2.魔王の……
9/30.説明を大幅に付け足しました。
最終改訂9/18
「魔王、覚悟!!」
長い長い時間だった。
どれほどの孤独と絶望の中を生き続けてきただろうか。
そしてようやく、その長い生に終止符を打つべき存在が目の前に現れた。
それが勇者。
人々の希望を背負った者。
人々の憎悪を向けられる私とは真逆の存在。
そして、魔王である私と渡り合うだけの力を持った唯一の存在だ。
けれど彼は一人ではない。
大切な仲間と共に現在、私の目の前にあった。
ここに至るまでの道のりは容易いものでは無かっただろう。
幾多の裏切りもあった。
勇者を利用しようと近づく者もいた。
自らの利を優先する者もいたし、已むに已まれぬ理由で近づいた者もいた。
つい先日まで敵であった者たちとも、誤解が解ければ手を取り合った。
彼らはそんな苦難を乗り越え、ようやくここまでたどり着いたのだ。
そんな勇者たちを、私は歓喜と共に迎え撃つ。
―――――― ※ ――――――
これまでの私は、ただそこに存在しただけだった。
かつてこの地には、幾人かの魔王が存在した。
魔の領域を統べる王、それが魔王。
だが私ほど長い時間この座に座した記録は無いだろう。
そして――――。
私以上にこの地に住まう生き物たちに、より大きな力を与えた存在もいなかっただろう。
それ故に魔物たちは私を王と崇めた。
至高の王、と。
さまざまな思惑を孕みつつも、それらを隠したまま魔物たちは私にひざをつく。
最初のころは何も考えず、ただ力を与え続けた。
力無い小さな存在のために。
求められるがままに、望まれるがままに力を与え続けた。
この数百年の内で魔物たちはさらに強大な力を得た。
力無き小さな魔物も、そして…………もとより力あったものも。
結果、世界は荒廃した。
さしたる意思と言うものを持たない魔物の多くはただ目の前にある障害を排そうと、目の前にある生き物を全て屠っていった。
中位に立つものは、そんな魔物たちを操り世界を蹂躙する。
上位に位置する者達は、私を守ろうとするものと、廃そうとするもの、そして静観するものとに別れた。
魔王と恐れられあがめられても、所詮は魔物達にとっては道具の一つにしかすぎないのだ。強大な力を得るためだけの。
気付けば私は……一人だった。
孤独な玉座に縛られた、ただの道具。
それが現在の、私の姿だ。
だから望んだ。
私を終わらせてくれる存在を。
私というものに終焉をもたらしてくれる存在を。
そして今、その望みは叶おうとしている。
だが戦いに手を抜くことはしない。
激戦の末、勇者の剣がこの胸を貫く感触が。
ああ……ようやく、自由になれる。
自然と笑みがこぼれ、そして全てが闇に閉ざされた。
誤字脱字、ありましたら報告よろしくお願いします。




