第73話 巫女さんはチート持ちだったんです
「なんてひどい人達なの?」
私は聞いているだけで涙が出てきていました。
やさしい令嬢さんは、暗い顔でいいます。
「そうなの。婚約者だから言うんじゃないの。王太子のやり方はあんまりだと思うの」
「そうよね」
この国にも、権力争いは起きているらしい。
帝国と違ってこの国の体制は王様がいる王国。
王様は世襲制で普通は長男が後を継いで次の王様になる。
ただ、長男がなんらかの事故や戦いで命を落とせば次男、その次男も命を落とせば三男。
そんな形で王位継承権は移っていく。
三男に生まれた王子は普通、お兄様が王様になった時点で臣下に下り、爵位をもつ貴族になる。
でも、それを良しとしない勢力がいる。
「次の王様はなんとしても、第三王子に」
そんなことを考えて、後ろから手を廻して王太子を亡き者にと、暗躍する者がいる。
それは事実だ。
ただ、そういうことがあるんじゃないかとあらぬ嫌疑をかけられることもある。
「第三王子は、外様家臣たちと共謀して王太子を亡き者にしようと画策しています」
王国の大臣にそんな言葉が伝わり、第三王子は危機的状況に追い込まれている。
今、第三王子がいる街には、騎士団が派遣させて街を一時占拠して、第三王子を処刑してしまう命令が出されたらしい。
どう考えても、第三王子が邪魔な勢力が根も葉もない噂を流し、それを根拠に騎士団を動かした。
なんとしても、騎士団を止めないと大変なことになる。
あとから、誤解でしたで済むはずがない。
「騎士団を載せた船が足止めされたら、危機は回避できるはず。今、早馬を行かせて婚約者の第三王子に逃げるように伝えているの」
緊迫する令嬢が話す言葉に、私は答えた。
「船を足止めすればいいんですか」
「えっ、なにかいい方法があるの?」
「はい。あります」
私は日の巫女。
この国の国民ではないが、神様の世界は人間の国など関係ない。
この地でも、神様にお祈りすれば、きっと天候を変えることはできるはずだ。
今、騎士団を載せた船がいるあたりに嵐を起こすこと。
私には、今でも、この地でも、神様を通じて嵐を起こす力はきっとある。
この自信ありげな日の巫女の顔をみて、暗い顔の令嬢は、ぱっと明るい顔になった。
もちろん、それは演技である。
言っていることも、全くでたらめだ。
それでも、この国の情勢に詳しくなく、情報を得る手段がない日の巫女は、令嬢が言うことを信じるしかないのだ。
次の日の夜。
海では大嵐が吹き荒れた。
ごく一部の海域だけが嵐になったのだ。
久々に悪役令嬢の悪だくみを書いていると、楽しいです。
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