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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
33/106

33 バーンの夢

「くっ!!・・・」

全身の筋肉が引き攣るように悲鳴を上げている。

かろうじて動けるのは、バーンにもらった薬の効果があったからだろうか・・・。

昨日のネールの特訓は、苛烈以外のなにものでもなかった。


指導内容は、非常に的確で理にかなっている。

指導を受けた後の太刀筋は、格段に良くなっているのが実感できるのだから、すごい。

ただ・・・厳しい。3時間以上ぶっ続けで剣を振り、1時間の休憩の後、また3時間ぶっ続け・・・、最後は10分の休憩の後は、まだ3時間全力指導である。

途中からは、新人3人対指導員1名の実戦形式での模擬戦を繰り返した。

指導員は、3人交代だが、新米ハンターは休みなしだ。


いくら3対1とはいえ、新米に後れを取るわけにいかず、エドガーとリュークも必至で相手をする。

最初は、余裕だった二人も、ネールが対戦毎に新米にアドバイスをすることを繰り返すたびに、時々ヒヤッとすることがあったぐらいに上達していた。

最初のレベルが低いので伸びしろが大きかったのもあるが、クリスの変則的な剣やフェルの時折見せるタイミングの良さは、天性のものなのかもしれない。

ただ、最後の方は、もう新米達は、意識が朦朧としているのがエドガー達にもわかった。

あきらかに、オーバーワークである。

そして、新米達が倒れた後にネールのしごきの対象がエドガーとリュークに移るのである。

「新米相手に、そんなんで指導員が務まるか!」と・・・



・・・・

今日の集合場所は、ギルドではなく「約束の双子亭」である。

エドガーが、気を使ったのだ・・・・。

日はすでに高くなっていたが、集まった3人は、満身創痍の表情である。


「おう、ちゃんと集まれたか。感心したぞ。あと、バーン。昨日の薬助かったぞ。」

エドガーがそういって、自分の右肩を軽くたたく。

5人の身体からは、結構なハッカ臭が漂う。


「さて、本来なら昨日の復習・・・と行きたいのだが、今日は身体は休めよう・・・。

ただ、昨日の指導内容は訓練方法は間違っちゃいないし、効果的な方法だ・・・。

まぁ、限度というものはあるが・・・。

鍛錬は、正しい方法を継続することが大事だからな・・・。忘れるなよ。」

そういうと、一枚の大きな紙をテーブルに広げる。

紙には、街や森、街道などが図解で書き込まれている。そう、地図である。


「今日は、この近辺の地理と特徴について話しておこう。

ハンターにとって、周辺の地理や情報というのは、非常に重要だ。

採取のポイントはもちろん、魔物や盗賊の出現情報、近隣都市の状況などは稼ぎやリスクに直結するからな。」

そういうと、街の周辺や近隣の村、領主の人となりなどを話をしていく。

「ギルドの掲示板には、時折依頼以外の情報が貼られることがある。

たとえば、盗賊被害が出た時や隣接都市で戦争の準備と思われる行動がある場合などだな。

こういう時は、無料の一般情報の他に、有料のより細かい情報を買うこともできる。

覚えておくといい。」


その後も、大きな街や近隣領地、主要ルートや採取場など様々な講義は続く。


「そういえば、バーン。

昨日の粉薬だが、あれはどうやって作っている?もしよければ教えてほしいのだが・・・」

「すみません。あれは、家の秘伝で・・・。お分けするのはいいのですが、作り方は、ちょっと勘弁してください。」

「ああ、そうか。すまんな。ただ、なかなかの良い薬だと思ってな。

あれは値付けを間違えなければ、結構売れるかもしれんぞ・・・。

ベテランになると、疲れが抜けないなんて言うやつは、結構いるからな・・・。

ちなみに、いくらであれば売っても良いのだ?」

「いや・・・、差し上げますよ。」

「そういうわけにはいかんよ。だったら、1包 銀貨1枚ぐらいでどうだ?」

「それだと、十分利益が出ますね。材料はそんなに高くない・・・というか今ならタダですので。

実は、この間のメリアの森で採取した物でできていますので・・・。」


「えっ・・・・」

声に出したのはクリスである。

1包が銀貨1枚というのは薬としては決して高い方ではないが、その分、庶民にも手の届く金額であり、効果が疲労回復であればかなりの需要があるかもしれない。

そして、その材料が全部メリアの森で獲れて材料費がかからないとすれば、すごい儲けになる可能性がある。


猟師の娘であるクリスは、父の収入が安定せず、その収入を支えるためにハンターになった。

ハンターの受験料すら、カツカツであった。つまりは、あまり裕福ではないのである。

よく見れば、バーンの装備は何から何まで新しい。

つまり、お金持ち・・・なのかもしれない。


「あ、あの・・・バーンさんは、そのお店を開いたりしているのですか?」

「あ、いやまだですよ。薬屋ってのは、結構難しいんです。商売人としての才覚もいるんですが、ある程度の信用が必要不可欠でして・・・。なにせ、商品の効能がすぐ効くわけじゃないし、これが効くというのをお客さんが納得してもらわないといけないのですが、手に取ってわかるものじゃないじゃないですか・・・。それに、薬と毒は紙一重でして・・・。

だから、少なくともきちんとした後ろ盾がいるんですよ。貴族であったりギルドであったりとね。」

「それで、ハンターギルドへ?」

「薬師のギルドというのもあるにはあるのですが、加入資格が魔法付与で”ポーション”が創れることなんです。これは、滅茶苦茶ハードルが高くって・・・。会費とかも凄いです。

なので、そこまでの力がない人は、普通はハンターギルドか町の商人ギルドに加入するんですよ。」


「そうすると、ハンターになったので、お店を出したりします?」

「ええ、すぐに開くほど資金はないですが、ゆくゆくは自分の店を持つのが夢です。」

「素敵な夢ですね・・・。」

可愛らしくクリスは返したつもりだが、リュークはその笑顔を見て思った。


「こいつ・・・なんか考えてやがるな・・・。」









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