第34話 ロイズ商会からの使者
「それでご用件って何ですか?」
ここは、街中にあるカフェ。おしゃれなカフェというより、シンプル系で軽いビジネスの話をするのに良く使われるタイプのお店。
「あ、私はロイズ商会のマックスと申します」
武器屋から出てきたときに声を掛けてきた男。歳の頃は私と同じくらいだから20歳前後。
実は、私は見たことがある相手。ビリー君が剣士トーナメントで対戦した人で勝てそうな時に私のポーションで負けてしまった人。
「アリサです。錬金術士をしています」
ただのナンパではなく錬金術士としての私に用があるんだろう。そう読んで、応えてみた。
「失礼ですがアリサさんの事は調べさせてもらいました」
「は?」
「カラフルスカーフの染料の提供者だということですね」
「はい」
なんかムカつく。瓦版屋にネタ提供して書かせた人よね。
「正直なところ、問題が発生していると聞きました」
「・・・・」
「例の件は、アリサさんの問題ではなく、販売側の問題だと私は考えています」
「どういうことですか?」
「新しい材料を使った商品を発売するときは、販売側が詳しく検査をするっていうのかせ常識です。それをあの商会は怠ったという訳ですね」
「それで?」
どうも、この男、良い感じがしない。言っていることはまともはずなのに、なんか嫌悪感が湧いてくる。
「率直に言いましょう。アリサさんの染料を私どもに提供して欲しいんです。もちろん、安全性等しっかりと検査して商品化します」
「それで。金額はどのくらい出してくれるのですか?」
「あちらの商会の倍は約束します」
条件はずいぶんといいわね。
どうせ高い値段で貴族向けに売るつもりでしょうから、そのくらいの値段は余裕で出るわね。
「お断りします」
「ええっ~」
それまでのビジネス顔から一気に幼い男の顔に変わってしまった。
「なんでだよ。うちと取引した方が儲かるだろ」
「ビル&ボム商会と専属契約を結んでいますので」
実は嘘だ。そんな話をしたことはない。
「専属契約ですか。それなら、それを破棄するための費用も持ちましょう」
「いりません」
「な、なんでだよ」
この男、交渉ごと、したことないんだろうなぁ。いちいち、むっとする言い方をしてる。
「とにかくロイズ商会とは取引するつもりはありません」
「なんだと。うちはこの街で一番大きな商会だと知らないのか?」
「そうでしょうね」
「うちを敵にまわすとこの街で商売できなくなるぞ」
「それなら、別の街に行くまでです」
そう。元々、この街にこんなに長くいる予定じゃなかったの。浮島でアイテムを作りながら、あちこちの街を訪れてアイテムを売って生活する。そんなスローライフをしようと決めていたんだっけ。
「とにかく。もう一度考え直せ。また、来るからな」
そう言うと、伝票をつかんで出て行ってしまった。
ロイズ商会はないなぁ。
大きい所ってどうしても、偉そうにしてくるから嫌い。
それにビリー君の時の買占めとか、カラフルスカーフの情報漏洩とか、なんかうさんくさいし。
小さくても、丁寧に対応してくれるところがいいわね。
だけど、ビル&ボブ商会はカラフルスカーフの失敗でちょっと停滞しているみたい。この街では染料は売れないかな。




