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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
12/106

12 野営

街道から大体2kmほど離れた場所で、リュークの馬車が止まる。


「この辺でいいだろう。ちょっと手伝ってくれ」

リュークが後方の商隊に向かって叫ぶ。


「死体を下すぞ。」

エドガーが前のフェルと隣の御者に向かって話すと、荷馬車を止めてリュークの馬車に向かう。


死体は衛舎にもっていっても邪魔になるだけであるし、そろそろ死臭もしてしまうので街までもっていく必要はない。

ただ、街道沿いに放置すると魔物や野生動物が沸く可能性があるので、他の商隊などに迷惑が掛かるので、緊急時以外はなるべく死体を街道から離すようにするのだ。

数時間もすれば、血の匂いに引き付けられ、この死体は魔物や猛禽の類の餌になる。


「さぁ、寄り道したがエルアに向かうぞ」

そういうと、皆元の馬車に乗って街道方面へ馬車を動かしていく


「今日は、ちょっと早めの野営にするか・・・」

死体をおろした場所から10kmほど進んだ場所で、エドガーが提案する。


「それは、助かります。さすがに今日は疲れました。」

ミンツが答える。

明日にはもうエルアにはつくが、流石に今日中につくのは無理なので、どうせ安全な場所で野営をすることになる。

今日は、色々あったし、ハンターの二人やフェルは返り血を浴びたままだ。

流石に、少し体を拭きたいだろうし、ミンツにしても脱臼した腕は応急処置したが、できれば念入りに治癒をしたいだろう。


エドガーとリュークは、馬車を街道外れのくぼ地へ移動させる。

そうそう盗賊などに会うわけではないが、野営は火を使うため、なるべく見つかりにくくするためだ。

荷馬車から薪をおろすと、近くの燃えそうな草や木の枝を集める。

もともと数泊は野営が必要な工程だったので、最低限の必要な道具はそろっている。


「エドガーさん、リュークさん、そしてフェル君。おかげで、今日は助かりました。

それと、すみません。まさか雇った御者が盗賊の仲間だったとは・・・・。」

「気にしないでくれ。これも護衛の仕事だ。

ただ、御者については、ちょっと商業組合にクレームをつけてほいた方がいい。

それよりも、少し身体や武器の血を拭きたい。

貴重な水なのはわかっているが、近くに川などがなさそうなのでな。いや少しでいい。」

「あ、もちろんです。」

そうミンツが答えた時


「あの~。もしよければ水は僕の方で用意しますけれど・・・」

フェルがエドガーに話しかける。

そう、フェルは兄から水樽の剣を貰っている。

盗賊を刺した剣であるが、実はこの剣、武器の性能としては大したことがない。

田舎町なので、腕のいい鍛冶師などいないのだ。

ただ、次兄の付与はなかなか良い視点をしている。

水は旅に必需品だし、何より嵩張り重い。


水系の紋を持つ者の中には自由に飲み水を出すものもいるが、魔力量の関係もあるし無限に水が出せるわけではない。


「ん?フェル君は、水系の紋の持ち主か?だが君も疲れているだろう。無理をすることはないぞ」

エドガーはそういうが、フェルは首を振りながら答える。

フェルが無紋であることは左の手の甲を見ればわかるのだが、今は指切りの革手袋をしているためにわからない。


紋は、その形から詳細までわからずとも系統や性能の予測がつくものがある。

そのため、冒険者などは左手は革手袋などで隠す者が多い。

フェルも、それくらいは知っていたのでそれに倣っていた。

無紋であることを知られると、軽く見られたり絡まれるリスクが高くなるからである。


「いや、そうじゃないんですよ。この短剣なんですが、兄が開発したもので、水を貯めておけるものなんです。桶かなにかありますか?」

ミンツから桶を受け取ると、フェルはその上で剣の腹を触りながら「排水」とつぶやく。

これは、一種のパスワードであり、魔法ではない。


剣から水が出で、桶をゆっくりと満たしていく。

それを、ほかのメンバーは食い入るように見る。


「驚いたな。これは便利な品だ。兄上が開発したといっていたが、あの町で売られているのか?」

「いや、まだ試作品らしいです。でも兄は宣伝してくれっていってましたから、売れるめどがついているのではないでしょうか。」

それを聞いてミンツは目をキラキラさせている。


「これは、飛ぶように売れますよ。どれぐらいの水の量が入るんですか?」

「うーん。ちょっとわからないのですが、この桶なら2〜3杯はいけるのではないかと。」

「そいつはすごいな・・・。俺たちもそれは欲しい。金貨5枚出してもいい。」

普段無口なリュークが言う。

「いや、わたしなら10枚は・・・。」

ミンツはそういうが、

「おいおい、やめておけ。フェルが困っているだろう。」

エドガーに止められた。


金貨10枚というと、大体半年分ぐらいの生活費である。

持たせてもらったお金が銀貨200枚・・・つまり金貨2枚なのだから大金だ。

正直、フェルは転送があるので水には困らないのだが、この流れから言えばそのことは伏せておいた方がいいだろう。


ミンツはまだ物欲しそうな目で見ているが、それよりも兄と独占契約でも結べばいいのではないかという話をすると、そちらに興味がいったようで、兄の人となりなどを盛んに聞くようになった。

付与の魔法は、結構手間がかかるので、量産するといってもそこまで大量にできないし、あの町の中ではそんなに売れはしない。

商人や旅をするものには喉から手が出るほど欲しいアイテムでも、いつでも水が手に入る町中では需要は少ない。

すると、どうせだれかに交易を任せることになる。

ミンツさんは、これまでに何度も町に来ていたし、”よい人”のようである。

あの家にとっても悪い話ではないだろう。


一通り、身体や武器などを拭き終わると、皆は火の回りに皆腰をおろす。

ミンツが、堅パンと干し肉、干した野菜を湯で戻したスープを配る。

一般的な保存食だ。


「そういえば、フェル。おまえなかなかやるな。

あそこで、お前が御者だった男を倒してくれなかったら、今頃どうなってたかわからん。」

エドガーいわく、フェルが倒した盗賊は、どうもこの盗賊団の副頭だったらしい。

二人の実力であれば、逃げることだけならできるのだろうが、ミンツたちを見捨ててはいけない。

依頼失敗のペナルティもあるが、信用を失って護衛活動が出来なくなってしまう。


「フェルは、ハンター試験を受けるんだったよな。今回の動きは俺たちもギルドにちゃんと伝えるし、今後も何かあったら協力するから、何でも言ってくれ。」

エドガーは、そういってから今回の捕縛後の動きについていろいろと解説してくれる。

捕縛時のロープの結び方や捕縛時の注意など、かなり実践的で役立つ内容であった。


この後、エドガーとリュークが交互で見張りをしながら野営をする。

その際もフェルはエドガーから野営の基礎を教わる。試験に必要だからと。

もっとも2回目の交代の際には、起こされずに朝まで熟睡してしまったようだが。















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