルアの街では魔法薬<ポーション>は出回っていない。

もし、バーンが創れるようになれば、それだけで自分達も含めたハンターの生存率があがる可能性がある。ギルドまで戻ってこれれば、治療班の回復魔法の恩恵に与れるが、問題は戻ってこれない場合なのだ。

当然、バーンも大儲けできるだろうし、これはWIN-WINの関係と言って良い。

しかし、これといった妙案も浮かばず、とりあえず帰ったらフェスカに相談をすることになった。



・・・・





一方、その頃宿屋では、クリスが湯の入った木桶にタオルを浸しながら、身体を洗っていた。

「ふぅ・・・。気持ちいい。」

湯舟にはつかれなかったが、それでも汗と返り血を温かい湯でふき取ると、疲れが取れる気がした。

「しかし、バーンといい、フェルといい・・・・」

そうつぶやくと次の言葉が出てこない。


二人とはうまくやっている。

いや、会ってわずか2週間もたたないことを考えれば、うまくやれ過ぎているといってもいい。

バーンなどはかなり年上にもかかわらず、タメ口で談笑が出来る仲である。

しかも、昨日・今日は同じ部屋で寝泊まりしているのだ。

そう考えると、ちょっと複雑な気持ちにもなるが、良いパーティだと自分でも思う。


クリスは、ちょっと焦っていた。

バーンは不思議な薬を調合し、フェルは貴重な収納魔法を使う。

しかも、単なる荷物持ちではない。

今回は、少し不覚を取ったが、岩蜥蜴に使った攻撃方法がいつでも使えるなら・・・。

あの穴掘りの技をトラップに使えたら・・・。

上級パーティーでも通じるとてつもない戦力なのではないだろうか。


それに比べ、自分は何もない。

魔法も使えなければ、剣技もやっと様になってきたといわれる程度である。

新しい武器のクロスボウも、まだまだ準備に時間がかかるし、混戦や狭い洞窟では不向きであることが分かった。何か・・・何か力をつけなければ・・・・。

そう考えながら、ベットに転がって天井を見つめる。

やがて、そこからは静かな寝息が聞こえてきた。




・・・・



「ようし、出発するぞ」

炭鉱の村の朝は早い。


昨日は、風呂の後、依頼主への報告と追加報酬をもらい、その報酬分を宿屋で使い切った。

一緒に検分にいった村人や一緒に来た商隊の人も含めて、”ご馳走”をしたのだ。


「追加料金は請求しないといかんが、それをどこで使うかは自由だからな。

金ってのは、あまり貯めとくと腐臭を放つんだ。貯蓄も必要だが、余裕があるときは使うのも大事なんだぜ。」

そういって、エドガーは皆に酒をふるまう。

流石に、階下でどんちゃん騒ぎが起きては、寝ていられず、クリスも不機嫌そうにしながらも宴会に参加をした。


そのため、商隊の人も含めて、皆の顔はやや疲れが出ているような気がした。



商隊は、帰りは様々な鉱石を積んでエリアの街を目指す。

主には鉄鉱石だが、銅や金・銀も含まれていることが多いらしい。

これを街で精製して販売するのだ。

そのため、馬車は一杯で、行きとは違って動きも遅いし、フェル達は歩かなければならなかった。


「フェル・・・これ、収納して私たち馬車に乗せてもらえないかなぁ・・」

クリスが、そうぼやいたがエドガーが叱責する。


「クリス。こんなことで根を上げるんじゃない。

それに商隊には、あまり収納魔法は見せない方がいい。いいか。商人は信頼してもいいが信用するな。」


言われた意味を完全に理解は出来なかったが、なんとなくニュアンスはわかった。

人は弱い者だ。例え昨日まで信用できる相手であろうと、今日は裏切られるかもしれない。

信頼第一と頭でわかっていても、目先の利益を見せられると誰しも誘惑されやすい。特に、商売人の場合、その傾向はどうしても強くなってしまう。

フェルがいれば、このような荷馬車を引いて苦労せずとも交易が出来てしまう。

そして、商人達はフェルよりも経験豊かで、そしてしたたかなのだ。


クリスは、軽々しく口にしてしまったことを大変悔いていた。




いつも応援ありがとうございます!

面白いと思って頂けましたら、下のブクマ、評価など、よろしくお願いします!


また、恥作ですが、ダンジョンブレーカーズの方もよろしければ見てやってください。

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