第64話 錬金畑の賑わい
「ほら、そっちの木材を持ってこい」
「釘、足りないぞ」
マリオ親方が大工さんを連れて、また来ている。
今度は、浮島に小屋を作っている。
木材を舟で運んでいて、カンナやのこぎりで加工している。
親方もいれて大工さんが3人いるから、作業が早くできる。
小屋を建てはじめて、まだ3日ほどなのに、もう柱が立って骨組みは完成している。
あとは、屋根を張って、壁をつけるだけだ。
「あと2日で寝られるようになるぞ。細かいところがあるから、完成にはあと2日かかるがな」
親方の予定はそんな感じだ。
浮島では、騎士団の依頼でポーション畑を拡張して、全部で10区画にしている。
マチルダさんとキムさん、他にも2人の錬金術士が手伝ってくれる。
他にもカラフルスカーフのために、色々チューリップも球根を植えている。
錬成だけでなく、普通に農作業が必要になったから、農村から働きに来ている子供たちが手伝ってくれる。
全部で12人。
子供たちは元々、住む場所を持っておらず、働いている場所で寝泊まりしているから、浮島にも寝泊まりできる場所が必要になった。
だから、マリオ親方にお願いしたのだ。
今度は観覧車の様な特別な構造物ではないので、すぐに完成する。
だいたい6畳の部屋が3つの小屋。
一部屋4人で12人が寝泊まりできる。
ひとつ出来たら、もう2つ作ってもらった。
紅蓮の剣の代金があるから、余裕で頼めてしまう。
中級と上級ポーションに必要な素材は、浮島で栽培している薬草以外は冒険者ギルドに依頼している。
ギルドの職員により、続々と運び込まれてくる。
倉庫に入りきれないから、畑の横に置いている。
藁でできた覆いをかぶせている。
「壮観ですね」
「本当に」
紅炎の騎士団長のアンソニーと錬金術ギルドのマチルダさんがポーション畑を見ている。
ポーションラディッシュがすくすくと育っている。
また、これから植える畑も多く、耕した土がこんもりしている。
「ここでポーションが作れてしまうなんて。今でも信じられませんわ」
「アリサさんって、すごい人ですね、実際」
ひとつの区間で400本のポーションラディッシュを育てている。
10区間だから4000本にもなる。
そのポーションが市場に出てしまうと相場が一気に変わってしまう。
だから、市場に出す分は錬金術ギルドがコントロールする予定だ。
騎士団をはじめ、軍の使う分は、直接王国からの依頼として処理している。
アリサブランドは、正式にガリナ王国軍の調達品となった。
「今は、数をそろえるのを優先しているから、品質はちょっと目をつぶってくれないと困るわ」
「ええ。さすがに低品質な物は困りますが、アリサさんなら中品質には仕上げてくれるんじゃないかな」
「あー。錬成しているのが、私達ギルドの錬金術士だし、農作業は子供たちだし。アリサさんだけでやっていた品質とは違います」
「どんな品質の物ができるのか、それも楽しみですね」
アリサのいないところで勝手に品質論議がされている。
そういえば、この体制になって初めてのポーション収穫が今日ある。
「あ、アリサさん」
「お待たせです」
アリサが道具を持って現れた。
今日は3人で収穫する予定だ。
収穫したポーションはすぐにマチルダが品質鑑定する。
高品質な物には、アリサブランドのマークを入れる。
中品質な物には、ブランドマークを入れない。
低品質な物は、破棄予定だ。
今日の収穫でだいたいの品質レベルがわかる。
作業が慣れれば、もう少し良くなる可能性はあるが。
これから始まる収穫にわくわくしている3人だった。




