45 鍛錬
今回、弓の引き方の話が出てきますが、残念ながら私は弓に関して素人です。
通常、洋弓などはそのまま目的に向かって引くはずですが、和弓のような場合は打ち起こしを行い、引き分けるそうです。まぁ・・・仮想の世界なのですが、この和弓の方がなんか強く引けそうなのでこういう設定にさせていただいています。
バーンが薬師のゼペット老人の手伝いをすることになる1週間、フェルとクリスはネールの訓練指導を受けることにしていた。
ネールが空いているという条件付きだが、毎日午後1時から2時間程度の訓練で、剣の他に弓やクロスボウの扱いも教えてもらえることになった。
「まずは、二人ともおさらいだ。ちゃんとあれから自主練習したかどうかを試すぞ。」
そういうと、木剣での模擬練習から訓練は始まった。
フェルもクリスも、あれからかなりの練習をしていたが、ネールには軽くあしらわれてしまう。
小一時間ほど交互でネールに挑むのだが、ネールは息一つ上げずに対応していく。
独自で考えたフェイントなども混ぜていったにも関わらず、まったく相手にならなかった。
「ようし。以前よりは大分様になってきたな。」
「いや、まったく当たってないじゃないの。」
肩で息をしながら、クリスが毒づく。
「そりゃ当たり前だろう。そんな簡単にお前さんたちに一本取られたりはせんさ。
だが、まぁいいだろう。太刀筋も大分まともになってきた。
あとは、反復と経験だな。下手なテクニックよりも、まず基本を身につけろよ。」
そういうと木剣をしまった。
「さて、まずはフェルからみてやろう。まず、その弓だがな・・・構えてみろ」
そういわれて、フェルは弓を引く。
「ああ、やっぱりな・・・。おまえこないだ売っている弓が引けないっていってたが、それはお前の力がないからじゃなくて、強い弓の引き方を知らないからだな。」
そういうと、ネールは練習用の弓をもって弦を引く。
「いいか。弓ってのは、真横に引こうと思ったらものかなりの力がいるんだ。
それでは、強い弓を引くのは、なかなか難しい。
強い弓を引く時は、弓構えの位置から、弓矢を持っている両拳を一度上に上げて、その位置から弓を押しながら、弦を引きこむんだ。」
そういうと、弓を持った腕を一度上にあげて円を描くように弓を引き絞る。
「こうすると、腕全体の力で弓を引くことが出来る。射出速度はやや遅くなるが、かなり強力な弓まで引くことができるようになる。ちょっと引いてみろ」
そういうと、フェルに弓を渡した。普段フェルが使っているものより二回りは大きい。
フェルは、弓を引こうとするが、なかなかうまく引けない。
「一度、両腕を真上にあげてみて、そこから腕を広げながら降ろしていく感じだ。」
ネールのアドバイスに従って、何度か繰り返すと、両手はかなりふるえているものの弓を引くことが出来た。
「まぁ、基本の筋力がまだ不足しているな。それにいきなりこの弓じゃぁ大きすぎるのかもしれん。
ただ、この練習をすればかなり筋力もつく。一石二鳥というやつだな。
今、ギルドにある貸し出し用の弓は流石にお勧めできないやつばかりだから、一度ちゃんと引ける弓を買う方がいいかもしれんな。今なら金はあるだろう?」
そういって、弓の引き方の反復練習を指示した。
「次は、クリスのクロスボウだな。まずは、あの的を射てみろ。」
そういうと、クリスはゴーツフットというレバーを倒して弦の掛け金を引く。
そして、クォレルと呼ばれる太く短い矢を乗せると的にめがけて引き金を引いた。
矢は、的の中央こそ外したが、見事に命中している。
「うむ。威力と命中は悪くないが、準備に時間がかかりすぎだ。貸してみろ」
そういうと、ネールはクリスからクロスボウを借りる。
「いいか、このゴーツフットができて、かなりクロスボウは使いやすくなったんだが、この強い弦を引くのは、身体全体で引くのは変わらねぇ。こうやって体重をかけて引っ張れば今の半分の時間で準備ができる。」
そういうと、ゴースフットを体重をかけて一瞬で引き上げる。
「今だと1分はかかっているだろう。獲物も敵も黙って準備を待っていてはくれんからな。
準備が早ければ、的を絞ることにも時間をかけることもできるだろう。」
「そろそろ、忙しくなる時間だな。ちゃんと練習しろよ。」
「ふぅ・・・・。バーンの疲労回復役と湿布があってよかったよ・・・」
・・・・
バーンは、ゼペットの店に来て、手伝いをしながら調薬について学んでいた。
「うむ。基本は知っておるようじゃな。
では、この”肝”について教えようか。
まず、この岩蜥蜴だが、咬まれたときにどういう症状になるか知っておるか?」
「ええ、確か血が止まらなくなるという話でしたが・・・。」
「その通り。つまり、岩蜥蜴にはなんらかの血が止まらなくする毒を生成しているということだ。
そして、こういう場合は大抵の場合毒が含まれるのは、牙などの近くに毒袋があるか唾液もしくは血液なんじゃ。岩蜥蜴の場合は血液と唾液に含まれているんじゃな。そして、毒と薬というのは表裏一体でな。血が止まらないといことは、血をサラサラにする効果があるということだな。」
バーンは、必死でメモを取りながら頷く。
言われてみれば、その通りなのだが、なかなかその発想は出来ない。
「あとは、何を使うかなのじゃが、唾液はさすがに薬には向かん。血液は、使えなくないのだが腐敗が速いので扱いが難しいんじゃ。それにちょっと効果が強いしな。
そこからは、採取を繰り返して実験じゃな。それでわしが行き着いたのが肝じゃよ。」
特筆すべきは、岩蜥蜴の肝の効能よりも、その効能の発見の仕方や考え方であった。
調合のレシピをみて調合するのではなく、薬の本質について考え方であった。
「さて、問題じゃ。今までの話から、これは何の薬かわかったかな。」
「おそらくは、血栓を溶かすための薬ですね・・・。もしや・・・血苞腫などの薬でしょうか?」
血苞腫とは、全身のいたるところで血液がゼリー状に凝固する奇病である。
初期症状は欠陥が異様に膨らむだけなのだが、それが大きくなると血管を詰まらせるのだ。
「よく、そこに行きついた。そのほかに、外傷がなく急激に倒れて、ろれつが回らない人間や心臓を抑える人間がいれば、効く場合がある。それでは、肝の加工方法じゃな・・・」
ゼペットもバーンの理解が速いことに満足したようだ。
こうして、1週間の時が過ぎていった。
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