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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
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32 戦闘訓練

ギルドの裏庭で集まると、ギルドから木剣を借りたエドガーとリューク、そしてなぜかネールさんがいた。


「今日は、剣術の訓練をしようと思ったんだが、それを聞いたネールさんが無償で講師を引き受けてくれた。普通だったら「訓練依頼」をだして、2時間で金貨1枚払わないといけないのがなんと只だ。

感謝するように。」

エドガーは、そういうとネールに代わる。

引退したとはいえ、ネールは元Bランクハンターらしく、訓練教官も務めているので、実力も指導力もエドガーより上らしい。


「まぁ、訓練の価値ってのを知っといてもらうほうが、後々ギルドももうかるし、おまえらはちょっと普通より『癖が強い』みたいだから、ちょっと手を貸してやりたくなっただけだ。特にバーンなどは、これから貴重な収入源になる可能性があるのに、戦闘試験はひどかったからな・・・。」

そういうと、ネールは全員に木剣を渡し、基本の構えから教えて始める。

フェルとクリスは様になっているが、バーンはその時点で少しふらつく。

何回か基本の突きの訓練をしたところで、バーンだけが外され、エドガーの個別指導に変わった。


「フェルとクリスは基本は出来ているな。

戦闘で最も重要なのは、その基本の『突き』になる。

斬撃ってのは、意外と膂力がいるし、剣の切れ味に左右される。

しかも相手が重鎧を着ていたり堅い魔物だと中々深手を負わせられないからな。

まずは「突き」を覚えてもらう。コツは・・・・」

そういって、間合いのとり方、体重の乗せ方、腕の位置などを細かく指導していく。


「フェルは、フォームは綺麗なのだが、どうも違和感のある剣の扱い方をするな・・・。

力の入れどころが間違っているというか・・・・。その剣術は誰に教わった?」

「えっと・・家に会った指南書を見て覚えたんですが・・・・。」

「何?本を見ただけで覚えたのか? どおりで・・・いや、それだけでそのフォームなのだったら十分なのだが・・・。」

そういうと、フェルの後ろに回り込んで突きを出すように言う。

そして、突きを出す瞬間にフェルの服を一瞬つかんで離す。

ワンテンポ突きのタイミングが遅れるが綺麗な突きが繰り出される。


「今のタイミング・・・わかるか?」

フェルは黙って頷く。

もう一度、突きを繰り出す。腰を引いて普段より上半身の動きをワンテンポ遅らせる。

下半身の踏み込みの力がそのまま上半身に伝わり、先ほどまでより力強い突きが出来ていた。


「やはり・・筋がいいな。フェルは、もう少し今の突きの練習をしてみろ。リューク。ちょっとみてやってくれ。あとは、クリスだが・・・」

リュークはフェルの横について、剣の指導を続ける。

リュークは、主武器が槍なだけあって、突き方については指導がうまい。


「そろそろ休憩にするか。」

リュークがそういうと、3人はその場に座り込んだ。

かれこれ3時間・・・。休みなしの動きっぱなしである。

バーンなどは、息をするので精一杯の状況だ。

「なんだなんだ。こんな程度で疲れているようでは、ハンターなんぞ務まらんぞ!」

ネールは檄を飛ばすが、新米ハンターたちはそれに反応できない。


「ネールさんの悪い癖が始まったな・・・これ、明日筋肉痛で誰も動けんな・・・」

エドガーがリュークと小さな声で会話をする。

ネールは、気に入った若いのがいると、かなり教育に熱が入る場合がある。

エドガーも実は昔かなりしごかれた口だ。まぁ、おかげで今まで無事にハンターとしてやってこれたんで感謝はしているが、鍛えられている間は、正直、思い出したくもないぐらいキツイ。

ネールは悪気もなく良かれと思ってやってくれているのだが・・・


結局ネールの訓練は、朝から夕暮れまで続いた・・・ほとんど休憩時間もなく・・・・。


・・・


その日の夜、約束の双子亭にはくたびれた5人の姿があった。5人とも精気がない。

「す・・すまん。さすがに新人相手にあそこまでやるとは思わんかった・・・。」

「いえ、すごくためになりました・・・。ただ、明日はちょっと動けないかも・・・・。」

「ハンターって大変なんですね・・・。」

「いや、あの人がちょっと特殊っていうか・・・。猪突猛進な性格・・・現役時代と変わってねぇ・・・。」

結局、新人3人が動けなくなったので、なんとエドガーとリュークまでしごかれることになったにだった・・・。



「明日は・・・わるいが午後から座学だけにしよう・・。多分もうこの2日だけで通常の初心者講習の8割は終わってるから・・・」

エドガーの提案に全員が頷いた。


「あの・・・。皆さん、もしよければこの粉と湿布をどうぞ」

そういって、バーンは緑色の粉末の包まれた小さな紙包と、ハッカ臭のする布を配る。

疲れをとりやすくする薬草と、筋肉痛を緩和する薬らしい。

「魔法調合ではないので、そこまで効くわけではないですが、ないよりましなはずです。」

「ありがとうよ。これは助かるな。」

「すみません。ありがとうございます。」


魔法調合とは、薬草などの調合にさらに効果を高める魔法を付与する付与魔術の一種である。

この魔法調合で作れる薬は、通常”ポーション”と呼ばれ、普通の薬に比べ、大変な効き目がある。

もちろん、種類にもよるが即効性があるものが多いのが特徴で、吹きかけるとたちまち傷が治るなどというものもある。

ただし、魔法調合が出来るのは、薬術の知識を持ち、付与魔法が得意な者でないといけない。

そのため、軍などが優先的に買い占めてしまうため、非常に高価である。

訓練で使うことなど、ありえない。


「しかし、バーンもよく今日の訓練についてきたな・・・。

すぐには無理だが、あの訓練の1/10でいいから、毎日やれば、かなり強くなれるぞ」

「いやぁ・・・後半半分はもう記憶がとぎれとぎれですけどね・・・。」

「剣術の指名訓練だけは・・・当面遠慮しとこう。」


そう誓う新人3人であった。







評価&ブックマーク&コメント ありがとうございます。

そろそろ、ティルクも活躍してもらわないといけないですね。

ただ、もうしばし、フェルの基礎訓練にお付き合いください。

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