第80話 漁港のある村
「ほら、あそこが漁港だよ」
その子が指さす方向を見ると、ハシケに舟がたくさん係留している。
舟の大きさは、ふたりが乗れるくらいの小さいのが多く、中には10人くらい乗れそうな大きい舟もある。
「陽が昇る前に出航して、朝になると帰ってくるんだ」
今はもうお昼過ぎだから、舟はほとんど帰ってきて係留されているのだろう。
今は、漁港にはほとんど人がいない。
「ほら、あっちには人がいるでしょ。あそこは干物を干しているんだ」
朝上がった魚は、そのまま出荷する魚もあれば、干物にする魚もある。
それぞれが村の収入源になる。
「週に2回は朝市があるんだよ。近所の村からいっぱい人が来て賑やかになるんだ」
この村に人が来るのは、朝市を除けば行商人が魚を買いに来るくらいらしい。
だから、今はほとんど人がいない。
アリサは今、住む場所を探している。
いくつか条件があって、一番重要なのが浮島を近くにもってこれること。
だから、どうしても海が近くの村になる。
この漁村は、浮島を係留できる浜から歩いて10分くらい。
ちょうどいい場所にある。
「私、この村に住みたいと思うんだ」
「本当?お姉ちゃん。この村とってもいい村だよ」
本当にそう思う。
漁港から水揚げされる魚で村の経済はしっかりと回っている。
だから、商店もいくつかあって、人々は楽しそうに笑っている。
農村も検討したんだけど、よそ者に対する風当りは農村の方が強い。
土地が重要になる農村では、昔から住んでいる者と最近来た者を別に考える風習がある。
それに比べて漁村は、漁師としてしっかりと働く気がある者ならば、簡単に受け入れてくれる。
私は錬金術士だからちょっと特殊だけど、よそ者でも歓迎する風習は錬金術士にとってもありがたい。
「村長さんって、どこに住んでいるの?」
「うん。案内するね。こっちだよ」
女の子に手を引かれながら、村長さんの家に向かっていった。
場所が変わって、登場人物が変わって、小説の再スタートです。
今度はスローライフ、できるかな。
また、余計なことに巻き込まれそうだけどね。




