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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
13/106

13 エルアの街

エルマン子爵領 エルア

一通り施設や各ギルドの支部のある中規模の街である。

フェルのいた町とは異なり、鍛冶屋の工房も3件、宿屋なども10件近くある。


夜明けとともに野営をたたんで出発したフェル達は、夕刻前にはエルアの街についた。

街の入り口で、衛兵にエドガーがハンター証をみせ、荷物の見分を受ける。

見分といっても、誘拐などの事件性がないかや危険物がないかなどの簡単なチェックだ。


その後、ミンツと御者は急ぐということでわかれた。

エドガーは、護衛依頼書にサインと評価を貰うと、にっこりと笑う。

そこにはAという文字が書かれていた。

本来であれば、ミンツたちにも盗賊の持ち物や捕縛の報酬についての分配に参加できなくもないのだが、二人は特に何もしていないし、今回は感謝しかないといって辞退をしていた。

ミンツは、誠実な商人のようである。


フェルは、そのまま二人のハンターと一緒に研修を兼ねて衛兵詰所に、捕縛した盗賊をつれて向かう。

詰所は、街の入り口にある比較的大きな建物である。

奥に複数の牢屋があり、常時数名の衛兵が待機しているためである。


「・・・というわけで、御者であった盗賊も含めて、討伐したのは6名、そして捕縛が2名だ。」

エドガーが、”真実の口”に右手を入れながら説明をする。


”真実の口”は、40㎠ぐらいの石板で、眼と口の部分がくぼんでおり、口に手をいれて使う。

原理はハンターギルドのトップシークレットらしいが、性能は折り紙付きで、ハンターギルドだけではなく他のギルドや領主なども所持していることが多い。

ハンターギルドが国や領土をまたいで活動し、高い信頼を得ているのもこの魔道具を生産できるのがハンターギルドだけであることが大きい。


むろん、高価でもあり、ギルドに信頼されなければ手に入れることができないので、庶民が持っているなどということはないが、この衛兵詰所はもちろん、ハンターギルドなどでも使われるため、ある程度の街であれば、その効果を知らない人はあまりいない。

なお、偽証をしてもその眼が光ったり、安全のために口に入れた手が抜けなくなることはあるが、切断されるなどということはない。

人間、勘違いや話を盛ることはよくあるため、訂正をしたり、より詳しく説明をして判定が出なければそれが正しいという判断がされる。


エドガーは、衛兵から金貨と銀貨を数枚渡されて捕縛した盗賊を引き渡した。

「よし、俺たちはこれからハンターギルドに報告にいく。報酬の配分もあるし、どうせ明日には顔を出さなけりゃいけないんだから一緒に来てくれるか?」

エドガーがフェルに聞くが、答えは一つしかない。


「お願いします。」


ギルドに向かう途中、肩の上では、ティルクがはじめてくる大きな街をみてキョロキョロと周りを見回して、色々とはなしかけてきていたが、流石にみんながいる前であまりしゃべるわけにいかないので、片目をつぶって「ティルク、あとでゆっくり聞くから」と話すと、ちょっとふくれっ面をされたがおとなしくなった。まぁ、まわりをキョロキョロみているのは変わらないが・・・。


ハンターギルドは、街の中心部に近い場所にあった。かなり大きな建物だ。

後で聞いた話だと、街の中心にあるのではなく、ギルドの周りが中心地になったらしい。


ギルドの前で、戦利品の馬車の荷台から同じく戦利品の武器などを降ろしていると、ギルドの職員が荷下ろしを手伝ってくれる。

「買取査定でいいですかね?」

職員は、エドガーのハンター証をメモすると、荷物をギルドの中に持っていく。

ギルドでは、大物の素材やこのような武器などを買い取ることもあるため、専用の搬入口があることが少なくないのだ。


ガランゴロン。

ギルドの分厚い木の扉を開けると、やや低めのベルがなる。

先輩ハンターの二人に続いてフェルも中に入る。

中は、正面に4つほど窓口が用意されているが、今は2つは人がいない。

右手には大きなテーブルが6組ほど置かれていて、奥には階段がある。

左手は、先ほどの搬入口へ続いているようで、大きな猪やさきほど運び込まれてきた武器などが置かれているのが、カウンター越しに見える。


テーブルには、何人かハンターらしき人がいて、フェル達は一斉に視線を浴びる。

フェルは、一瞬緊張して硬直するが、先導する二人は何事もなかったかのようにカンターへ向かう。

ドアが開いたら注目をするというのは、一種の職業病かもしれない。

おいしい依頼や様々な情報をそれで得られることもあるのだ。

そして、フェルを見ていた視線もすぐになくなる。


「依頼完了報告だ。たのむ。」

エドガーとリュークは共に自分たちのハンター証と完了報告書を出して受付の女性に話しかける。

女性は、そのカードを受け取り、石板の上にのせて何やら作業をする。


「追加報告はありますか?」

女性がそう聞くとエドガーが

「盗賊にあい壊滅させた。衛兵に報告済で。討伐6、捕縛2だ。」

「はい。その件は既に報告がはいっています。数か月前にも襲撃されたようですので、貢献ポイントと評価ポイントがそれぞれ100付与されます。」


貢献ポイントとは、ギルド内で使える仮想通貨である。

これがあれば、身ぐるみがはがされても、ギルドで武器や防具、キャンプ道具などを買ったり借りたりできるし、限度もあるし交換レートはやや少なくなってしまうが現金を手に入れることもできる仕組みだ。

その逆で、金をギルドに出資することで増やすこともできる。つまりは、多少は手数料として目減りするものの、安全なお金の預け先として銀行に近い役割をギルドが担っているのだ。

交換レートは、預け入れ時が1ポイント銀貨1枚である。


一方評価ポイントは依頼の達成によって貯まるポイントで、ハンターランクがこれで決まる。

ハンターランクは、無理な依頼を受けられないようにする仕組みで、ハンターの命と依頼主の利益、そしてギルドの信頼を守るために必要なものだ。


フェルとエドガーたちは、空いた机で武器の査定を待っていると、ほどなくエドガーが呼ばれる。

そして金貨と銀貨を数枚受け取って戻ってくる。


「金貨2枚と銀貨9枚だ。数はあったが、あまり良さそうなものもなかったから、まぁこんなもんだな。」

そういって、手持ちの革袋に入れる。

そして、先ほどの受付嬢に小部屋を借りるというと二人を入室するように促す。

そして、リュークが入り口の板を「使用中」にひっくり返す。


「じゃぁ、分配といこうか。今回の依頼料は俺とリュークの折版だ。盗賊からの取り分とこの売り上げは3等分。それでいいな。」

リュークが頷く。

「えっ、僕も同じだけもらっていいんですか?」

「当たり前だ。いいかフェル。こういうところでは遠慮はしちゃいかん。正当な報酬だからな。こちらは命を懸けているし、今回のフェルの働きはそれに見合うものがあった。」

エドガーは、先日からフェルにいろいろなことを教えてくれる。

先輩ハンターが後輩の指導をするのはよくあることだが、どうもそれだけではなく、エドガーはフェルを気に入っているようだ。


「銀貨換算でいくぞ。盗賊の金目の物がざっと1,735枚、盗賊の討伐報酬が6人で60枚、捕縛報酬が2人で100枚、今回が29枚なので合計1,924枚。一人641枚。端数はリーダー報酬でいただくよ。」

そういって、フェルとリュークの前で皮袋に金貨と銀貨をわけていく。

リュークはそれを懐にしまったので、それにならう。

端数が出た時は、リーダーがもらう。暗黙のルールである。

銀貨数枚とはいえ、金のトラブルは尽きないので、暗黙のルールがハンターには存在する。


銀貨641枚。これは、一般的な家庭の半年分に近い稼ぎである。

もちろん貴族や大商人などの稼ぎはもっと多いが、かなりのいい稼ぎといっていい。

ハンターを目指す者が多いのもこれが一つの要因だある。

ただし、今回も一歩間違えば、身ぐるみ剥がされたり殺される可能性も高いのだが、未経験者にはそれがが自分に当てはまるとは想像がしにくいらしい。


「さて、もう時間も時間だし、宿を取りに行くぞ。

フェルも良かったらどうだ。」


フェルにはもちろん断る理由がなかった。








やらかしてしまいました。

金貨=銀貨=小銀貨の価値の設定をミスりました。

よくよく考えたら、100枚もの貨幣をじゃらじゃら持ち歩けないですよね・・・。


というわけで、修正作業です。

金貨1枚=銀貨10枚=小銀貨10枚

銀貨1枚が1,000円ぐらいの価値ですかね。

もっとも、現代日本と違って、そこまで所得は多くないし、貯蓄というのもそこまで進んでいない世界なので、月の一般的な平均所得は金貨10枚程度の設定と思ってください。

そのうち金貨100枚=ミスリル金貨1枚ぐらいで考えておきます。

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