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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
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47 ニムロ廃坑

ニムロは、エルアから半日以上はなれた小さな炭鉱村である。

主に鉱石の採掘などを中心に生計を立てており、村の人口構成は男性が圧倒的に多い。

近くには、複数の炭鉱と、廃坑が点在している。


今回は、その一つの廃坑にゴブリンが住み着いた可能性があるという物であった。

炭鉱夫は屈強だが、戦闘訓練を積んでいるわけではない。

無理をすれば自分たちでも討伐できるかもしれないが、致命傷を負う可能性もある。

身体が資本の炭鉱夫にとって、それは避けなければならない。

何より日中に村にいるのは、女子供と老人だけなので、襲われてはひとたまりもない。

そういうわけで、こういう場合は、ハンターに依頼をするのが通例になっている。


「明日は、ニムロで依頼主にあって最新の情報を確認する。

1晩泊まって、翌朝攻略をしていく。まぁ大丈夫だと思うが、村の場合、最悪夜は野営になるからな。」

野営には通常は大きめの毛布か簡易型の寝袋を使用する。

フェル達はそういう装備を持っていないため、買っておかなければならなかった。


「寝袋型は、快適だが少し荷が重くなってしまう。この季節なら、外套を毛布替わりにしても大丈夫だ。

とにかく、地面に直接寝ないようにすることが大事だからな。」

地面に直接寝ると、害虫にかまれたりするほかにも、夜は体温が相当奪われるらしかった。

実は、フェル達には”転送”があるため、テントであってもそうわけなく持っていけるのだが、エドガー達はまだそのことを知らない。

もっとも、いずれどこかでフェルが”転送”をつかえることは聞くだろうから、いつまでもそれを隠しておくわけにもいかない。フェルはそう思っていた。


フェル達は、エドガー達と冒険者の店にいくと、いくつかの野営道具を見て回る。

様々な道具があり、値段もかなり差があるが、フェル達はボタン付きの大型毛布に眼をつけた。

それは、新商品で毛布に十数か所のボタンがほどこしてあり、寝るときはそれをつなぐと寝袋のようになるというものであった。

「これは・・・便利だな。」

エドガーとリュークもその商品は初めて見るらしい。

値段は、普通の毛布よりも少し高いが、ちょっとしたアイディア商品である。

店でも売れ筋商品らしく、大量に展示をしていた。

エドガーとリュークもそれを買うらしい。

「じゃぁ、僕たちも・・・。」

そういうと、毛布を3つ買う。そして”転送”を行った。


『な、なに?!』

目の前で手品のように消えた毛布を見て、エドガーとリュークが驚く。

「収納・・・なのか?」

エドガーがいぶかし気な表情でフェルを見る。

リュークも驚いているが、エドガーとは少し驚いている理由が異なる。


エドガーはフェルが無紋であることを知っている。だから、フェルが収納魔法のような貴重な魔法を使えるわけがない・・・。だが、実際に今目の前で毛布を消して見せたのは間違いなくフェルだ。

「ええ・・・。他の人が使うのとはちょっと特徴が違うみたいですが・・・」

フェルは、内心ドキドキしながら、上目遣いでエドガーを見る。どういう反応をされるだろうか・・・。


エドガーは、正直困惑をしたが、そこはベテランのハンターである。

今ある事実をそのまま受け入れることにした。

ハンターなどという仕事をしていると、常識や先入観にとらわれすぎると失敗をすることが多い。

大事なのは事実だけなのだ。

”フェルは収納魔法が使える。”それだけが重要なことなのだ。


「正直、おどろいたな・・・。これなら、うまくやれば稼ぎに困ることはないだろう。」

それは、エドガー達にも喜ばしいことだった。


こうして、5人は「約束の双子亭」で再会を祝して食事を共にすると、それぞれの帰路についた。



・・・・



ニムロの村までは、ちょうど商隊の護衛依頼があったためあわせて受けることにした。

Gランクハンターのフェル達だけでは護衛依頼は受けられないが、エドガー達と一緒であれば問題ない。

護衛依頼は、牽制が第一目的であり、5人も武装した者がいればこの距離ではそう襲われることはない。

ニムロへの商隊は、行きは食料や日用品、帰りは鉱石を積んで来るものときまっていて、盗賊などにとって”おいしくない”のである。


ニムロの村までは、特に何事もなくすすみ、商隊の人とフェル達は村で唯一の宿屋に宿泊の手配をした。

幸い、野宿をせずには住むようだ。ただ、2部屋しか部屋がとれなかったためクリスも誰かと同じ部屋に泊まるしかなく、少しもめることになったが・・・・。

「おまえら、宿に泊まれるだけ幸せだと思え。パーティーを組んでいる以上一緒の部屋で寝なきゃいかんことぐらいあるんだから、今から慣れておけ」

とエドガーに一刀両断されて収まった。

結果としては、エドガーとリューク、そしてフェル達3人の部屋に分かれることになったが、なんとも気まずかった。


「そら、あまり遅くなる前に依頼主のところに行くぞ」

そういわれて、5人が向かったのは、村長といわれる初老の男性の家であった。

炭鉱の村であるニムロの家は、エルアの街と異なりかなり素朴なつくりで、それは村長の家であってもかわりがなかった。


「わざわざ、すみませんな。」

そういうと、村長は、このあたりの地図を見せながら説明を始めた。

「この辺りは、豊かな鉱床に恵まれていて、いくつかの採掘場や採掘場後があります。

その中でも、西側には主要な鉱脈を掘り終わった廃坑が多いのですが、今回ゴブリンが確認されたのはこの4番の廃坑になりますじゃ。」

「それで、確認できている数は?」

「詳細は、わかりません・・・。数匹は確認できていますが、なにせゴブリンですからな・・・。

村への直接の被害はまだ出ていませんが、森で何匹かの動物の死骸は発見されております。

ですので、村の被害が出る前に・・・と思って依頼をさせていただいたのです。」


ゴブリンは1匹を見つけたら10匹はいると思えという諺がある。

数匹の目撃があるなら、数十匹は覚悟した方が良い。


「とりあえず、大体のことはわかりました。

それでは、明日から攻略をはじめていきます。あとはお任せください。」

そういうと、宿に戻る。


「廃坑までは30分ってところだな。

いいか、こういう討伐は、できるだけ朝一番がいい。相手も油断しているからな。

なので、今日は早く寝るぞ。今日のうちに準備をしっかりとしておけよ。」


『はい』

そういって、部屋に戻るが、明日のことを考えると緊張して眠れぬ2人と、違った意味で緊張して眠れぬクリスであった。










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