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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
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16 ハンター試験 1

武器屋をでて、ギルドでエドガーと合流すると、フェル達はメイン通りの露天市場を見て歩く。

肉に野菜、果物から雑貨や比較的安価な武器などまで、店がびっしりと出ていて、威勢のいい掛け声が通りのあちこちでする。

顧客も老若男女問わず沢山おり、この街がにぎわっているのがわかる。


「なにか、いい依頼はあったか?」

リュークの質問にエドガーは肩をすくめながら首を横に振る。


「まぁ、幸いいい稼ぎをさせてもらったから、ゆっくりしようや。

それに、フェルが試験に合格したら、教育の依頼が出るだろうからそれを受けるのも悪くないだろう。」


新米ハンター教育依頼。

ハンターになるには、最低限の試験に合格する必要があるが、当然そんなテストを受かったからといって、十分な依頼をこなせるようにはならない。

なによりも、ハンターには様々な決まり・・・暗黙の了解というやつも含めて・・・があり、それを教育する必要がある。

そのため、ハンターの資格を得たものには最低1週間の教育訓練が義務付けられるのだが、それらはギルドからベテランハンターに依頼が出されるのだ。

この依頼の報酬は全てポイントで付与されるのだが、リスクのわりには貢献ポイントも悪くないので、一部のハンターからは人気の依頼となっている。


そういうと、3人は市場でも一際盛況な区画で足を止める。

肉を焼く匂いやスパイシーなスープの匂いが、食欲をそそる。


「角ウサギの串焼き 小銀貨2枚 、大麦のパン 小銀貨1枚 、カレースープ 小銀貨1枚」

商品と値札を見ていると、フェルの顔が自然とにやけてくる。

ティルクは、口からよだれが出ている・・・。実際にはティルクは食事をしないのだが・・・。


「昼飯にしよう。」

エドガーは角ウサギの串焼きとパンを購入しながら、声をかけてくる。

そしてリュークは、蒸かした芋とゆでた鶏肉を、フェルは“カレー麺“を購入し、屋外の簡易テーブルに座る。

レストランや昼もやっている食堂もなくはないが、一般的な昼食はこのような露天市場でするのがこの街の標準スタイルらしく、まわりにも多くの人が雑談しながら食事を楽しんでいる。


フェルが、頼んだカレー麺は、カレー草という香辛料を水に溶き煮込んで作るカレースープに、小麦粉を細く練った“麺”が入った人気料理で滋養強壮にも良いとされている。

そのため、カレー草の採取は常時依頼としてギルドに掲示されており、実入りは少ないが安全な依頼として新米ハンターの貴重な収入源となっている。


「あつっ、あつっ。」

なぜか、食べてもいないのにフェルよりもティルクのほうが食事に対して反応をするのだが、ティルクいわくフェルが食べたものはティルクのエネルギーになるし、味覚なども共有がされるらしい。

そのため、チコリ草だけは食べようとするとティルクに猛反対される。


食事の合間、フェルはエドガーに買った剣の話を嬉しそうに話し、エドガーはそれ剣を品定めしながらうなずく。エドガーやリュークのような身長も力もある者には少々小ぶりで軽すぎるが、かなりのよい剣である。

これで金貨25枚はむしろ安い。


「ギルドへは、とりあえずフェルの話はしといたから、食事が終わったら向かうか。」

フェルがうなずくとリュークは武器の手入れをするために先に双子亭に戻りたいので、ここで分かれるということになった。


「リュークさん。今日はありがとうございました。」

そうこたえると、リュークは照れくささそうに片手をあげ、宿に向かった。


ギルドの登録試験は、「筆記試験」「戦闘試験」「野外活動試験」の3種目ある。

筆記試験と戦闘試験は特段の事情がない限りいつでも受験が可能であるが、「野外活動試験」は毎週末にしか行なわれない。

明日が週末であるため、フェルは「筆記試験」と「戦闘試験」を受けに来た。


エドガーの話だと、「筆記試験」は、最低限の文字の読み書きができればほぼ合格らしい。

たしかに、依頼書や契約書、情報掲示板に書かれていることがわからなければハンターは務まらない。

「戦闘試験」もどちらかというと「適性検査」に近いもので「武術戦闘」と「魔法力検定」で成り立つらしい。


「魔法力検定」というところで、フェルはひっかかったが、詳しく聞くとハンター試験を受けるもので実践レベルで魔法を使いこなす者はほとんどいないということがわかった。

そもそも魔法は、上位紋を持っていても、訓練や知識不足では発動しないし、下位の紋よりも劣る性能しかでないことも多いらしい。

実際に炎の使い手として名をはせているAランクハンターの「烈火のウィルド」はランクの低い火放紋だといううわさもある。


「まぁ、字さえ読み書きできればそんなに心配はいらんさ。」

とエドガーがいうと、フェルは頷く。

流石に、弱小貴族家で冷遇されていたとはいえ、フェルは文字の読み書きは出来る。

そんなに沢山の蔵書があったわけではないが、薬草などの図鑑や剣の指南書を好んで読んでいたので、知識量もそれなりのはずだ。


ガランゴロンと低いベルをなり、フェル達はまた視線をあつめるが、今日はそこまで気にならない。

エドガーは、カウンターの中年の女性に声をかけるとフェルを顎でさす。


「こちらへ、どうぞ」

女性がフェルに着席を促し、一枚の紙をカウンターの上に載せる。

この世界の紙は、動物や魔物の皮を木枠に張って限界まで伸ばし、ナイフで削って薄くして乾燥させたもので材料にもよるが、やや黄色がかっている。

紙には、箇条書きでかかれており文字が書かれており、受付の女性はそれを指差しながらフェルに尋ねる。


「試験希望者ね。まず、文字の読み書きは出来るかしら?」

フェルは頷く

「では、ここに書いてあるとおり、試験と登録料で金貨5枚。不合格の場合は、4枚は返却するわ。

あと、試験は「筆記試験」と「戦闘試験」で3時間ぐらい。そして週末の「野外活動試験」は丸一日かかるわ。合格した場合は、その後1週間の研修を受ける義務が発生します。

これは、実際に狩や野営などもするので、結構ハードよ。

これらに同意できる場合は、ここにサインして頂戴。」


フェルは、エドガーが頷くのを確認するとサインをする。

瞬間、紙に書かれたサインがほんの少し光る。


「大丈夫よ。ギルドの中央基幹ネットワーク<アーカイバ>に登録するための反応だから」

女性はそういうと、真実の口にフェルの左手をいれるように指示をし、フェルにいくつかの項目を書くように指示をする。

どうやら、虚偽の申告をできないようにしているようだ。


氏名、年齢、性別、出身地、主な活動拠点、特技、得意な武器などを記載するようになっている。


「あのー。特技というほどのものはないんですが・・・」

「そういう場合は、特になしでいいわよ。この辺のところは、研修を受ける際に使うだけだから。」

得意な武器というところには、剣と記入をする。


「これでいいですか?」

と聞くと、女性は中身を確認して、手元の石版に何か文字を書く。

「ええ、いいわ。あとは“紋”の登録をさせてもらうわね。」

そういって、また石版を触る。


「あれ、ちょっと上手く反応しないわね。左手を動かさないで」

そういうと、真実の口に入れた左手を掴む。

「おかしいわねぇ、上手くスキャンできないわ。」

そういって、首をかしげる。


「あの、もしかしてこれで“紋”を読み取るんですか?」

女性が頷くと、フェルは恥ずかしそうに答える。


「僕・・・紋がないんです。」


ブックマーク登録&評価ありがとうございます。

頑張って更新しますので、読んでくれると嬉しいです。

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