第47話 4人それぞれの思惑
「監督、ちゃんと説明してくれないと困るじゃないですか」
「まぁまぁ。結果的にうまく取り入れているんだからいいじゃない」
「良くないですよ。私のライバルって王子ってことになるんじゃないですか。さすがに無理がありますよ」
「何を言っているの。公爵だろうが伯爵だろうが、夫人の関心を得るの得意じゃない」
「それとこれは別ですから」
「とにかく、次の公演をできるかどうかは、君の肩にかかっているんだ」
「・・・ちょっと頭いたくなってきた」
「そういえば、今やっている劇の忠臣役、評判いいよ。いままでの君の評判とは別格だ。そうだ。うまく公演ができるようになったら、君も主役候補のひとりとしてオーディションに出せてあげてもいいよ」
「ほ、本当ですか?」
主役のオーディションに出る。
もちろん、それだけで主役になれるかどうかは分からない。
だけど、オーディションに出るのだって、相当実績を積み上げないと無理なのだ。
どんなに小さいチャンスであっても、飛びつくしかない。
「君がアリサをメロメロにしたら、公演をする資金にめどが立つ。その上、オーディションの審査員は私と公爵令嬢が入っている。君が有利だとは思わないか?」
うまいな、と思いながらも。
このチャンスを逃してたまるかと、悪魔に魂でも売りつけるほどの覚悟をしていた。
・・・
「なんで、王子があいつと一緒に観劇なんてしているのよ」
「それは。。。」
「だいたい、後から王子が割り込んできたみたいじゃない」
「・・・」
「なんか、いい策はないの?」
「もちろん、あります」
「何?」
「こういうものが」
影が公爵令嬢イライザに手渡した物。それは媚薬。それも最高品質の媚薬。
「それ、効果あるの?でも話は聞いたことがあるわ。それをどう使うの?」
「それはですね」
暗がりで影と話している公爵令嬢の瞳がキラリと光った。
・・・
「アンソニーさんが王子かぁ」
なんど、そんなつぶやきをしたか分からない。
錬金畑で作業をしているときは、集中して忘れているけど、部屋に戻ってくると考えてしまう。
「騎士団長だって近づき難いのに、王子様だったなんて・・・」
もちろん、恋人になれるんじないかと本気で考えていた訳じゃない。
だけど、妄想くらいしたっていいじゃない。
もう妄想すらてきなくなっているアリサ。
「やっぱり、エリオットさんかな」
まだまだ妄想できるエリオットさんを相手にラブストーリーを考えながら眠りに入るアリサだった。
・・・
「なんであんなにムキになってしまったのだろう」
アンソニーは不思議に思っていた。
何事にも、冷静に対応してきた自信がある。
仕事だろうが、戦闘だろうが、女性だろうが。
王子と言っても、男兄弟が5人いて、その真ん中。
王位継承権が第3位と言っても、兄ふたりが戦いで死亡することでもなければ、王位は継ぐことはない。
最近は大きな戦争がないから、大抵は長男が王位を継承している。
無理に王位を継承したいと思ったこともなければ、特別な地位を狙ったこともない。
順当なポジションを得て、確実に結果を出す。
それを人生のポリシーとして生きてきた。
だから、来年の春卒業する公爵令嬢の婚約者と、順当に結婚するものだと思っていた。
もちろん、言いよってくる女性は星の数ほどいた。
ちゃんと丁寧に対応して、あきらめてもらった。
女関係でトラブルなんて願い下げだ。
それなのに、なんでアリサの観劇に権威を使ってまで割り込もうとしてしまったのか。
騒ぎになるのを分かったうえで、楽屋までいこうとしてしまったのか。
ひとつは、劇で見たアリサの友達という役者、ただものじゃない感をただよわせていた。
ふたりで楽屋で会うと言われて、つい、一緒に行ってしまった。
「まさか、嫉妬したとか。。。ありえないな」
自分の感情がどういうものか。
いままで感情は頭で律するものだと思っていたアンソニー。
律することができない感情を持てあましていた。




