4. 勇者の現在
今回は、魔王を討った後の勇者のその後~魔王と再会(?)まで。
初会話は次回へ
最終改訂9/18。
魔王を倒すまでの道のり。
それは容易いものではなかった。
出会い、そして別れ。
そして様々な困難に遭いながらも、それらを仲間たちと協力し合って乗り越えてきたのである。
あの旅は、一言では言い表せない程のものだった。
けれど現在。
世界は平和を取り戻し、こうして目の前に平和な風景が広がっている。
あの苦労した日々の努力が報われると思える光景だった。
ここは辺境の村、カリスタ。
俺が現在、娘と共に暮らす村である。
―――――― ※ ――――――
魔王との戦いの後、俺はしばらく世界を放浪した。
魔王は魔物達の力の源。
魔の領域に住まう全てを統べる存在。
その魔王を打ち倒した事によって魔物達の力は大きく削がれ、その脅威が薄れた事で人々の間に活気が生まれた。
だが未だに疲弊し切った世界。
争い続ける人々。
時には諭し、時には諌め……。
そうやって世界を数年、巡ったのである。
そんな旅の中で、親密な関係になった相手が全くいなかった訳ではない。
子供も何人か生まれた。
そして数年前、俺の子供達の中で唯一の娘が生まれた。
待望の娘の誕生に、俺は喜んだ。
だが、この娘は普通では無かった。
感情というものが無い。
何かに動ずる事も無い。
はっきりいえば、『魂が存在しない』とでも言った方が早いだろうか。
言われた事はおそらく理解している。だがそれ以上は無い。
言われるままを繰り返す、ただの生きた人形。
俺はそんな娘と共に暮らすために、静かな村を選んだ。遠い昔に暮らしていた故郷をも思い出せるような長閑な村だ。村人たちも、こんな普通では無い娘を受け入れてくれた。
だが母親である女性は、こんな辺鄙な村で暮らすのが出来なかったため、ここに来て数日でここから出て行った。
それから俺は、娘と二人で暮らし始めたのである。
そうやって暮らしてきて、もうすぐ1年が経とうとしていた。
今日もいつもと変わりなく仕事を終え、俺は家に帰り着いた。
旅をしていた当時を思い出すと、想像できないほど平和な日常だ。
いつもならもうすでに帰ってきているはずの娘の姿が無い。
その事に気付いた俺は、慌てて娘を探しに家を出た。
だがその心配も杞憂だったようで、家を出てすぐに娘の姿は見つかった。
栗色の長い髪をしたいつもの見慣れた後姿だったのだが、その姿にどこか違和感を覚えた。
何かを探すかのように辺りを見回す姿。
何かを考え込むような仕草。
それら全ては、今まで見たことも無い動作の数々だった。
そして何より驚いたのが、こちらを振り返った瞬間顔を輝かせたその表情だ。
一体何が起こったんだ!?
戸惑いを隠せないまま、俺は娘の下へと向かって行ったのだった。
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